2009年04月07日
マレーが優勝しました!
ソニーエリックソンのマスターズ決勝は、マレーがジョコヴィッチに6-2, 7-5で優勝しました。マイアミ大会は the 5thグランドスラムとも呼ばれ、マスターズの中でもプレスティージの高い大会ですが、マレーは25年ぶりに優勝の栄誉をイギリスにもたらしました。
マレーはこの優勝は今年で3度目。ドーハでフェデラーを、ロッテルダムでナダルを、このマイアミでジョコヴィッチを破っていますので、トップ3をすべて打倒したことになります。
「どのトーナメントに勝っても自信が増すが、グランドスラムに次ぐマスターズ1000は勝つのがとてもむずかしい大会だけに、この優勝はグランドスラムへの自信につながる。」
マレーは記者会見でこの優勝の重要さを語っています。彼はハードコートを得意とするだけに、この快挙は本当に嬉しそうです。しかしこれからクレーのシーズンが始まり、マレーの過去のクレーの成績は11勝14敗ですので、苦手なクレーにどのように対応していくかが、今後のマレーの課題となります。
シーズンオフの間、マイアミで(マレーは家をもっています)マイアミ大学の施設を使ってトレーニングに励んだだけあって、彼のフィットネスレベルが上がったことも優勝の大きな原因となりました。
「アンディはコートでの動きがずっとよくなっている。昔とれなかった球を今は返球できている。」とジョコヴィッチはマレーのフィジカルの向上を指摘しています。特に感じたのは、バックに大きく振られても、球に追いつきしっかりと両手でリターンできるバックハンドが強力な武器になってきました。
「アンディはディフェンスからオフェンスへのスウィッチがうまく、多分世界一だと思う。」とジョコヴィッチが述べています。今まではペースを変え相手のリズムを崩すことに重きをおいていたマレーのテニスに、加わったこのオフェンス力は相手に決定的なダメージを与える武器となってきています。
第1セットは、マレーがオフェンスに切り替えないうちに攻撃をと、ジョコヴィッチの勝ち急ぎが裏目に出た試合だったように思います。
第1ゲームですでにマレーにブレークされてしまったジョコヴィッチは、フォアハンドで2本、バックで1本のミスをおかしています。いずれもラリーを続けないで勝ち急ぎを狙ったエラーです。
逆にマレーは冷静でサーヴもよく、二つのサーヴィスゲームをいずれも40-0でジョコヴィッチにブレークの隙を与えることなく完封。ジョコヴィッチは固くなっているようで、なかなかリズムがつかめません。第3ゲームもジョコヴィッチはダブルフォルトやスウィングヴォレーのミスの連続で、またもやブレークを許してしまいます。
第7ゲーム(Murray vs Djokovic: 5-1)のジョコヴィッチのサーヴです。ネットダッシュしたジョコヴィッチは、マレーのパッシングショットに合いポイントを失って、プレークポイントを迎えます。しかしジョコヴィッチはサーヴィスウィナーをとってデュースへと挽回。ブレークを逃れた安堵感からか、ストロークがのびのびと自由になって、ジョコヴィッチの得意のフォアのインサイドアウトでウィナーをとりました。最後はジョコヴィッチのドロップショットが成功して(ラッキーにもネットからマレーのコートへ)、やっと運がジョコヴィッチに向いてきたようにみえたのですが。
最後の第8ゲーム(5-2)では、ドロップショットに気をよくしたジョコヴィッチは、2度ドロップショットで挑戦。しかしマレーの足は驚くほど速く、いずれもマレーに得点され、第1セットは6-2でマレーの快勝となりました。
第2セットでは、ジョコは固くなっているのか、最初のサーヴをダブルフォルト。さかんにネットダッシュしますが、中途半端でマレーはパッシングショットのウィナーの嵐に合います。(それにしてもマレーのパッシングショットは昔のフェデラーを彷彿とさせるほど見事です。)ブレークポイントから何とかデュースに戻したジョコヴィッチは、またもやダブルフォルト。第1ゲームから、早々に再びブレークを許してしまったジョコヴィッチはトレーナーを呼びました。
「またか!」これは多分皆が抱いた印象だったと思います。過去にいろいろタイムアウトやリタイアが多い彼に、Quitterと不名誉なニックネームがついてしまったのは残念なことですが、今回はどうやら暑さのために「体が動かない」ということが理由だったようです。でもトレーナーは暑いからといわれてもどうしようもなく、思わず解説者も苦笑。これでジョコヴィッチは体を休めることができましたが、私はやはりこのタイムアウトの取り方は、「やっぱりね」と思わせるマイナスの効果の方が大きかったように思います。
