2009年05月17日
ベストマッチ、ナダルvsジョコヴィッチ準決勝
Nadal def Djokovic: 3-6, 7-6(5), 7-6(9)
ナダルとジョコヴィッチのマドリッド準決勝を観戦することができた人はラッキーだったと思います。あの試合はOpen Era(1968年以降)以来のATP ツアーの試合の中で、ベストの3セットであると言われているほど、すばらしい試合だったからです。
この試合はジョコヴィッチがストレートで勝てたはずの試合でした。第2セットのブレークチャンスを4回とも失ってしまったのが、決定的なダメージを与えたように思います。試合を長く続ければ続けるほどナダルの有利になることが分かっていましたたので、第3セットに入ったときは、ナダルが不調にもかかわらず、私は彼が勝つことを疑いませんでした。
「第1セットはひどいものだった。マドリッドは高い(標高)ので、ボールを自信をもって打つ事ができなかった。ショットが短くなってしまったり、距離がつかみにくかった。でも次第にリズムがつかめるようになって最後はよいテニスができたと思う。」とナダルが語っています。
高いところでテニスをすると、ボールがよく飛んでしかも高く弾みます。そのためにより以上のスピンをかけてボールをコントロールする必要があるので、ナダルは調節するのがむずかしかったと思いますが、これはジョコヴィッチにとっても言えることです。私の観た感じでは、疲労が重なっていたことと、右膝の痛みがあったことが不調の主な原因だったように思います。特にナダルのバックハンドにエラーが多かったのは、左利きのオープンスタンスでは右膝に重心をおいて打ちますので、痛みがあると右足で踏ん張ることができないのです。
ナダルを救ったのはサーヴでした。これは意外な驚きでした。プレースメントがよくワイドサーヴはリターン不可能。キックサーヴもよく跳ねてジョコヴィッチは手こずってリターンできませんでした。1stサーヴの確率も71%とよく、1stサーヴでとったポイントは72でジョコの56ポイントをはるかにしのぐ高率でした。
特に印象的だったのは、ブレークポイントでは、ほとんどナダルはサーヴィスウィナー(日本ではタッチエース)でブレークを免れていることです。
例えば第2セットの第9ゲーム(4-4)は、2回のブレークポイントを2度ともサーヴィスウィナーでセーヴしまし、第11ゲーム(5-5)のブレークポイントもサーヴィスウィナーでブレークを免れています。そしてタイブレークでセットポイントをとったのもサーヴィスウィナーです。第3セットのマッチポイントを3度とられそうになってあぶなかったのですが、この3番目のマッチポイントをサーヴィスウィナーで免れました。あとの2回はジョコヴィッチのエラーで免れたのではなく、ナダルのショットのウィナーが決まったものです。
このように、勝敗を決める大切なポイントでサーヴィスウィナーがとれるようになったことは、ナダルに強力な武器ができたことを意味し、ますますナダルを打倒するのがむずかしくなってきました。しかも今日の試合でナダルは調子がよくなくても勝てる自信を持ちました。この自信はナダルにとって今後大きな財産になっていくと思います。
ジョコヴィッチは彼も言っているように、今までのクレーの中ではベストのパーフォーマンスでした。ショットの確実さにますます磨きがかかって攻守のバランスもとれ、テニスが成熟してきた感があります。また26回もネットダッシュを行い、18ポイントをネットプレーでとり、アグレッシヴなテニスを展開しました。
ただ残念だったのは、ジョコヴィッチは幾度もブレークチャンスや、マッチポイントをとれるチャンスがあったのにもかかわらず見逃してしまったことです。しかしここまでナダルとの距離を狭めることができたのは、彼のフィットネスとメンタルの強化があってこそで、ますますフェデラーが危なくなってきました。
今日の試合で、ナダルがあそこまでしなくても、フレンチオープンのために体を休めておいた方が賢明ではなかったのか?という意見もあります。しかしナダルの性格から手を抜くことは彼の眼中になかったはず。明日のフェデラーとの決勝で、膝の悪化だけは避けてほしいですね。これはナダルファンだけでなく全テニスファンの願いだと思います。ナダルのいないローランギャロスは、想像しただけでも寂しくて観戦する気力を失ってしまいます。
最後に解説者が伝説の女子選手、ビリー・ジーン・キングの有名な言葉(本のタイトルにもなっています)を引用していましたので紹介します。
Pressure is a privilege. (プレッシャーは特権である)
「どの分野でもトップにいる人は、困難なシチュエーションに面してプレッシャーを絶えず受けています。しかしこのようなチャレンジはトップの人間に許された特権でもあるのです。真の勝者やリーダーは、プレッシャーのなかで勝つ術を見いだしていくのです。」
明日の決勝というとてつもないプレッシャーのなかで、勝利への術を見いだすことができるのは、ナダルなのか?それともフェデラーなのか? あと7時間で試合が始まります。
