2008年06月20日
ウィンブルドンのSeeding Policy
ウィンブルドンがいよいよ6月23日から始まります。今年も去年同様、TVでコート1の生放送を観戦しながら、コンピューター2台のstreaming で小規模のコートをカヴァーして、ほとんど完璧にすべての試合を観戦できる準備も整いました。大型のHDTVも購入して、ちょっとクレージーですが、3つのモニターで我が家のキッチンは来週からスポーツバーに変わります。
ウィンブルドンの2週間は、試合の報告だけでなく、ウィンブルドンにまつわるエピソードも加えて、ウィンブルドンウィークを楽しみたいと思います。
今日は、2000年のクレーコートの選手によるウィンブルドンのボイコット話から、ウィンブルドンのSeeding Policyについてお話しましょう。
新しい Seeding Policy誕生。シード16からシード32システムへ
2001年にウィンブルドンは、今までのシード16からシードを32まで増やした新しい Seeding Policy を導入しました。事の発端は、スペインのクレーコートスペシャリスト、コレッチャ(アンディマリーの現コーチ)とコスタが、2000年にウィンブルドンの Seeding Policyを不満として、試合をボイコットする意向を声明したことに始まります。彼らはATPのランキングではシード16以内にはいるのですが、ウィンブルドンの独自の Seeding Policy だと、シードはもらえなくなり、トップの選手と1回戦から当たってしまう可能性が出て来たからです。トッププレーヤーにとっては、シード番号によって対戦相手が変わるため、シード問題は大変重要な問題です。当時世界一位のクェルテンも不満を訴え、2001年のウィンブルドン撤退をほのめかしたこともあり、大事態に発展することを恐れて、全英ローンテニス協会では、他のグランドスラムと同じ、シードを32までと変更しました。
ウィンブルドンの独自の Seeding Orderとは?
しかし、シードが32にまで増えたといっても、ウィンブルドン独自のポイントシステムで Seeding Orderが決まりますので、これを不満に訴える選手も多く、全英ローンテニス協会としては、これからもこのポリシーの再検討が迫られています。
イギリスにとっては国民の悲願ともいえるウィンブルドンの優勝は、男子選手では半世紀以上も実現していません。タイトル獲得を実現させるためには、イギリスの芝コートプレーヤーに有利になるポイントシステム、つまり芝の大会のポイントを増やしてシードを決める、このせこいSeeding System が問題になるのは当然の話ですが、傑作なのは、イギリス・ナンバーワンのアンディー・マリーがこのシステムに反対していることです。
マリーはいわゆる昔からイギリスの反逆児で、イギリスでは上手くならないと見切りをつけ、スペインでトレーニングを積んできた彼は、 全英ローンテニス協会のやり方に批判的でした。 昨日のイギリス紙、ガーディアンの記事に、マリーはこのSeeding Systemのために、自分よりランキングの低いバグダティスやバーディッチが、上位にきてしまい不公平だと不満を漏らしています。どうしてこういうことが起こるのでしょうか?
全豪、全仏、全米のグランドスラムは、ATPランキングによってシードが決められますが、ウィンブルドンでは、ATPポイントに加えて、
(1)過去一年の芝の大会でのポイントが加わります。それだけではありません。(2)2年前の一年間でベストな芝のポイントの75%も加算されるのです。
それでなくても、芝の大会は少ないのですから、ウィンブルドンを昨年逃したマリーは、得点が加算されないため、こういう結果になってしまうのです。
例をとって詳しくウィンブルドンの Seeding Systemを説明しますと:
以下のリストは2008年の32のシードプレーヤーです。カッコ内の( )の数字は、ATPのランキングです。両方のランキングを比べてみますと、10位以下はかなりメンバーに変更があります。それではガスケとブレイクの例をとってウィンブルドンのシードランキングがどのように決定されるのか説明しましょう。
ATPランキングではガスケが9位、ブレイクが8位ですが、ウィンブルドンではガスケが8位、ブレイクが9位とランキングが入れ替わっています。今年は6月16日のATPのランキングをもとに、次のような計算でウィンブルドンのSeeding orderが決まりました。
ガスケのATPポイント:1625
ガスケのウィンブルドンのポイント:1625 + 545 + 131.25=2301.25
(1) ガスケの過去一年の芝のポイント:
(2007年6月16日~2008年6月15日):55 (Queen’s club) + 40 (Nottingham) + 450 (Wimbledon) = 545
(2) ガスケの2年前の芝のベストポイントの75%:
(2006年6月16日~2007年6月15日):175 (Nottingham) x 0.75=131.25
ブレイクのATPポイント:2015
ブレイクのウィンブルドンのポイント:2015 + 175 + 56.25=2246.25
ブレイクの芝のポイント:
(1) 100 (Halle) + 75 (wimbledon)=175