次の第2ゲーム(1-1)では,元気を回復したジョコヴィッチはアグレッシヴなウィナー狙いが成功してマレーをブレークしてしまいました。このタイムアウトで調子が狂ったのは、タイムアウトで待たされたマレーです。第4ゲーム(1-2)では、スライス、フォア、バックにエラーが生じてきてマレーは新しいラケットに替えましたが、マレーは勝ち急いで再びブレークされてしまいました。
第6ゲーム(1-4)マレーのサーヴです。ここでジョコはブレークを狙って猛然とラリーが続きます。二人はベースラインからサイドラインを狙ったスーパショットを続けます。このゲームは、マレーのエース2本、ジョコのリターンエース2本など、二人はガッツのある最高のパーフォーマンスをみせてくれました。
お互いにサーヴィスゲームをホールドしながら、試合を決定した第9ゲーム(3-5)を迎えます。ジョコのサーヴィスゲームでこれに勝てば、第3セットとなる重要なゲームです。すでにジョコは31のエラーをおかしていますので(マレーは16)、マレーへのフリーポイントは厳禁です。スコアはAd-40。あと1ポイントでジョコの第2セットの勝利です。ここでジョコはまたもやダブルフォルトをおかしてしまいました!このダブルフォルトは5本目です。このダブルフォルトは大きい。これが影響してか、2度つづけてジョコはミスをおかしてブレークチャンスを逃してしまいました。最近のジョコはこのような重要なポイントがとれずゲームを落としていることがあります。セルビアオープンも近く、両親と家族がそろってボックスに入って応援していましたが、これも案外大きなプレッシャーだったのでは。
ここからはジョコの負け戦のスピードが加速して行きます。第11ゲーム(5-5)ジョコヴィッチのサーヴです。このサーヴィスゲームは絶対にホールドしなければなりません。ジョコはアグレッシヴにネットダッシュを重ねますが、プレッシャーが強すぎたのか、いずれもネットにかけてしまい2ポイントを落とします。
0-40のブレークポイントで、マレーは見事なバックハンドのクロスウィナーを決めてジョコをブレークしました。
最終ゲームとなった第12ゲームはマレーがジョコの追随を許さず、ネットダッシュしたジョコのヴォレーがロングしてマレーの優勝が決定しました。この第2セットはジョコが勝てたセットだっただけに、「最大の敵は自分だった」とジョコが述べているように、このような負け方をしてしまったジョコには大きな悔いが残ったと思います。
最近ポッキリ病(肝心なところでポッキリと折れてしまう)が流行っているのか、フェデラーやジョコヴィッチの感染が気になります。それにしても、一時リズムを失ったものの、すぐ取り戻してすばらしいcontrolled aggressionで勝利をおさめたマレーのメンタルは見事でした。もうチンタラ・テニスなどと悪口は言いません。
この試合でサーヴィスゲームの興味深いスタッツがあります。
第2セットですが、7-5でマレーが勝っているにも拘らず、マレーの1stサーヴの確率が52%でジョコの61%よりもかなり低いのです。しかし獲得したポイント数は、マレーが15ポイント、ジョコが16ポイントでほとんど変わっていません。要するに1stサーヴの確率も重要ですが、もっと重要なのは1stサーヴでとったポイントの数です。つまり問題はサーヴのクウォリティーなのです。第2セットのリターンゲームのポイントも、マレーは24ポイントをとって、ジョコの18ポイントをかなり上回っています。これはマレーのリターンがすばらしかったことを物語っています。
4月11日からクレー最初のマスターズのモンテカルロ大会が始まりますが、フェデラーを除いてほとんどの選手が勢揃いします。十分休養をとったナダルの華麗なクレーテニスが堪能できますね。
(tennisnakamaからお願いです。)
このブログはいわゆる私のテニスエッセーといった形をとっておりますので、テニスのニュースや論説の記事ではありません。事実には忠実でありたいと努めていますが、あくまでもtennisnakamaの眼を通して書いています。表現方法もジャーナリズムでは使わない主観的な用語をわざと使う場合があります。
例えば「フェデラーよ!これが最後のチャンスです!」この場合は文字通りの「最後」ではなく、ここではもう訪れないかも知れないチャンスを強調したくてわざと使っています。日常よく使う「これが最後だからね」あの感じです。
「ナダル帝国」もしかりです。彼は2008年にNo.1の座を勝ち取りテニス界の王者です。その彼の存在を帝国と表現したのは、これから大帝国を建設しつつあるナダルの勢いをも含めて表現したかったので、この表現が間違ってるのかどうかと言う問題になると、帝国の定義から始めなくてはなりません。
言葉の表現にはliteral (文字通り)とfigurative (比喩)がありますが、必ずしもliteralに書いておりませんので、行間のニュアンスをご理解いただければと願います。このブログはエッセーとして、テニスの事実には厳しく、しかし表現に関してはおおらかでありたいと願ってますので、大目にみていただければ幸いです。
