2009年05月18日
フェデラーが優勝
マドリッドマスターズの決勝はフェデラーの優勝に終わりました。
Federer def Nadal: 6-4, 6-4
あのThe King of Clayのナダルのクレーの敗北は世界にショックを与えたようですが、この結果は二人にとってWin Win situationになったと思います。なぜか?
Federer
まずフェデラーですが、彼は勝てないフェデラーから脱出するには、どんなマッチでも勝っていかなければならない切羽詰まった状況にあります。ナダルとの試合前日のインターヴュー(バーゼル紙)では、まだ自信がもてないと率直な心境を語っていましたので、このマスターズの優勝、しかもナダルに勝ったことは、彼にとっては大変重要な意味をもち、フレンチオープンに大きな希望と自信を与えたと思います。
フェデラーは記者会見でその喜びを以下のように表現しています。
「本当に勝てて嬉しい。僕はよいプレーができたと思っている。ナダルを負かすことはむずかしいことだけれど、今日はいろんなショットをうまくミックスできたし、サーヴもよかった。」
「僕のやろうとしたことがすべてうまくいった。最後は気持ちよくプレーでき、今日はパーフェクトな勝利だった。」
「昨年のウィンブルドンや今年の全豪では接戦だったから、僕はナダルに勝てると信じていた。特にマドリッドのような速いサーフェスでは、勝てるというポジティヴな気持ちが必要だった。」
「今年はいろいろつまずきがあったけれど、徐々に思っている方向にことが運んでいっている。今日の勝利はベストなタイミングだった。」
フェデラーのマドリッドの決勝までの試合を観戦してきましたが、エラーは相変わらず多いですが、ウィナーも多いアグレッシヴな攻撃で快進撃を続けてきました。サーヴがずいぶんよくなり、フェデラーらしい速いゲーム展開を可能にしています。腰の故障で一時タイミングが狂ってしまったサーヴの調整がうまくいっているようで、エースの数もナダル戦では6、(準々)準決勝のデルポトロ戦では8、そしてロディック戦では15もとれるようになっています。
バーゼル紙に「当分コーチは考えていない。今のチームにとても満足しているから。」と述べていますが、スイスのデ杯キャプテンがまめまめしくフェデラーの面倒をいろいろみてくれているようで(作戦の助言からヒッティングパートナーまで。そして料理も作ってくれたりするそうです)、この気楽な環境が今のフェデラーには居心地がよくよい影響を与えていると思います。
マッケンローがアドヴァイザーになって協力してもよい、というオファーをしたのにもかかわらず、フェデラーがマッケンローに連絡をとらなかったのは、実にいろんな人がフェデラーにアドヴァイスをしたがっていて、「ありがたいことだけれど、それに一つ一つ応えられない」とも別のインターヴューで述べていました。これは正解でしょうね。いろんな声をきいていると自分を見失ってしまう危険性がありますから。
現に、フェデラーはフレンチのタイトル制覇のために、ローチやイゲラスのようなクレーに強いコーチをパートタイムのコーチとして雇ってきましたが、成果はあまり出ませんでした。それは彼らのクレーテニスに振り回されて、フェデラーが自分のゲームを忘れてしまっていたような気がするのです。
「正しい決断(ショットの選択と作戦)が勝利をもたらした。」とフェデラーは述べています。正しい決断とはPlay my gameを貫くこと。フレンチオープンではサーフェスはマドリッドよりも遅いですが、自信をえたフェデラーは、アグレッシヴなゲーム展開で攻めてくると思います。
もしフェデラーが決勝まで残りナダルと対戦することになれば?
昨年のフレンチではフェデラーはナダルに6-1, 6-3, 6-0 で完敗してしまいました。スコアから言えば、 1977年にゴットフリードがビラスに負けた6-0, 6-3, 6-0についで、フレンチオープン史上(Open Era)最悪の成績だったとか。こんな記録までもらってフェデラーは、屈辱に耐える長い一年でした。「でも今年は違うよ。勝てそうな気がするんだ。」と言いたげなフェデラーのポジティヴな声が聞こえてきそうです。大いに期待したいところです。
Nadal
ではナダルの敗北がなぜナダルにとってWinのシチュエーションなのか?
