2009年06月01日
クレーの歴史が変わる!
Soderling def Nadal 6-2, 6-7(2), 6-4, 7-6(2)
誰もが疑わなかったクレー王の敗北は世界に大ショックを与えています。マッケンローは「クレーの歴史始まって以来のアプセットだ」、ナヴラティロヴァは「今世紀最大のアプセットだわ」と呼ぶほど、今日のナダルの試合は大事件でした。
ナダルが負けてしまったことは仕方ないとしても、25位のソダリング(スウェーデン)に敗北したことが大事件なのです。ソダリングはクレーの記録が過去40勝39敗でとてもクレーに強いとはいえない選手です。しかも4月のローマでは1-6, 0-6でナダルに完敗しています。そんな選手になぜナダルが敗退してしまったのか?
ナダルが疲れすぎている。
プレッシャーがありすぎた。
ナダルがディフェンスすぎた。
ソダリングがめずらしくゾーンに入ってしまった。
ソダリングのアグレッシヴな作戦が当たった。
ピンクのウェアがいけなかった。(マッケンローが冗談で)
いろいろメディアが分析してこの試合を理解しようとしていますが、ナダルは記者会見でこのように答えています。
"It's not a tragedy, I had to lose one day. I must accept my defeats with the same level of calm that I accept my victories."
「悲劇じゃないよ。いつかは負ける日がくるからね。勝利のときと同じような平静な気持ちで敗北を受け止めなければいけないと思っている。」
ナダルは複雑な気持ちを冷静にこのように表現しました。何かとても哲学的な
意味深長な言葉です。
「今日の敗北は驚いていないよ。彼のレベルは知っているし、危険なプレーヤーだということもよく知っているからね。」
「僕は今日はベストのテニスができなかった。ショートボールを打っていたし、攻撃することができなかった。彼のレベルでは、今日の僕をまかすことはたやすかったと思う。」
「僕が勝ってきたのは、体がフィットしているからだと思っている人がいるけれど、勝つのは僕がよいプレーをするからなんだ。でも今日はそうじゃなかった。だから勝てなかった。それだけのことなんだ。」
でも私たちが知りたいのは「なぜよいプレーができなかったのか?」その理由と原因です。いろいろそのことについて質問が殺到しましたが、ナダルは敗北の言い訳をするのを拒否しました。
「勝つ日もあるし、負ける日もある。それがスポーツというものだ。皆勝利のことは覚えているけど、敗北のことは覚えていない。前向きに前進することが大切なんだ。」
今年のRGは誰が最有力候補だと思いますか?の質問に「ロジャー」と迷いのない答えが返ってきました。「彼は長年にRGのタイトルを取りたがってたし、14個のGSタイトルにもなるし、ロジャーが一番優勝にふさわしいと思う。」
マッケンローは「ロジャーは今ごろシャンペンを飲んでお祝いをしているよ」と冗談をとばしていましたが、誰もがまず頭に浮かぶのがフェデラー。これでフェデラーが勝てなかったら、もう頭を丸めるしかない!(スミマセン、感情的になってます。)
これからウィンブルドンの準備に早速とりかかるのですか?の質問には、
「まずは2、3日マヨルカの自宅のプールでゆっくりしたいよ。(笑う)それから考えるよ。」
このように健気に悲しさをみせない記者会見でしたが、会場がソダリングを応援していたことについては、「ちょっと悲しかった。次は肝心なときにもうちょっと僕を応援してもらえると嬉しいナ。」とチラっと本音が出たことも、何かとても切なくて泣けてしまいました。
「僕の誕生日をパリで迎えられないのは寂しいけれど、来年はここで誕生日を祝えるようにしたい。」6月3日で23歳になるナダル。来年こそはRGタイトルNo.5と誕生日を盛大にお祝いしましょう。私も頑張ってパリに行きますよ!
クレーの歴史が変わる!