マレーはこの優勝は今年で3度目。ドーハでフェデラーを、ロッテルダムでナダルを、このマイアミでジョコヴィッチを破っていますので、トップ3をすべて打倒したことになります。
「どのトーナメントに勝っても自信が増すが、グランドスラムに次ぐマスターズ1000は勝つのがとてもむずかしい大会だけに、この優勝はグランドスラムへの自信につながる。」
マレーは記者会見でこの優勝の重要さを語っています。彼はハードコートを得意とするだけに、この快挙は本当に嬉しそうです。しかしこれからクレーのシーズンが始まり、マレーの過去のクレーの成績は11勝14敗ですので、苦手なクレーにどのように対応していくかが、今後のマレーの課題となります。
シーズンオフの間、マイアミで(マレーは家をもっています)マイアミ大学の施設を使ってトレーニングに励んだだけあって、彼のフィットネスレベルが上がったことも優勝の大きな原因となりました。
「アンディはコートでの動きがずっとよくなっている。昔とれなかった球を今は返球できている。」とジョコヴィッチはマレーのフィジカルの向上を指摘しています。特に感じたのは、バックに大きく振られても、球に追いつきしっかりと両手でリターンできるバックハンドが強力な武器になってきました。
「アンディはディフェンスからオフェンスへのスウィッチがうまく、多分世界一だと思う。」とジョコヴィッチが述べています。今まではペースを変え相手のリズムを崩すことに重きをおいていたマレーのテニスに、加わったこのオフェンス力は相手に決定的なダメージを与える武器となってきています。
第1セットは、マレーがオフェンスに切り替えないうちに攻撃をと、ジョコヴィッチの勝ち急ぎが裏目に出た試合だったように思います。
第1ゲームですでにマレーにブレークされてしまったジョコヴィッチは、フォアハンドで2本、バックで1本のミスをおかしています。いずれもラリーを続けないで勝ち急ぎを狙ったエラーです。
逆にマレーは冷静でサーヴもよく、二つのサーヴィスゲームをいずれも40-0でジョコヴィッチにブレークの隙を与えることなく完封。ジョコヴィッチは固くなっているようで、なかなかリズムがつかめません。第3ゲームもジョコヴィッチはダブルフォルトやスウィングヴォレーのミスの連続で、またもやブレークを許してしまいます。
第7ゲーム(Murray vs Djokovic: 5-1)のジョコヴィッチのサーヴです。ネットダッシュしたジョコヴィッチは、マレーのパッシングショットに合いポイントを失って、プレークポイントを迎えます。しかしジョコヴィッチはサーヴィスウィナーをとってデュースへと挽回。ブレークを逃れた安堵感からか、ストロークがのびのびと自由になって、ジョコヴィッチの得意のフォアのインサイドアウトでウィナーをとりました。最後はジョコヴィッチのドロップショットが成功して(ラッキーにもネットからマレーのコートへ)、やっと運がジョコヴィッチに向いてきたようにみえたのですが。
最後の第8ゲーム(5-2)では、ドロップショットに気をよくしたジョコヴィッチは、2度ドロップショットで挑戦。しかしマレーの足は驚くほど速く、いずれもマレーに得点され、第1セットは6-2でマレーの快勝となりました。
第2セットでは、ジョコは固くなっているのか、最初のサーヴをダブルフォルト。さかんにネットダッシュしますが、中途半端でマレーはパッシングショットのウィナーの嵐に合います。(それにしてもマレーのパッシングショットは昔のフェデラーを彷彿とさせるほど見事です。)ブレークポイントから何とかデュースに戻したジョコヴィッチは、またもやダブルフォルト。第1ゲームから、早々に再びブレークを許してしまったジョコヴィッチはトレーナーを呼びました。
「またか!」これは多分皆が抱いた印象だったと思います。過去にいろいろタイムアウトやリタイアが多い彼に、Quitterと不名誉なニックネームがついてしまったのは残念なことですが、今回はどうやら暑さのために「体が動かない」ということが理由だったようです。でもトレーナーは暑いからといわれてもどうしようもなく、思わず解説者も苦笑。これでジョコヴィッチは体を休めることができましたが、私はやはりこのタイムアウトの取り方は、「やっぱりね」と思わせるマイナスの効果の方が大きかったように思います。
次の第2ゲーム(1-1)では,元気を回復したジョコヴィッチはアグレッシヴなウィナー狙いが成功してマレーをブレークしてしまいました。このタイムアウトで調子が狂ったのは、タイムアウトで待たされたマレーです。第4ゲーム(1-2)では、スライス、フォア、バックにエラーが生じてきてマレーは新しいラケットに替えましたが、マレーは勝ち急いで再びブレークされてしまいました。