最初からナダルは、サーフェスと高度の関係で、マドリッドには出たくないようなことを言っていましたので、彼のモチベーションがどれくらい高かったのかは疑問です。ナダルは記者会見でこのように述べています。
「今日のロジャーは僕よりうまくプレーしていたので勝って当然だと思う。コートがすごく速くて彼の有利になった。僕のショットは短かすぎたし、エラーも多かった。彼はそれをうまく利用して勝利に結びつけた。」
「僕は昨夜4時間以上プレーしたので(ジョコヴィッチとの準決勝)、とても疲れていたのは本当だ。でも彼はブレイクとの準決勝をわずか1時間半で済ませることができたのだから、土曜は彼の方が僕よりベターだったといえる。」
メディアがThe King of Clayと名付け、スーパーヒューマンのように書かれてきたナダルでしたが、マドリッドは明らかに苦手意識が先走って、なかなかリズムがとれず苦戦していました。しかも前日にはEpic Matchと称されるほどの大激戦をやったナダルには、肉体的にも精神的にもガス欠状態にあったことは確かです。
こういう状態で、もしジョコヴィッチ戦のように死闘のあげくフェデラーに勝っていたとしたら?
多分ナダルは気持ちの上ではハングリーさが半減してしまう危険性があったと思います。いくらクレーの王者でも、モンテカルロ、バルセロナ、ローマと勝ち続けているナダルは、どこかで一休みをしないと息切れしてしまいます。(昨年)一昨年は同じ時期にハンブルグの決勝でフェデラーに負けています。この負けがフレンチへのバネとなってナダルはみごとに優勝しました。ですからこのマドリッドの敗退は、フレンチ優勝を狙うナダルにとっては、自己を振り返る機会を与え、ギアアップに必要な過程ではなかったかと思うのです。ですからますます強くなってナダルはローランギャロスに登場してくるはず。ナダルにはやっぱりパリのクレーが一番似合っています。
Federer def Nadal: 6-4, 6-4
あのThe King of Clayのナダルのクレーの敗北は世界にショックを与えたようですが、この結果は二人にとってWin Win situationになったと思います。なぜか?
Federer
まずフェデラーですが、彼は勝てないフェデラーから脱出するには、どんなマッチでも勝っていかなければならない切羽詰まった状況にあります。ナダルとの試合前日のインターヴュー(バーゼル紙)では、まだ自信がもてないと率直な心境を語っていましたので、このマスターズの優勝、しかもナダルに勝ったことは、彼にとっては大変重要な意味をもち、フレンチオープンに大きな希望と自信を与えたと思います。
フェデラーは記者会見でその喜びを以下のように表現しています。
「本当に勝てて嬉しい。僕はよいプレーができたと思っている。ナダルを負かすことはむずかしいことだけれど、今日はいろんなショットをうまくミックスできたし、サーヴもよかった。」
「僕のやろうとしたことがすべてうまくいった。最後は気持ちよくプレーでき、今日はパーフェクトな勝利だった。」
「昨年のウィンブルドンや今年の全豪では接戦だったから、僕はナダルに勝てると信じていた。特にマドリッドのような速いサーフェスでは、勝てるというポジティヴな気持ちが必要だった。」
「今年はいろいろつまずきがあったけれど、徐々に思っている方向にことが運んでいっている。今日の勝利はベストなタイミングだった。」
フェデラーのマドリッドの決勝までの試合を観戦してきましたが、エラーは相変わらず多いですが、ウィナーも多いアグレッシヴな攻撃で快進撃を続けてきました。サーヴがずいぶんよくなり、フェデラーらしい速いゲーム展開を可能にしています。腰の故障で一時タイミングが狂ってしまったサーヴの調整がうまくいっているようで、エースの数もナダル戦では6、(準々)準決勝のデルポトロ戦では8、そしてロディック戦では15もとれるようになっています。
