tennis365.net テニス365ブログ 新着記事を読む ]    [ テニス365 ホームショッピングニュースログイン ]

Tennisnakama in New York 世界にテニスの輪を広げたいと願っています。元レポーターのTennisnakamaが、ホットな情報やめずらしい話を、ニューヨークからどんどんお届けします。自由にリンクしてください。(記事はすべて〓tennisnakama.comとなっておりますので、無断掲載はご遠慮ください)

Tennisnakama 
最近の記事
さようなら!
12/30 21:24
伝説のパトリック・ラ…
12/28 01:07
伝説のパトリック・ラ…
12/27 01:46
チーズフォンデュをビ…
12/26 08:02
伝説のパトリック・ラ…
12/25 00:16
最新フェデラー・ファ…
12/23 11:27
セントラルパークの雪…
12/22 23:42
エナンがWCでシドニ…
12/21 23:54
ドローの仕組み
12/21 03:10
タイガーvsピューマ…
12/19 01:46
フェデラーもちょっと…
12/16 22:45
フェデラーのスイスで…
12/15 11:28
サフィンが語るサフィ…
12/11 11:37
サフィン「僕は奇跡だ…
12/10 10:21
さよならサフィン
12/08 01:45
カテゴリ別アーカイブ
このブログサービスは「テニス365 テニスブログ」で運営しています。テニス365会員なら無料でご利用・作成いただけます。






民族対立の暴力事件に思う

今日はテニスの歴史に汚点が残る残念な事件が起きてしまいました。

約30人のセルビア人とボスニア人の小競り合いが、椅子を投げ合う暴力事件に発展し、女性が投げられた椅子にあたって怪我をするなど被害がでました.




2年前は、約150人のセルビア人とクロチア人が衝突(赤と白のシャツがクロチア)して暴力事件に発展、会場から強制退場となりました。



セルビア、クロチア、ボスニアが内紛や戦争の長い歴史を引きずっているとはいえ、スポーツの領域に政治を持ち込むことは許されないことです。政治といえば聞こえがよいですが、彼らはフラストレーションのはけ口として、スポーツを利用しているだけで、これらの暴力事件は紳士淑女の最後のスポーツであるテニスのトーナメントで行われたことは遺憾にたえません。

ヨーロッパでよくサッカーを観にいきますが、私のとなりに座っていたスイスの将校が突然ピストルを出して、空に向けて射ち放ったときは、もうひっくりかえるほどびっくりしてしまいました。あのスイスでの出来事です。ヨーロッパのサッカーファンは喧嘩を求めていく問題のグループがいろいろあり、彼らのエントリーをチェックするために、昨年のヨーロピアンカップは、入場者はすべてパスポートが必要になりました。

ナショナリズムの発露として、スポーツが汚されるのは大きな問題です。イスラエルがパレスチナに爆弾を落とし多くの死傷者を出した最近の事件直後でも、私の友人のユダヤ人とパレスチナ人たちはテニスを共にしています。

ニューヨークの住民は、世界のあらゆる人種がスペースをシェアしながら生活をしていますので、racial tolerance (人種に寛容)がなければ生活していけません。ですから愛国心とナショナリズムと区別することをわきまえています。それでないと、あらゆる街角で争いや暴力事件が発生してしまいますから。

セルビアとボスニアの椅子投げ事件は、ジョコヴィッチ(セルビア)とデリック(ボスニア生まれのアメリカ人)の試合の直後に発生しました。この事件に関して、二人に対照的な発言がありましたので、興味深いのでここで簡単に概要を紹介したいと思います。

デリックの言葉
デリックは5才のときにボスニアからアメリカに移住していますので、純粋のボスニア人とは言えませんが、ボスニア人の応援が過激になることを予想して、彼のウェブサイトですでに警告してきました。

Q:この事件についてどう思いますか?
「2~3日前にも僕のサイトで、喧嘩は絶対認めないことを書いたので、このような事件が発生して本当に残念だ。悲しいことだ。僕はノヴァク(ジョコヴィッチ)に負けたけれど、僕たちは友達で友好な関係には変わりないんだ。」

「コート内では応援は盛んで、フェアなマッチで観客は楽しんでいたんだ。誰が始めたことか知らないけれど、両サイド(セルビアとボスニア)の中に、問題を起こそうとしてやってきた者がいるのは確かで、このような事件が世界の至る所で起こっている。そして残念ながら今日この大会で起こってしまったのは実に悲しいことだ。」

ジョコヴィッチの発言

Q:このトラブルについてどう思いますか?
「選手である僕たちにとってコントロールできないことなんだ。彼らは自分たちの国の選手を観る機会が少ないので、熱狂的な応援になってしまんだ。」

Q:このような暴力事件が発生したことについて、関わったファンに何か言う事はありませんか?
「前に言ったように僕にはどうしようもないことなんだ。僕はコートで試合をしているんだから、この試合に勝たなくてはならない。警備員や関係者がいるんだから。」

Q:デリックは彼のサイトで態度を慎むよう呼びかけていますが、同じように何かすることを考えていますか?
「僕はコートに立ってベストのテニスをするためにここにいるんだ。他のことでエネルギーを費やすとフォーカスが薄れてしまう。だからこの問題は考えないようにしている。」

「もうこの問題は十分に話したよ。他の話題にしてくれないかな。」

tennisnakamaからジョコヴィッチに一言
ここでジョコファンの非難を覚悟で私の意見を述べさせていただきます。

ジョコヴィッチはセルビアのヒーローです。国民のアイドルであり、セルビアの子供たちは、彼のようになりたいと願っています。ここにデリックとの根本的な違いがあります。ジョコヴィッチの一挙一動を国民が見守っているのです。

ジョコにはセルビアを背負って立つ重い責任があります。べルグラードにトーナメントを開き、壮大なスポーツセンターの建設の計画中です。彼の発言は多くのセルビア人、特にヤングジェネレーションに影響を与えます。彼が政治には関わりたくないという気持ちは分かります。しかしこのような紛争、暴力事件が起こってしまった現在、彼はこのような行為については、絶対みとめないという確固たる姿勢が必要だと思います。

「僕はスポーツマンなんだから、テニスのことを心配していればよい。」というわけにはいかないのです。

タイガーウッドが以前、「僕はあらゆる政治活動には関わりをもちたくない」と同じようなことを言っていました。そしてどんな政治的な集まりにも姿を見せなかった彼が、オバマの大統領就任式には、スピーチをしています。タイガーはオバマのように黒人との混血です。同じ境遇にある人間として、ある時点で「政治には関わらない」モットーを破りました。スポーツ選手だけでない人間としての責任に目覚めたのです。このことによって、タイガーは偉大なゴルファーだけでなく、偉大な人間に成長したと思います。

ジョコにはテニスさえしてればよいという次元は過去のものになりました。彼はテニス選手だけではないのです。セルビアの国民のヒーローとして、世界の平和の大使としてのミッションがあります。もし彼がそのことを自覚すれば、セルビアの選手から、世界の選手に飛翔することができると思うのですが。

(訂正)
セルビア人とクロチア人との暴力事件は、2007年の事件でした。お詫びいたします。訂正記事を掲載させていただきました。



投稿者 Tennisnakama  02:00 | コメント(28) | トラックバック(0)