2008年05月26日
さようならグガ!(涙)
さようなら グガ!
今、3度の全仏チャンピオン、グスタボ・キルテンの引退試合を観ています。
1997年の最初に全仏優勝したあのテニスウェア(ブラジルのシンボルカラー、イエローとブルー)で現れました! あのはにかんだような微笑み、懐かしい!。靴もソックスも統一のブルー&イエローです。とてもクールです。何度かUS Openでも彼を観ましたが、彼が側をすれ違ったとき、肌で感じた温かい人柄が強く印象に残っています。
フランス人にとっては、辛いところです。自国の選手、マテューに勝ってほしいのは山々ですが、長年フランス人のハートを魅了してきたグガに心から声援を送りたい・・・グガに勝ってはほしくないが、彼に納得するテニスをしてほしい。そして最後の全仏の試合を満喫してほしい。
グガの対戦相手のマテューにとっては、絶対負けられない試合。ソンガがケガで出場を諦めたフランスにとっては、スランプで喘ぐガスケには期待ができず、マテューに大きな望みをかけています。仏テニス協会は、そのためにも、スウェーデンの全仏3度のチャンピオン、マット・ウィランダーにコーチを依頼するなど、背水の陣で全仏に望んでいます。
グガにとっては、今日は久しぶりに立つシャトリエのセンターコートです。腰の手術を2004年に行って以来、ランキングを1141番まで落とすという苦難の4年間でした。2001年、全仏最後の優勝の瞬間を思い出します。グガはシャトリエのコートにラケットで大きくハートの形を描きました。
「Merci beaucoup! 僕のハートをローランギャロスに残します!」
その描いたハートの中で大の字になったグガは、体丸ごとその喜びを表現しました。あのチャーミングなグガをもう観る事はできないのです。
引退選手、対戦選手、観客がそれぞれ奏でる別れの曲は、交響曲となってローランギャロスにこだましていきます。グガはときどき手を背にあてながら(痛いのでしょうか?) あのすばらしいバックハンドのウィナーをみせてくれました。その時に見せるあの子供のような笑顔。3-6, 4-6, そして第3セットに。2-5でマッチポイントを迎えます。
グガは8才のとき父親を亡くしました。(テニスのアンパイアーをしている最中に起きた心臓発作が原因)彼のドキュメンタリーを何年か前に見ましたが、世界ナンバーワンになっても、故郷を離れようとせず、育ててくれた大好きなおばあさんと一緒に住んでいるマンションでのインタービューは、彼の人柄を語る微笑ましいものでした。
グガには心から愛する身障者の弟がおりましたが、彼も昨年病気で亡くなりました。グガは弟の生存中すべての大会トロフィーを弟に捧げています。ある時は、試合の優勝賞金のすべてを故郷のNGOに寄付するなど、弟の心身の痛みを分ち合いながら共に戦ってきました。その弟も失って、気持ちの上で整理がついたのかも知れません。
ローランギャロスの最後のショットはドロップショットでした。球はネットの上を超えることなく、グガのコートに落ちてグガの最後の試合が終わりました。観客が総立ちになったスタジアムから、グガへの拍手の嵐が聞こえます。
「Merci Guga! Au revoir Guga!」
彼の目に涙が。初めて見せる涙です。ベンチに戻ったグガは、タオルを頭からすっぽりかぶり、むせび泣きました。拍手は鳴り止みません。勝ったマテューもグガに歩み寄り握手を求めました。彼の目も赤くはれています。偉大な選手がまたコートから永遠に姿を消しました・・・