2008年10月12日
最後まで戦った錦織!
(記事によっては後に(追記)を付け加えることがあります。今回のように、記者会見の様子が後で分かる場合は、半日後に追記として追加更新をすることがありますのでご覧になってください。)
ストックホルムオープンの準決勝で、私が今回がっかりしたことは、錦織選手の負けた試合についてではありません。
「錦織選手はリタイアするべきだった」という声が多いことにがっかりしたのです。私は錦織選手がリタイアをせずに最後まで準決勝をやり通したことに大きな拍手を送りたいと思います。
錦織選手の写真をいろいろヨハンが送ってくれました。そして彼から試合の模様を聞きました。そして海外のメディアの報告も読みました。錦織選手の体調の悪さは一つの原因だったにせよ、ソダーリングのテニスは最高潮にあったことが敗北の大きな原因だったことを忘れてはいけないと思います。ソダーリングは錦織に反撃のチャンスを与えることなく、アグレッシヴなテニスを展開して錦織をノックアウトしたのです。しかもソダーリングのホームゲームです。この3つのマイナスの状況の中で、錦織選手が戦っていくことは大変なことなのです。
私がなぜ錦織選手がとった態度が褒められるべきかを述べてみたいと思います。まず、このソダーリング戦に対して、選択できた錦織選手の3つのシナリオをあげてみましょう。
(1)試合を始める前に WO (Walk Over) 棄権する。
はっきり試合で戦っていけないと判断した場合、アンチッチのように棄権通告をすることができます。
プロテニスはビジネスです。選手はコーチやトレーナーを養っていかなければならない厳しい現実があります。アンチッチは錦織戦を棄権することによって約100万円を失いました。棄権しないで、数ゲームを何とかやってリタイアして100万円をもらうことも出来たのですが、アンチッチはそれをやらなかったのです。リタイアがいろいろ問題になるのは、最初からリタイアするつもりで試合にでる選手が結構いる場合です。はっきりとよい試合が出来ないと判断すれば棄権するべきですが、それがこれほどの賞金額がかかっているとむずかしい状況なのは理解できます。アンチッチはとてもフェアなことでも知られていますが、今回の棄権でアンチッチは彼らしいスポーツマンシップをみせてくれました。
錦織選手が棄権をしなかったのは、試合をやっていけると踏んだからでしょう。それに準決勝の棄権となるといろいろやっかいな問題(医者の診断書)などが生じてきます。しかも国際シリーズの準決勝という選手にとってはめったに訪れることのない名誉なチャンスです。リスクを負ってもチャレンジしたいと思うのは当然だと思います。
(2)途中でリタイアする
私はリタイアはよほどのことでない限りやるべきではないと思っています。特に準決勝、決勝のレベルではなおさらのことです。エナンがモレースモとの全豪オープンの決勝でリタイアしたことによって、彼女の歴史に大きな汚点を残しました。彼女は腹痛でリタイアしたのですが、試合を続行できない状況ではなかったのは明らかです。エナンはモレースモの最初のGSタイトルにケチをつけたのです。このリタイアに対する世界のメディアやファンは大変な失望と怒りをかくしませんでした。これは当然の話です。
ですから、もし膝が痛くて歩けないのならまだしも、錦織選手はリタイアしなかったことに対して褒めてあげるべきだと思います。これでソダーリングはケチがつくことなく決勝に出れるのです。しかも彼のホームゲームなのですから。
(3)最後までリタイアせず頑張り通す
錦織選手は何度も試合中にリタイアのことを考えたに違いありません。きっと早く終わってしまいたい、という気持ちがあったことでしょう。彼がどのような精神状態で試合をやったのかは、本人でないと分からないことです。しかし、準決勝を途中でキヴアップしないで最後まで戦ったことは、試合の内容はともかく今後プラスになっていくと思います。どう攻めてよいのか分からず、やることなすことがすべてに裏目に出てしまうという時はフェデラーやナダルでもありました。そういう試合を経験することによって、これから一段と幅のある選手に成長していけるのです。「あんなだらしなのない試合をして」という試合はどんなに優れた選手でもあるのです。でもそういう試合をやることによって、では次はどのように対応していけばよいかが分かってきます。
何事も経験です。Don’t mind! これをよい栄養として前進あるのみです!多くの錦織ファンががっかりしても私は彼を誇りに思います。記者会見はまだ読んでいませんが、きっと自分の調子の悪かったことも言わなかったと思います。こういう態度をとっていくことが、「真にメンタルの強い選手」をつくっていくのだと思います。私が応援するのはそういう錦織選手です!