バーゼル紙に「当分コーチは考えていない。今のチームにとても満足しているから。」と述べていますが、スイスのデ杯キャプテンがまめまめしくフェデラーの面倒をいろいろみてくれているようで(作戦の助言からヒッティングパートナーまで。そして料理も作ってくれたりするそうです)、この気楽な環境が今のフェデラーには居心地がよくよい影響を与えていると思います。
マッケンローがアドヴァイザーになって協力してもよい、というオファーをしたのにもかかわらず、フェデラーがマッケンローに連絡をとらなかったのは、実にいろんな人がフェデラーにアドヴァイスをしたがっていて、「ありがたいことだけれど、それに一つ一つ応えられない」とも別のインターヴューで述べていました。これは正解でしょうね。いろんな声をきいていると自分を見失ってしまう危険性がありますから。
現に、フェデラーはフレンチのタイトル制覇のために、ローチやイゲラスのようなクレーに強いコーチをパートタイムのコーチとして雇ってきましたが、成果はあまり出ませんでした。それは彼らのクレーテニスに振り回されて、フェデラーが自分のゲームを忘れてしまっていたような気がするのです。
「正しい決断(ショットの選択と作戦)が勝利をもたらした。」とフェデラーは述べています。正しい決断とはPlay my gameを貫くこと。フレンチオープンではサーフェスはマドリッドよりも遅いですが、自信をえたフェデラーは、アグレッシヴなゲーム展開で攻めてくると思います。
もしフェデラーが決勝まで残りナダルと対戦することになれば?
昨年のフレンチではフェデラーはナダルに6-1, 6-3, 6-0 で完敗してしまいました。スコアから言えば、 1977年にゴットフリードがビラスに負けた6-0, 6-3, 6-0についで、フレンチオープン史上(Open Era)最悪の成績だったとか。こんな記録までもらってフェデラーは、屈辱に耐える長い一年でした。「でも今年は違うよ。勝てそうな気がするんだ。」と言いたげなフェデラーのポジティヴな声が聞こえてきそうです。大いに期待したいところです。
Nadal
ではナダルの敗北がなぜナダルにとってWinのシチュエーションなのか?
最初からナダルは、サーフェスと高度の関係で、マドリッドには出たくないようなことを言っていましたので、彼のモチベーションがどれくらい高かったのかは疑問です。ナダルは記者会見でこのように述べています。
「今日のロジャーは僕よりうまくプレーしていたので勝って当然だと思う。コートがすごく速くて彼の有利になった。僕のショットは短かすぎたし、エラーも多かった。彼はそれをうまく利用して勝利に結びつけた。」
「僕は昨夜4時間以上プレーしたので(ジョコヴィッチとの準決勝)、とても疲れていたのは本当だ。でも彼はブレイクとの準決勝をわずか1時間半で済ませることができたのだから、土曜は彼の方が僕よりベターだったといえる。」
メディアがThe King of Clayと名付け、スーパーヒューマンのように書かれてきたナダルでしたが、マドリッドは明らかに苦手意識が先走って、なかなかリズムがとれず苦戦していました。しかも前日にはEpic Matchと称されるほどの大激戦をやったナダルには、肉体的にも精神的にもガス欠状態にあったことは確かです。
こういう状態で、もしジョコヴィッチ戦のように死闘のあげくフェデラーに勝っていたとしたら?
多分ナダルは気持ちの上ではハングリーさが半減してしまう危険性があったと思います。いくらクレーの王者でも、モンテカルロ、バルセロナ、ローマと勝ち続けているナダルは、どこかで一休みをしないと息切れしてしまいます。(昨年)一昨年は同じ時期にハンブルグの決勝でフェデラーに負けています。この負けがフレンチへのバネとなってナダルはみごとに優勝しました。ですからこのマドリッドの敗退は、フレンチ優勝を狙うナダルにとっては、自己を振り返る機会を与え、ギアアップに必要な過程ではなかったかと思うのです。ですからますます強くなってナダルはローランギャロスに登場してくるはず。ナダルにはやっぱりパリのクレーが一番似合っています。