ナダルとジョコヴィッチのマドリッド準決勝を観戦することができた人はラッキーだったと思います。あの試合はOpen Era(1968年以降)以来のATP ツアーの試合の中で、ベストの3セットであると言われているほど、すばらしい試合だったからです。
この試合はジョコヴィッチがストレートで勝てたはずの試合でした。第2セットのブレークチャンスを4回とも失ってしまったのが、決定的なダメージを与えたように思います。試合を長く続ければ続けるほどナダルの有利になることが分かっていましたたので、第3セットに入ったときは、ナダルが不調にもかかわらず、私は彼が勝つことを疑いませんでした。
「第1セットはひどいものだった。マドリッドは高い(標高)ので、ボールを自信をもって打つ事ができなかった。ショットが短くなってしまったり、距離がつかみにくかった。でも次第にリズムがつかめるようになって最後はよいテニスができたと思う。」とナダルが語っています。
高いところでテニスをすると、ボールがよく飛んでしかも高く弾みます。そのためにより以上のスピンをかけてボールをコントロールする必要があるので、ナダルは調節するのがむずかしかったと思いますが、これはジョコヴィッチにとっても言えることです。私の観た感じでは、疲労が重なっていたことと、右膝の痛みがあったことが不調の主な原因だったように思います。特にナダルのバックハンドにエラーが多かったのは、左利きのオープンスタンスでは右膝に重心をおいて打ちますので、痛みがあると右足で踏ん張ることができないのです。
ナダルを救ったのはサーヴでした。これは意外な驚きでした。プレースメントがよくワイドサーヴはリターン不可能。キックサーヴもよく跳ねてジョコヴィッチは手こずってリターンできませんでした。1stサーヴの確率も71%とよく、1stサーヴでとったポイントは72でジョコの56ポイントをはるかにしのぐ高率でした。
特に印象的だったのは、ブレークポイントでは、ほとんどナダルはサーヴィスウィナー(日本ではタッチエース)でブレークを免れていることです。
例えば第2セットの第9ゲーム(4-4)は、2回のブレークポイントを2度ともサーヴィスウィナーでセーヴしまし、第11ゲーム(5-5)のブレークポイントもサーヴィスウィナーでブレークを免れています。そしてタイブレークでセットポイントをとったのもサーヴィスウィナーです。第3セットのマッチポイントを3度とられそうになってあぶなかったのですが、この3番目のマッチポイントをサーヴィスウィナーで免れました。あとの2回はジョコヴィッチのエラーで免れたのではなく、ナダルのショットのウィナーが決まったものです。
このように、勝敗を決める大切なポイントでサーヴィスウィナーがとれるようになったことは、ナダルに強力な武器ができたことを意味し、ますますナダルを打倒するのがむずかしくなってきました。しかも今日の試合でナダルは調子がよくなくても勝てる自信を持ちました。この自信はナダルにとって今後大きな財産になっていくと思います。
ジョコヴィッチは彼も言っているように、今までのクレーの中ではベストのパーフォーマンスでした。ショットの確実さにますます磨きがかかって攻守のバランスもとれ、テニスが成熟してきた感があります。また26回もネットダッシュを行い、18ポイントをネットプレーでとり、アグレッシヴなテニスを展開しました。
ただ残念だったのは、ジョコヴィッチは幾度もブレークチャンスや、マッチポイントをとれるチャンスがあったのにもかかわらず見逃してしまったことです。しかしここまでナダルとの距離を狭めることができたのは、彼のフィットネスとメンタルの強化があってこそで、ますますフェデラーが危なくなってきました。
今日の試合で、ナダルがあそこまでしなくても、フレンチオープンのために体を休めておいた方が賢明ではなかったのか?という意見もあります。しかしナダルの性格から手を抜くことは彼の眼中になかったはず。明日のフェデラーとの決勝で、膝の悪化だけは避けてほしいですね。これはナダルファンだけでなく全テニスファンの願いだと思います。ナダルのいないローランギャロスは、想像しただけでも寂しくて観戦する気力を失ってしまいます。
最後に解説者が伝説の女子選手、ビリー・ジーン・キングの有名な言葉(本のタイトルにもなっています)を引用していましたので紹介します。
Pressure is a privilege. (プレッシャーは特権である)
「どの分野でもトップにいる人は、困難なシチュエーションに面してプレッシャーを絶えず受けています。しかしこのようなチャレンジはトップの人間に許された特権でもあるのです。真の勝者やリーダーは、プレッシャーのなかで勝つ術を見いだしていくのです。」
明日の決勝というとてつもないプレッシャーのなかで、勝利への術を見いだすことができるのは、ナダルなのか?それともフェデラーなのか? あと7時間で試合が始まります。