今日はナダルvsソダリングの歴史的な全仏オープンの試合を何と10時間も観てしまいました。最初はスペインからのライヴのストリーミング(アメリカは生放送しなかったのです!)、そして午後にNBCで観戦し、そして最後は夜にテニスチャンネルで観戦。
こんなに何度も観なくてもよかったのですが、NBCではマッケンローが、テニスチャンネルではナヴラティロヴァが解説していますので、彼らの解説が聞きたくて結局3時間の試合を3回も観てしまいました。
ナダルの敗北は、もちろん彼が本調子でなかったことも大きな理由でしょうが、私にはもっと大きな意味があるように思えてならないのです。それは「本格的なパワーテニス時代の到来」です。
今まで何度か「ナダルを打倒するには」のテーマで記事を書いてきました。彼はフェデラーのall round playerとは違って、まだまだ進化していける余地があったので、その意味も含めて、ナダル帝国をつくりあげるには何が必要なのか?つまり打倒されないためには何をしなければならないのか?という逆説から書いてきたわけですが、今日ソダリングにその回答をみせつけられて、少し衝撃を受けています。(つまり私が抱いていたナダル打倒のイメージと異なっていましたので。)
ソダリングは193cm、87kgの巨人です。ナダルが小柄に見えてしまうほどの大男です。しかも頭付近の高さからでも平気で打ち込んでくるフラットな高速球は、どんなにナダルの足が速くても追いつくことができません。彼のような大男の前では、ショットをミックスしたり、ペースを変えたり、する余裕も与えられず、爆発的なウィナーに近いショットでワイドにコートに追い出されて、それでおしまいです。
ナヴラティロヴァは盛んにナダルがディフェンスになりすぎて、ベースラインから下がってしまっていると叫んでいましたが、ナダルの気持ちがよく分かります。あのパワフルなショットを、フォアとバックで攻められれば、後退して身を守ってしまうのが本能。もしもナダルが頑張ってベースライン近くで対抗したとしても、今日のソダリングのショットは、正確+プレースメント+パワーの3拍子そろった完璧なショットメイキングでしたので、ナダルが勝てたかどうか。
「ナダルがなぜ負けたのか?」よりも私には「なぜソダリングが勝ったのか?」の方が興味があります。
ソダリングのテニスはクレーのテニスの常識をくつがえしてしまったです。
彼はインドアのベストプレーヤーです。インドアはサーフェスが速く、遅いクレーのサーフェスは苦手なはず。しかし今日の試合は、まるでハードコートの試合展開でした。ソダリングはサーフェスに関係なく勝つことができるテニスを立証してみせたのです。
コートの空いているところに球を打つ。このごくシンプルな勝つテニスの基本をソダリングはみせてくれたように思います。
ウィニングのレシピ
「ワイドに打って相手をコートの外に出し、オープンコートに球を叩く」ソダリングはその繰り返しでした。サーヴもワイド。カウンターもワイド。でもそんなことは誰でもやっていること。しかしナダルとの違いは、パワーとスピードです。フラットで高い打点から打ち込まれる球はまるでサーヴをうけているような威力があります。
サーヴの威力
しかもサーヴがソダリングは平均約200km、ナダルは175kmです。この25kmの差はとても大きな違いです。しかもソダリングの2ndサーヴはナダルの1stサーヴの速さです。ですからナダルはブレークすることが大変むずかしかったのです。
ディープなショット
ナダルはよくショートボールを打ってしまってソダリングに叩かれていましたが、ソダリングはディープなショットがよく決まり、終始ナダルをディフェンシヴにすることに成功しました。
ネットアプローチ
ソダリングはアグレッシヴにチャンスをつくってはネットアプローチを試みています。ソダリングは35回もネットダッシュして27回もポイントをとっているのは、いかに彼のショットに威力があり、ナダルのカウンターが緩くなってしまっているかを表しています。逆にナダルはディフェンステニスでしたので、ネットダッシュは11回のみに終わっています。
ナダルとソダリングといえば、多くのテニスファンには忘れられないエピソードがあります。ウィンブルドンの試合中に、ナダルがなかなかベンチからたちあがろうとしないので、ソダリングはナダルの物まね(パンツをひっぱる)をして彼をからかったのです。この態度の悪さは世界に放送されすっかり悪評を買ってしまいました。しかもナダルがソダリングにハローと挨拶をしても(7回だそうです)まったく返事もしようとしなかったり、とにかく彼の評判はすこぶるよくないのです。マッケンローも選手の中で彼のことをよくいう者は一人もいないと断言しているくらいですから、「ソダリングだけには勝ってほしくなかった」と苦々しく思っている選手が多くいるにちがいありません。
しかし性格はともかく、ソダリングがフォーカスを保ち続け、あの驚異的なハイパーフォーマンスを最後までキープできたことは賞賛したいと思います。
試合の経過を書こうと思いましたが、あまりにも記事が長くなりますので割愛します。その変わりにソダリングのウィニングのパターンをビデオに収録しましたのでご覧ください。
誰もが疑わなかったクレー王の敗北は世界に大ショックを与えています。マッケンローは「クレーの歴史始まって以来のアプセットだ」、ナヴラティロヴァは「今世紀最大のアプセットだわ」と呼ぶほど、今日のナダルの試合は大事件でした。
ナダルが負けてしまったことは仕方ないとしても、25位のソダリング(スウェーデン)に敗北したことが大事件なのです。ソダリングはクレーの記録が過去40勝39敗でとてもクレーに強いとはいえない選手です。しかも4月のローマでは1-6, 0-6でナダルに完敗しています。そんな選手になぜナダルが敗退してしまったのか?