(2) 75 (Wimbledon) x 0.75=56.25
以上のような計算で、ブレイクはガスケよりATPでは390ポイントも多いのに、ウィンブルドンでは、55ポイント少なくなってしまうのです。
こうやってみると、シードの比較をしてみるのもなかなか面白いですね。
ウィンブルドンシード(ATPランキング)選手名(国名)
1. (1) Roger FEDERER (SUI)
2. (2) Rafael NADAL (ESP)
3. (3) Novak DJOKOVIC (SRB)
4. (4) Nikolay DAVYDENKO (RUS)
5. (5) David FERRER (ESP)
6. (6) Andy RODDICK (USA)
7. (7) David NALBANDIAN (ARG)
8. (9) Richard GASQUET (FRA)
9. (8) James BLAKE (USA)
10. (25) Marcos BAGHDATIS (CYP)
11. (19) Tomas BERDYCH (CZE)
12. (11) Andy MURRAY (GBR)
13. (10) Stanislas WAWRINKA (SUI)
14. (16) Paul-Henri MATHIEU (FRA)
15. (14) Fernando GONZALEZ (CHI)
16. (15) Radek STEPANEK (CZE)
17. (17) Mikhail YOUZHNY (RUS)
18. (22) Ivo KARLOVIC (CRO)
19. (12) Nicolas ALMAGRO (ESP)
20. (27) Lleyton HEWITT (AUS)
21. (23) Juan Carlos FERRERO (ESP)
22. (21) Fernando VERDASCO (ESP)
23. (18) Tommy ROBREDO (ESP)
24. (28) Jarkko NIEMINEN (FIN)
25. (31) Dmitry TURSUNOV (RUS)
26. (26) Ivan LJUBICIC (CRO)
27. (33) Nicolas KIEFER (GER)
28. (29) Gilles SIMON (FRA)
29. (30) Andreas SEPPI (ITA)
30. (32) Gael MONFILS (FRA)
31. (35) Feliciano LOPEZ (ESP)
32. (34) Michael LLODRA (FRA)
ウィンブルドンの2週間は、試合の報告だけでなく、ウィンブルドンにまつわるエピソードも加えて、ウィンブルドンウィークを楽しみたいと思います。
今日は、2000年のクレーコートの選手によるウィンブルドンのボイコット話から、ウィンブルドンのSeeding Policyについてお話しましょう。
新しい Seeding Policy誕生。シード16からシード32システムへ
2001年にウィンブルドンは、今までのシード16からシードを32まで増やした新しい Seeding Policy を導入しました。事の発端は、スペインのクレーコートスペシャリスト、コレッチャ(アンディマリーの現コーチ)とコスタが、2000年にウィンブルドンの Seeding Policyを不満として、試合をボイコットする意向を声明したことに始まります。彼らはATPのランキングではシード16以内にはいるのですが、ウィンブルドンの独自の Seeding Policy だと、シードはもらえなくなり、トップの選手と1回戦から当たってしまう可能性が出て来たからです。トッププレーヤーにとっては、シード番号によって対戦相手が変わるため、シード問題は大変重要な問題です。当時世界一位のクェルテンも不満を訴え、2001年のウィンブルドン撤退をほのめかしたこともあり、大事態に発展することを恐れて、全英ローンテニス協会では、他のグランドスラムと同じ、シードを32までと変更しました。
ウィンブルドンの独自の Seeding Orderとは?
しかし、シードが32にまで増えたといっても、ウィンブルドン独自のポイントシステムで Seeding Orderが決まりますので、これを不満に訴える選手も多く、全英ローンテニス協会としては、これからもこのポリシーの再検討が迫られています。
イギリスにとっては国民の悲願ともいえるウィンブルドンの優勝は、男子選手では半世紀以上も実現していません。タイトル獲得を実現させるためには、イギリスの芝コートプレーヤーに有利になるポイントシステム、つまり芝の大会のポイントを増やしてシードを決める、このせこいSeeding System が問題になるのは当然の話ですが、傑作なのは、イギリス・ナンバーワンのアンディー・マリーがこのシステムに反対していることです。
マリーはいわゆる昔からイギリスの反逆児で、イギリスでは上手くならないと見切りをつけ、スペインでトレーニングを積んできた彼は、 全英ローンテニス協会のやり方に批判的でした。 昨日のイギリス紙、ガーディアンの記事に、マリーはこのSeeding Systemのために、自分よりランキングの低いバグダティスやバーディッチが、上位にきてしまい不公平だと不満を漏らしています。どうしてこういうことが起こるのでしょうか?
