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速いサーフェス、遅いサーフェスとは?

テニスのシーズンは、ハード(全豪)に始まり、クレー(全仏)、芝(ウィンブルドン)、そしてハード(全米)のサーフェスでシーズンが終わります。しかし私たちのほとんどがこの3種類すべてのサーフェスの経験があるわけではありませんので、違いが分かり辛いと思います。

私はサーフェスの環境に比較的恵まれていて、普段はインドアのハード(US Openと同じデコターフ)ですが、夏はレッドクレーとグリーンクレーでプレイをしていますので、違いが多少わかります。

しかし実際いろんなサーフェスでプレーをしなければ、サーフェスが速いとか遅いとか言われても、よく理解できないのではないかと思います。

そこでUS Openが開催される前に、速い、遅いということはどういうことなのか? について書いてみたいと思います。

コートの速さは、ボールがコートにバウンドする仕方で区別されます。

しかし同じUS Openでも、日によって、解説者はIt’s fast today. とか、It will be slow tonight.とか言う場合があります。

サーフェスが同じでも、気候の変化によって速くなったり遅くなったり、回転がかかったり、かかりにくくなったりといろいろ微妙に違ってきます。ナダルがよく試合中にストリングのテンションを変えるために、ストリンギングのやり直しをリクエストしていますね。全豪だったか全仏だったか忘れましたが、試合中に7本もre-stringingさせた記録があります。(TVでストリンガーが語っていました)

これは温度や湿度によってボールのバウンドの仕方が異なるためですが、今回は話がややこしくなりますので、ボールのコンディションを含まず、サーフェスだけについて説明してみたいと思います。

さて実験です。

まったくスピンのかかっていないボールを芝、ハード、クレーのサーフェスに同じ打ち方で前方に打ちます。ボールはコートに落ちた後、トップスピンが生まれ前方に飛んでいきます。

速いサーフェスとは:
ボールのバウンド後の弾道の曲線がフラット気味(低く跳ねる)

遅いサーフェスとは:
ボールのバウンド後の弾道の曲線が大きい(高く跳ねる)

つまり弾道の曲線の違いで速い、遅いを決めるわけですが、ではこの跳ね方の違いはどこから生まれてくるのでしょうか?

それはコートとのコンタクト時の摩擦の多少です。

大雑把に言って、すべすべしているほど摩擦が少なく(芝)、ザラザラしているほど摩擦が大きくなります(クレー)。摩擦が少いと滑っていくように飛んでいきますので、直線気味となりボールが目的地(相手)に早く着きます。

コートの中で最も速いのはラインつまりテープです。テープの上に落ちたボールは、打てる位置にいてもカウンターショットが出来ないのは、ツルツルのサーフェスで摩擦が少なく、スキッドしてしまうからです。

逆にクレーは摩擦が多いので、トップスピンにさらにスピンがかかり高く跳ねます。ですから高く上がった分だけ時間が長く、スピードも摩擦によって減少して、目的地(相手)に着くまで時間がより多くかかります。

ナダルの強烈なトップスピンがなぜクレーで有効なのか?
それは彼のスピンがクレーとの摩擦によって増幅され、さらに高く跳ねるからです。

フェデラーのバックハンド・スライスが、ウィンブルドンで有効なのは?
バックスピンをかけることにより、コンタクト時に生まれるトップスピンを相殺し、芝を這っていくようなショットを生み出すことができます。ですからクレーではトップスピン、芝ではスライスが武器となります。

ではUS Openのようなハードコートのサーフェスの速さは?

ここでBiomedical engineering principles in sports で発表された実験データをご紹介します。

(実験)同じくスピンのないボールをできるだけ同じ角度でコートに入れ、バウンス時の角度を測定したものです。

IN:コートにボールがコンタクトしたときの角度
OUT:コートにボールがコンタクトした直後の角度

ウィンブルドン: IN 24.2 OUT 28.6
US Open: IN 23.9 OUT 32.9  
ローランギャロス: IN 24.3  OUT 34.7

INの角度に多少の誤差があるとしても、これだけバウンドする高さが違ってきています。つまりサーフェスは、ウィンブルドンが最も速く、 ローランギャロスは最も遅くなります。しかし芝は特殊なサーフェスですので、一般的にはハードをfast surface、クレーをslow surfaceと区別して呼んでいます。

では US Openで勝つにはどのプレースタイルが有利でしょうか?

高いサーヴの確率
昔のようなサンプラスやラフターのようなServe & Volleyが、今のハードでは勝てなくなってきているのは、ラケットとストリングのテクノロジーの進歩で、リターンゲームが向上したためと、強烈なパッシングショットが可能になったからです。速いサーフェスですので、その特典を生かしてサーヴィスゲームを確実にホールドする必要があります。

ベースラインから下がらない。
下がってしまうとオープンコートを作ってしまうことになり、クレーで追いつけても、ハードではボールが速いので追いつけなくなります。

ラリーを続けない。
試合展開が速いので、相手のエラー待ちのディフェンステニスはできません。ネットダッシュしてヴォレーで決めるプレーが効果を発揮します。

理想はベースラインもネットもできるall rounder。やっぱり落ち着くところはフェデラーですか。

(追記)
シモンの練習をしっかり観てきましたが、彼はチリッチとの練習試合(シモンが勝ちました)の後も、残ってアプローチショット+ヴォレーの練習を繰り返してやっていました。

これは大変喜ばしいのですが、練習試合中は相変わらずベースラインから下がって打っていましたので、これがちょっと気がかり。彼のフラットなフォアハンドはいつでもウィナーになるパワーがあるのですが、後ろに下がってしまっていてこの武器を使えない。

オンザライズで打つことができるのですから、必要なのはアグレッシヴなメンタルです。これはナダルにも当てはまります。二人とも膝を痛めているのもカウンターパンチャーからくるラリーの負担が原因。選手生活を短縮してしまわないためにも、最初は負けるつもりでベースラインのテニスに慣れてほしい。


コーチに「シモンは日本に来てくれますよね?」と尋ねると「楽しみにしてるよ」との返事。しかし「膝の具合はどうなんですか? 大丈夫なんですか?」としつこく尋ねると、「I hope so」という返事。つまり膝がよければ日本に行きますよ、ということでした。

「US Openであんまり走り回らないでね。」とはちょっと身勝手なお願いですが、シモンもナダルも膝がこれ以上悪くなりませんように・・・



投稿者 Tennisnakama  11:39 | コメント(20) | トラックバック(0)