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タイガー・遼の狂想曲

The Open Championship(日本では全英オープン)の本戦がいよいよ始まりました。タイガー/遼ペアの予選のお祭り騒ぎが終わってやっと静かになり、これから本当にゴルフファンにこたえられないエキサイティングなトーナメントとなりました。

The Open
The Open Championshipを省略してイギリス人はThe Openと呼んでいますが、彼らはBritish Open の名で呼ばれるのを嫌がります。

The Open は1860年にスタートした最も古いメジャーなゴルフトーナメントです。35年後の1895年にアメリカがUS Openをスタートさせましたが、Openと名のつくのは我々のみと言う訳で、イギリスはThe Openの名にこだわりつづけているのです。私たちは便宜上、全米と区別するために気軽に全英オープンとかBritish Openなどと呼んで区別していますが、私は誇り高きイギリスの伝統に敬意を払って、 The Open と呼ぶことにします。

さてThe Openの主催者はR&Aですが、これは何の略だかご存知ですか?

The Royal and Ancient Golf Club of St Andrews 
「セントアンドリュース王室古代ゴルフクラブ」とでも訳しましょうか。古代という言葉にびっくりしますが、ゴルフの起源はローマ時代にさかのぼるという説もありますので、なるほどと納得。それにしてもこんな時代錯誤な名前にもかたくななイギリス気質をみる思いがします。

タイガー・遼の狂想曲
4つのメジャーのなかでも、最も伝統と格式高さで知られるThe Openですが、その古めかしいThe Openが今年は大胆な企画を立て世界をアッと驚かせました。

それは皆さんもご存知、ターガー・ウッズ/石川遼のペアリングです。しかも本国のトップゴルファー、リー・ウェストウッドを3人目に加えて、イギリスのゴルフファンのご機嫌も伺うという苦肉の策でスタートしたこのダイナマイト・グループは、日本はもちろんのこと、海外でも話題が沸騰しました。

石川サイドとR&Aとの間にどのような取引がされたのかわかりませんが、それにしてもうまく考えましたね。このペアリングについて巷ではいろいろ噂が流れていますが、「日本が多額の金を払って(またはスポンサーを確約をして)このペアを買い取った・・・」は、ありうる話です。何はともあれ石川遼の名はこれで世界に轟くことが保障されたのですから、日本側としてはめでたしめでたしというところでしょうか。

R&Aとしてもこの話題性のペアが予選の視聴率をあげる絶好の機会とにらみ、批判を覚悟でタイガー・遼ペアリングを決行しました。「批判を覚悟」というのは、異常な取材陣の殺到が予期される事態です。それでなくてもタイガーにはメディアが殺到します。それプラス、約100人の日本の取材陣が遼くんの一挙一動を狙ってシャッターを切るのですから、取材合戦というよりはまるでサーカスです。タイガーもいい迷惑だったのではないかと思います。

この予選を Woods-Ishikawa pairing led to media madness 「ウッズ ー 石川ペアリングが呼んだメディアの狂気」と題して、golfweek.comが取り上げています。
http://msn.foxsports.com/golf/story/9815664/Woods-Ishikawa-pairing-led-to-media-madness

その狂気のなかで、17歳で世界No.1と組んで動じる様子もなかった遼くんの度胸は、米英の解説者が何度も驚嘆するほどすばらしいものでした。初日は調子の悪いタイガーを相手に、日本のマスコミは「タイガーに勝った!」などと軽卒な見出しで大喜びをしましたが、私は内心ホッとしたのです。もし遼くんが最初からひどい成績では、日本はカネをバラ撒いてペアリングを工作したなどと中傷されるかもしれません。

初日はターンベリーはめずらしく無風快晴の理想的な天気です。遼君はついてましたね。しかし2日目の天気は典型的なスコットランドの風雨の悪天候。やはり経験の浅い遼くんにはtoo muchだったようで、結局6オーヴァーでタイガーとともにカットをミスしてしまいました。

それにしてもタイガーの態度が気になりました。最初からイライラしている様子。何度もクラブを叩き付け怒鳴ってます。解説者も眉をひそめるシーンが何度もありました。しかし立派だったのは、一緒にまわったイギリス人のウェストウッドでした。周りの取材サーカスに惑わされることなく、2で堂々とリーダーボードに残って本戦入りを果たしました。

タイガーは初日からトラブル・トレインに乗ったまま、軌道を変えることができず、2日目にはその列車に遼くんが同乗。そして二人は予選で終着駅となってしまいました。

こうなるとあの騒ぎは一体何だったんでしょうね?と考えてしまいます。

狂ったような大騒ぎの間、ひたすらもくもくと打ち続け、T2位で本戦入りした久保谷健一選手など、ほとんど報道されることもありませんでした。彼が2位に上がってきたときには、解説者に「ケニチ・カボーヤ」なんて呼ばれてしまって、最初誰のことだか気がつかなかったくらいですから。(KuboyaのKuは英語ではカになってしまうのです。それとKenichiですと発音はケニチ。Ken-ichiとハイフンを入れなければケンイチとは呼んでもらえません。)

今日の本戦はJustice is doneとでもいいましょうか、このタイガー/遼のペアのために見向きもされなかった優秀なゴルファーたちが、やっと陽の目を浴びることになったのです。