全豪、全仏、全米のグランドスラムは、ATPランキングによってシードが決められますが、ウィンブルドンでは、ATPポイントに加えて、
(1)過去一年の芝の大会でのポイントが加わります。それだけではありません。(2)2年前の一年間でベストな芝のポイントの75%も加算されるのです。
それでなくても、芝の大会は少ないのですから、ウィンブルドンを昨年逃したマリーは、得点が加算されないため、こういう結果になってしまうのです。
例をとって詳しくウィンブルドンの Seeding Systemを説明しますと:
以下のリストは2008年の32のシードプレーヤーです。カッコ内の( )の数字は、ATPのランキングです。両方のランキングを比べてみますと、10位以下はかなりメンバーに変更があります。それではガスケとブレイクの例をとってウィンブルドンのシードランキングがどのように決定されるのか説明しましょう。
ATPランキングではガスケが9位、ブレイクが8位ですが、ウィンブルドンではガスケが8位、ブレイクが9位とランキングが入れ替わっています。今年は6月16日のATPのランキングをもとに、次のような計算でウィンブルドンのSeeding orderが決まりました。
ガスケのATPポイント:1625
ガスケのウィンブルドンのポイント:1625 + 545 + 131.25=2301.25
(1) ガスケの過去一年の芝のポイント:
(2007年6月16日~2008年6月15日):55 (Queen’s club) + 40 (Nottingham) + 450 (Wimbledon) = 545
(2) ガスケの2年前の芝のベストポイントの75%:
(2006年6月16日~2007年6月15日):175 (Nottingham) x 0.75=131.25
ブレイクのATPポイント:2015
ブレイクのウィンブルドンのポイント:2015 + 175 + 56.25=2246.25
ブレイクの芝のポイント:
(1) 100 (Halle) + 75 (wimbledon)=175
(2) 75 (Wimbledon) x 0.75=56.25
以上のような計算で、ブレイクはガスケよりATPでは390ポイントも多いのに、ウィンブルドンでは、55ポイント少なくなってしまうのです。
こうやってみると、シードの比較をしてみるのもなかなか面白いですね。
ウィンブルドンシード(ATPランキング)選手名(国名)
1. (1) Roger FEDERER (SUI)
2. (2) Rafael NADAL (ESP)
3. (3) Novak DJOKOVIC (SRB)
4. (4) Nikolay DAVYDENKO (RUS)
5. (5) David FERRER (ESP)
6. (6) Andy RODDICK (USA)
7. (7) David NALBANDIAN (ARG)
8. (9) Richard GASQUET (FRA)
9. (8) James BLAKE (USA)
10. (25) Marcos BAGHDATIS (CYP)
11. (19) Tomas BERDYCH (CZE)
12. (11) Andy MURRAY (GBR)
13. (10) Stanislas WAWRINKA (SUI)
14. (16) Paul-Henri MATHIEU (FRA)
15. (14) Fernando GONZALEZ (CHI)
16. (15) Radek STEPANEK (CZE)
17. (17) Mikhail YOUZHNY (RUS)
18. (22) Ivo KARLOVIC (CRO)
19. (12) Nicolas ALMAGRO (ESP)
20. (27) Lleyton HEWITT (AUS)
21. (23) Juan Carlos FERRERO (ESP)
22. (21) Fernando VERDASCO (ESP)
23. (18) Tommy ROBREDO (ESP)
24. (28) Jarkko NIEMINEN (FIN)
25. (31) Dmitry TURSUNOV (RUS)
26. (26) Ivan LJUBICIC (CRO)
27. (33) Nicolas KIEFER (GER)
28. (29) Gilles SIMON (FRA)
29. (30) Andreas SEPPI (ITA)
30. (32) Gael MONFILS (FRA)
31. (35) Feliciano LOPEZ (ESP)
32. (34) Michael LLODRA (FRA)
投稿者 Tennisnakama 21:20 | コメント(3)| トラックバック(0)
こんなに芝のポイントが入ると、バグダティスのように25位から10位に上がっちゃうんですね。これはちょっと考えものですよね。
http://tennis55.exblog.jp/8834219/
その選出方法で落ちちゃう選手の不満はわかるんですが、
一ファンとしては、それもありかなぁ~、と思ったりして。
芝って特殊ってかんじがありますもんね。