第6ゲーム(1-4)マレーのサーヴです。ここでジョコはブレークを狙って猛然とラリーが続きます。二人はベースラインからサイドラインを狙ったスーパショットを続けます。このゲームは、マレーのエース2本、ジョコのリターンエース2本など、二人はガッツのある最高のパーフォーマンスをみせてくれました。
お互いにサーヴィスゲームをホールドしながら、試合を決定した第9ゲーム(3-5)を迎えます。ジョコのサーヴィスゲームでこれに勝てば、第3セットとなる重要なゲームです。すでにジョコは31のエラーをおかしていますので(マレーは16)、マレーへのフリーポイントは厳禁です。スコアはAd-40。あと1ポイントでジョコの第2セットの勝利です。ここでジョコはまたもやダブルフォルトをおかしてしまいました!このダブルフォルトは5本目です。このダブルフォルトは大きい。これが影響してか、2度つづけてジョコはミスをおかしてブレークチャンスを逃してしまいました。最近のジョコはこのような重要なポイントがとれずゲームを落としていることがあります。セルビアオープンも近く、両親と家族がそろってボックスに入って応援していましたが、これも案外大きなプレッシャーだったのでは。
ここからはジョコの負け戦のスピードが加速して行きます。第11ゲーム(5-5)ジョコヴィッチのサーヴです。このサーヴィスゲームは絶対にホールドしなければなりません。ジョコはアグレッシヴにネットダッシュを重ねますが、プレッシャーが強すぎたのか、いずれもネットにかけてしまい2ポイントを落とします。
0-40のブレークポイントで、マレーは見事なバックハンドのクロスウィナーを決めてジョコをブレークしました。
最終ゲームとなった第12ゲームはマレーがジョコの追随を許さず、ネットダッシュしたジョコのヴォレーがロングしてマレーの優勝が決定しました。この第2セットはジョコが勝てたセットだっただけに、「最大の敵は自分だった」とジョコが述べているように、このような負け方をしてしまったジョコには大きな悔いが残ったと思います。
最近ポッキリ病(肝心なところでポッキリと折れてしまう)が流行っているのか、フェデラーやジョコヴィッチの感染が気になります。それにしても、一時リズムを失ったものの、すぐ取り戻してすばらしいcontrolled aggressionで勝利をおさめたマレーのメンタルは見事でした。もうチンタラ・テニスなどと悪口は言いません。
この試合でサーヴィスゲームの興味深いスタッツがあります。
第2セットですが、7-5でマレーが勝っているにも拘らず、マレーの1stサーヴの確率が52%でジョコの61%よりもかなり低いのです。しかし獲得したポイント数は、マレーが15ポイント、ジョコが16ポイントでほとんど変わっていません。要するに1stサーヴの確率も重要ですが、もっと重要なのは1stサーヴでとったポイントの数です。つまり問題はサーヴのクウォリティーなのです。第2セットのリターンゲームのポイントも、マレーは24ポイントをとって、ジョコの18ポイントをかなり上回っています。これはマレーのリターンがすばらしかったことを物語っています。
4月11日からクレー最初のマスターズのモンテカルロ大会が始まりますが、フェデラーを除いてほとんどの選手が勢揃いします。十分休養をとったナダルの華麗なクレーテニスが堪能できますね。
(tennisnakamaからお願いです。)
このブログはいわゆる私のテニスエッセーといった形をとっておりますので、テニスのニュースや論説の記事ではありません。事実には忠実でありたいと努めていますが、あくまでもtennisnakamaの眼を通して書いています。表現方法もジャーナリズムでは使わない主観的な用語をわざと使う場合があります。
例えば「フェデラーよ!これが最後のチャンスです!」この場合は文字通りの「最後」ではなく、ここではもう訪れないかも知れないチャンスを強調したくてわざと使っています。日常よく使う「これが最後だからね」あの感じです。
「ナダル帝国」もしかりです。彼は2008年にNo.1の座を勝ち取りテニス界の王者です。その彼の存在を帝国と表現したのは、これから大帝国を建設しつつあるナダルの勢いをも含めて表現したかったので、この表現が間違ってるのかどうかと言う問題になると、帝国の定義から始めなくてはなりません。
言葉の表現にはliteral (文字通り)とfigurative (比喩)がありますが、必ずしもliteralに書いておりませんので、行間のニュアンスをご理解いただければと願います。このブログはエッセーとして、テニスの事実には厳しく、しかし表現に関してはおおらかでありたいと願ってますので、大目にみていただければ幸いです。