(追記)
圭君は記者会見で以下のように述べています。
「ブレークするチャンスがなかった。セカンドサーブでもエース級の球が来て、対処できなかった」(自分に正直)
「ひざが良かったにしても、厳しい試合だった」(自分に正直)
世界のノーベル賞科学受賞者50人にインタービューをしたことがあります。そのときに、科学者として一番大切なことはなんですか?とある科学者に聞いたところ、「自分に正直であること」という答えが返ってきました。そのことを思い出しました。テニスでトップ10をめざすことは、ノーベル賞を狙うようなものです。圭君の記者会見の答えがまさにあの科学者が指摘した最も大切なことなのでした。
ストックホルムオープンの準決勝で、私が今回がっかりしたことは、錦織選手の負けた試合についてではありません。
「錦織選手はリタイアするべきだった」という声が多いことにがっかりしたのです。私は錦織選手がリタイアをせずに最後まで準決勝をやり通したことに大きな拍手を送りたいと思います。
錦織選手の写真をいろいろヨハンが送ってくれました。そして彼から試合の模様を聞きました。そして海外のメディアの報告も読みました。錦織選手の体調の悪さは一つの原因だったにせよ、ソダーリングのテニスは最高潮にあったことが敗北の大きな原因だったことを忘れてはいけないと思います。ソダーリングは錦織に反撃のチャンスを与えることなく、アグレッシヴなテニスを展開して錦織をノックアウトしたのです。しかもソダーリングのホームゲームです。この3つのマイナスの状況の中で、錦織選手が戦っていくことは大変なことなのです。
Photo by tennistalk.com
私がなぜ錦織選手がとった態度が褒められるべきかを述べてみたいと思います。まず、このソダーリング戦に対して、選択できた錦織選手の3つのシナリオをあげてみましょう。
(1)試合を始める前に WO (Walk Over) 棄権する。
はっきり試合で戦っていけないと判断した場合、アンチッチのように棄権通告をすることができます。
プロテニスはビジネスです。選手はコーチやトレーナーを養っていかなければならない厳しい現実があります。アンチッチは錦織戦を棄権することによって約100万円を失いました。棄権しないで、数ゲームを何とかやってリタイアして100万円をもらうことも出来たのですが、アンチッチはそれをやらなかったのです。リタイアがいろいろ問題になるのは、最初からリタイアするつもりで試合にでる選手が結構いる場合です。はっきりとよい試合が出来ないと判断すれば棄権するべきですが、それがこれほどの賞金額がかかっているとむずかしい状況なのは理解できます。アンチッチはとてもフェアなことでも知られていますが、今回の棄権でアンチッチは彼らしいスポーツマンシップをみせてくれました。
錦織選手が棄権をしなかったのは、試合をやっていけると踏んだからでしょう。それに準決勝の棄権となるといろいろやっかいな問題(医者の診断書)などが生じてきます。しかも国際シリーズの準決勝という選手にとってはめったに訪れることのない名誉なチャンスです。リスクを負ってもチャレンジしたいと思うのは当然だと思います。
Photo by tennistalk.com
(2)途中でリタイアする
私はリタイアはよほどのことでない限りやるべきではないと思っています。特に準決勝、決勝のレベルではなおさらのことです。エナンがモレースモとの全豪オープンの決勝でリタイアしたことによって、彼女の歴史に大きな汚点を残しました。彼女は腹痛でリタイアしたのですが、試合を続行できない状況ではなかったのは明らかです。エナンはモレースモの最初のGSタイトルにケチをつけたのです。このリタイアに対する世界のメディアやファンは大変な失望と怒りをかくしませんでした。これは当然の話です。
ですから、もし膝が痛くて歩けないのならまだしも、錦織選手はリタイアしなかったことに対して褒めてあげるべきだと思います。これでソダーリングはケチがつくことなく決勝に出れるのです。しかも彼のホームゲームなのですから。
(3)最後までリタイアせず頑張り通す
錦織選手は何度も試合中にリタイアのことを考えたに違いありません。きっと早く終わってしまいたい、という気持ちがあったことでしょう。彼がどのような精神状態で試合をやったのかは、本人でないと分からないことです。しかし、準決勝を途中でキヴアップしないで最後まで戦ったことは、試合の内容はともかく今後プラスになっていくと思います。どう攻めてよいのか分からず、やることなすことがすべてに裏目に出てしまうという時はフェデラーやナダルでもありました。そういう試合を経験することによって、これから一段と幅のある選手に成長していけるのです。「あんなだらしなのない試合をして」という試合はどんなに優れた選手でもあるのです。でもそういう試合をやることによって、では次はどのように対応していけばよいかが分かってきます。
何事も経験です。Don’t mind! これをよい栄養として前進あるのみです!多くの錦織ファンががっかりしても私は彼を誇りに思います。記者会見はまだ読んでいませんが、きっと自分の調子の悪かったことも言わなかったと思います。こういう態度をとっていくことが、「真にメンタルの強い選手」をつくっていくのだと思います。私が応援するのはそういう錦織選手です!
(追記)
圭君は記者会見で以下のように述べています。
「ブレークするチャンスがなかった。セカンドサーブでもエース級の球が来て、対処できなかった」(自分に正直)
「ひざが良かったにしても、厳しい試合だった」(自分に正直)
世界のノーベル賞科学受賞者50人にインタービューをしたことがあります。そのときに、科学者として一番大切なことはなんですか?とある科学者に聞いたところ、「自分に正直であること」という答えが返ってきました。そのことを思い出しました。テニスでトップ10をめざすことは、ノーベル賞を狙うようなものです。圭君の記者会見の答えがまさにあの科学者が指摘した最も大切なことなのでした。