ナダルが疲れすぎている。
プレッシャーがありすぎた。
ナダルがディフェンスすぎた。
ソダリングがめずらしくゾーンに入ってしまった。
ソダリングのアグレッシヴな作戦が当たった。
ピンクのウェアがいけなかった。(マッケンローが冗談で)
いろいろメディアが分析してこの試合を理解しようとしていますが、ナダルは記者会見でこのように答えています。
"It's not a tragedy, I had to lose one day. I must accept my defeats with the same level of calm that I accept my victories."
「悲劇じゃないよ。いつかは負ける日がくるからね。勝利のときと同じような平静な気持ちで敗北を受け止めなければいけないと思っている。」
ナダルは複雑な気持ちを冷静にこのように表現しました。何かとても哲学的な
意味深長な言葉です。
「今日の敗北は驚いていないよ。彼のレベルは知っているし、危険なプレーヤーだということもよく知っているからね。」
「僕は今日はベストのテニスができなかった。ショートボールを打っていたし、攻撃することができなかった。彼のレベルでは、今日の僕をまかすことはたやすかったと思う。」
「僕が勝ってきたのは、体がフィットしているからだと思っている人がいるけれど、勝つのは僕がよいプレーをするからなんだ。でも今日はそうじゃなかった。だから勝てなかった。それだけのことなんだ。」
でも私たちが知りたいのは「なぜよいプレーができなかったのか?」その理由と原因です。いろいろそのことについて質問が殺到しましたが、ナダルは敗北の言い訳をするのを拒否しました。
「勝つ日もあるし、負ける日もある。それがスポーツというものだ。皆勝利のことは覚えているけど、敗北のことは覚えていない。前向きに前進することが大切なんだ。」
今年のRGは誰が最有力候補だと思いますか?の質問に「ロジャー」と迷いのない答えが返ってきました。「彼は長年にRGのタイトルを取りたがってたし、14個のGSタイトルにもなるし、ロジャーが一番優勝にふさわしいと思う。」
マッケンローは「ロジャーは今ごろシャンペンを飲んでお祝いをしているよ」と冗談をとばしていましたが、誰もがまず頭に浮かぶのがフェデラー。これでフェデラーが勝てなかったら、もう頭を丸めるしかない!(スミマセン、感情的になってます。)
これからウィンブルドンの準備に早速とりかかるのですか?の質問には、
「まずは2、3日マヨルカの自宅のプールでゆっくりしたいよ。(笑う)それから考えるよ。」
このように健気に悲しさをみせない記者会見でしたが、会場がソダリングを応援していたことについては、「ちょっと悲しかった。次は肝心なときにもうちょっと僕を応援してもらえると嬉しいナ。」とチラっと本音が出たことも、何かとても切なくて泣けてしまいました。
「僕の誕生日をパリで迎えられないのは寂しいけれど、来年はここで誕生日を祝えるようにしたい。」6月3日で23歳になるナダル。来年こそはRGタイトルNo.5と誕生日を盛大にお祝いしましょう。私も頑張ってパリに行きますよ!
クレーの歴史が変わる!