最年長の59歳のトム・ワトソン

59歳のワトソンと16歳のマナセロ

manaserowatson



懐かしい顔です。もう云十年前のことですが、私はアーノルド・パーマーを取材しています。彼はヘリコプターにのって、アメリカン・フットボールの開催式に現れたのです。ヘリから降りてスタジアムの観客に手を振りながら挨拶する彼は、とてもアメリカっぽくて、そのスケールの大きさにびっくりしたものです。これが私とゴルフとの最初の出会いだったのです。それ以降一時ゴルフに凝っていたときがありましたので、トム・ワトソンの名は懐かしくて、彼がトップを独走しているのを観て驚喜してしまいました。

「とてもスピリチャルな経験だった。」とワトソンは昨日のインタービューで語っていました。これは精神的という意味ではなくて、神懸かり的な、神聖な、崇高なとでもいいましょうか。いわゆる私たちが何げなく使っている、「ゾーンに入った」という状態だったのではないかと思います。

この感じを私は2週間前のレイク・プラシッドのゴルフ場で経験したのです。アメリカでも最古の一つに数えられる由緒あるむずかしいチャンピオンコースです。その日は豪雨。それに寒い。ぶるぶると震えながら、手袋もぐちょぐちょ。すでに前払いしてしまっているので、仕方なく貧乏人根性の息子と私は誰一人いない18ホールに挑戦したのです。こんな状況ですのでまったく自分のゴルフに期待せず、ただただ無心にクラブを振ったのでした。思いはただ風邪ひかないようにということのみ。一年に数度しかやらないゴルフです。スコアなんてどうでもよいというのが正直な気持ちでした。

このとき不思議なことが起こったのです。息子が途中でスコアの計算をし始めて叫びました。「マミー、すごいよ!9ホールで40だよ!」 この雨で? スコアボードをみるとボギーとパーでやってきた数字に間違いはありません。「よーし!やったるでェ!」それからは言うまでもなく、10ホールに入った私はタイガーのトラブル・トレインです。スコアを気にし始めたのです。コースも狙いすぎ。スウィングもあれこれ考えすぎ。しかし前半のゲームはまさにワトソンのいう「スピリチャル」な経験だったと思います。

無心に打つ。テニスにもありますね。2000年にUS Openの決勝で、サンプラスを6-4, 6-3, 6-3で圧勝したサフィンも、あっと気がつけば勝っていたと言っていました。あれ以上の試合はまだしたことがないと言っていましたので、あのときは神が乗り移っていたのでしょう。

9ヶ月前に腰の手術をしたばかりで、還暦をむかえようとしているワトソンのゴルフは、まさに神懸かりでした。奇跡のパットが続きます。 予選でワトソンとマナセロのグループでプレイをしたヒンギスの昔の恋人、セルジオ・ガルシアがワトソンに叫びました。”Come on old man!”このユーモアあふれる激励の言葉にワトソンは、「ホント、オールドマンだよ。」とユーモアを返しながら、今日もスピリチャルなショットで独走しつづけているのです。

最年少の16歳のマテオ・マナセロ

manasero


さて最年長のワトソンとペアリングをしたのは、大会で最年少のマテオ・マナセロくん。彼は全英アマチュア選手権で優勝したばかりのイタリアの男の子です。この業績が認められて今年のThe Openと来年のマスターズに招待が決まりました。


イタリアのスポーツ紙, La Stampaをグーグルで訳してみると:
ゴルフはどれくらいやっているの? 
「学校があるから木曜とあとは土日の週末だけ。」

趣味は? 「サッカー」

メディアに追っかけられる? 
「僕の家族はとてもシンプルなんだ。両親なんかTVのインターヴューを受けてとても緊張していたよ。」

好きな学科は? 「数学」

もしメジャーで優勝したら何を買いたい?
「ドバイに別荘がほしい。とてもきれいなところみたいだから。」(きっとフェデラーのようなライフスタイルを夢にみているかもしれません)

今すぐにでもプロになれるのにならないの?
「プロになるのはまだ3年先。きちんと学校を卒業してから。学校はとても大切だから。」
(どんなに若くてもすぐプロになりたがる風潮のなかで貴重な存在です。遼くんはすでに何億と稼いでますが、いくらでも稼げることが分かっていて急がず慌てずというところが大物。両親も立派です。タイガーもそういえばスタンフォード大中退ですね。)

遼とマテロの二人のティーンネージャーを、伝説のゴルファーとペアリングさせた企画もなかなか面白いものがありました。それもよく似た者同士のペアリングは気が利いてました。

タイガー・遼は取材陣を惹き付ける華やかなで大胆なゴルフ。ワトソン・マテロはシンプルながら奥の深いゴルフ。 マテロは今日は+3で18ホールを終了してT28位です。73人の中でアマチュアは彼一人。遼くんよりも若くしかも初めてのメジャーで本戦入りという偉業を果たしたマテロくん。小さいときからスポットライトを浴び、若くしてプロになった遼くんとは対照的なゴルファーです。この二人が将来どのようなゴルファーに成長するか楽しみが増えました。

マテオくんといい、遼くんといい、ゴルフの世界もテニスに負けずイケメン選手が多いのも嬉しい話。しかも年寄りも若手も面白いキャラクターが一杯です。しかし明日の最終戦は是非とも年寄りの希望の星、ワトソンに勝利してもらいたいと願っています。

ここで忘れてならないのは、残念ながら2位からT14位に落ちてしまったカボーヤ(久保谷)選手です。65、72、75と毎日叩く数が多くなっていますが、最後の踏ん張りで再びリーダーボードへカムバックしてほしと思います。

Let's go カボーヤ!


投稿者 Tennisnakama  06:31 | コメント(9) | トラックバック(0)