今日はナダルvsソダリングの歴史的な全仏オープンの試合を何と10時間も観てしまいました。最初はスペインからのライヴのストリーミング(アメリカは生放送しなかったのです!)、そして午後にNBCで観戦し、そして最後は夜にテニスチャンネルで観戦。
こんなに何度も観なくてもよかったのですが、NBCではマッケンローが、テニスチャンネルではナヴラティロヴァが解説していますので、彼らの解説が聞きたくて結局3時間の試合を3回も観てしまいました。
ナダルの敗北は、もちろん彼が本調子でなかったことも大きな理由でしょうが、私にはもっと大きな意味があるように思えてならないのです。それは「本格的なパワーテニス時代の到来」です。
今まで何度か「ナダルを打倒するには」のテーマで記事を書いてきました。彼はフェデラーのall round playerとは違って、まだまだ進化していける余地があったので、その意味も含めて、ナダル帝国をつくりあげるには何が必要なのか?つまり打倒されないためには何をしなければならないのか?という逆説から書いてきたわけですが、今日ソダリングにその回答をみせつけられて、少し衝撃を受けています。(つまり私が抱いていたナダル打倒のイメージと異なっていましたので。)
ソダリングは193cm、87kgの巨人です。ナダルが小柄に見えてしまうほどの大男です。しかも頭付近の高さからでも平気で打ち込んでくるフラットな高速球は、どんなにナダルの足が速くても追いつくことができません。彼のような大男の前では、ショットをミックスしたり、ペースを変えたり、する余裕も与えられず、爆発的なウィナーに近いショットでワイドにコートに追い出されて、それでおしまいです。
ナヴラティロヴァは盛んにナダルがディフェンスになりすぎて、ベースラインから下がってしまっていると叫んでいましたが、ナダルの気持ちがよく分かります。あのパワフルなショットを、フォアとバックで攻められれば、後退して身を守ってしまうのが本能。もしもナダルが頑張ってベースライン近くで対抗したとしても、今日のソダリングのショットは、正確+プレースメント+パワーの3拍子そろった完璧なショットメイキングでしたので、ナダルが勝てたかどうか。
「ナダルがなぜ負けたのか?」よりも私には「なぜソダリングが勝ったのか?」の方が興味があります。
ソダリングのテニスはクレーのテニスの常識をくつがえしてしまったです。
彼はインドアのベストプレーヤーです。インドアはサーフェスが速く、遅いクレーのサーフェスは苦手なはず。しかし今日の試合は、まるでハードコートの試合展開でした。ソダリングはサーフェスに関係なく勝つことができるテニスを立証してみせたのです。
コートの空いているところに球を打つ。このごくシンプルな勝つテニスの基本をソダリングはみせてくれたように思います。
ウィニングのレシピ
「ワイドに打って相手をコートの外に出し、オープンコートに球を叩く」ソダリングはその繰り返しでした。サーヴもワイド。カウンターもワイド。でもそんなことは誰でもやっていること。しかしナダルとの違いは、パワーとスピードです。フラットで高い打点から打ち込まれる球はまるでサーヴをうけているような威力があります。
サーヴの威力
しかもサーヴがソダリングは平均約200km、ナダルは175kmです。この25kmの差はとても大きな違いです。しかもソダリングの2ndサーヴはナダルの1stサーヴの速さです。ですからナダルはブレークすることが大変むずかしかったのです。
ディープなショット
ナダルはよくショートボールを打ってしまってソダリングに叩かれていましたが、ソダリングはディープなショットがよく決まり、終始ナダルをディフェンシヴにすることに成功しました。
ネットアプローチ
ソダリングはアグレッシヴにチャンスをつくってはネットアプローチを試みています。ソダリングは35回もネットダッシュして27回もポイントをとっているのは、いかに彼のショットに威力があり、ナダルのカウンターが緩くなってしまっているかを表しています。逆にナダルはディフェンステニスでしたので、ネットダッシュは11回のみに終わっています。
ナダルとソダリングといえば、多くのテニスファンには忘れられないエピソードがあります。ウィンブルドンの試合中に、ナダルがなかなかベンチからたちあがろうとしないので、ソダリングはナダルの物まね(パンツをひっぱる)をして彼をからかったのです。この態度の悪さは世界に放送されすっかり悪評を買ってしまいました。しかもナダルがソダリングにハローと挨拶をしても(7回だそうです)まったく返事もしようとしなかったり、とにかく彼の評判はすこぶるよくないのです。マッケンローも選手の中で彼のことをよくいう者は一人もいないと断言しているくらいですから、「ソダリングだけには勝ってほしくなかった」と苦々しく思っている選手が多くいるにちがいありません。
しかし性格はともかく、ソダリングがフォーカスを保ち続け、あの驚異的なハイパーフォーマンスを最後までキープできたことは賞賛したいと思います。
試合の経過を書こうと思いましたが、あまりにも記事が長くなりますので割愛します。その変わりにソダリングのウィニングのパターンをビデオに収録しましたのでご覧ください。