2009年04月21日
ナダル5年連続優勝
やはりナダルが優勝しましたね!
これでモンテカルロは5年連続優勝となります。そしてナダルのクレーのタイトルは実に23となり、クレーの決勝で負けたのは1回だけ。フェデラーにまけた2007年ハンブルグの決勝のみという信じられない強さです。
ジョコヴィッチは負けましたが最高のプレーをしました。特に第2セットのアグレッシヴな攻撃テニスはすざましく、ナダルはたじたじと守りのテニスに終始。ジョコは「クレーでは僕はベストのプレーをした」と言っています。しかしマレーもそうですが、ナダルに勝つには、彼らの最高のテニスを最後まで維持しなければなりません。1球たりとも甘いショットを打てば自殺行為となり、それはとても非人間的なことで不可能にすら見えます。ジョコは彼のベストなテニスをプレーし続けることができずナダルに破れてしまいました。
Nadal def Djokovic: 6-3, 2-6, 6-1
第1セット
第1セットはブレークにはじまりブレークに終わる不思議なセットでした。第3ゲームでお互いがブレークし合ってスコアはイーヴンの1-1。ジョコのサーヴです。1stサーヴにラインマンがFaultの判定を下しました。ナダルはひょっとしたらInかもしれないと思ったのでしょう。ジョコが頼みもしないのに、ナダルは球跡をしらべるために、自分のコートのサーヴィスラインまで行きました。そしてアンパイアを呼んで、確認してほしいとリクエストしたのです。結局アンパイアは、Outと判定しましたが、こんなことは大変めずらしいことです。普通は相手のサーヴが入っているかもしれないと思っても、相手が頼みもしないのに自ら不利になるようなことはしないものです。このような行為がナダルを真のスポーツマンとして尊敬される要因となっているのでしょうね。
第3ゲームはジョコがサーヴィスゲームをホールドすることができましたが、第4ゲームで再びナダルがブレークされてしまいます。ナダルの立っている平均位置が解説者によるとベースラインから2.1m。ジョコは1.4m。ナダルはジョコに比べてベースラインから下がりすぎています。これではウィナーが決まらない。ジョコも下がり過ぎのナダルに気がついたのでしょう。さかんにドロップショットをしかけてきます。
1-3とブレークされてしまったナダルは猛烈な反撃をしかけ始めました。他の選手ですと、ブレークされてしまうとプレッシャーが高まり固くなったり焦ったりしてプレーに影響が出てきます。つまり力み現象です。ここでナダルのすごいのは、ネガティヴ・エネルギーを「僕は絶対勝ってみせる!」のポジティヴ・エネルギーに転換できること。集中力を100%アップして攻撃モードにスウィッチ・オンがかかり40-0と圧倒的な強さでジョコをブレークし直してしまいました。
ジョコも負けていません。「僕だって負けるもんか!」第6ゲームに猛然と攻撃をしかけてきます。両選手一歩も攻撃の手を緩めず、ウィナー狙いのきわどいショットが両サイドに決まっていきます。こうなるとテニス観戦の醍醐味です。相手のエラーで得点するテニスはつまらないものがありますが、お互いがウィナーを決め合って競り合うゲームは迫力そのもの。40-30でナダルは神業的なバックハンドクロスがコーナーに突き刺さってサーヴィスゲームをホールドしました。
第5・第6ゲームを連続勝ち取ったナダルの勢いはもう止められません。第7ゲームは40-15ですでにブレークポイントです。しかしジョコも粘りもすばらしく、ドロップショットで決め、フォアのダウンザラインのウィナーで挽回。デュースに戻しますが、ベースラインをオーヴァーしたショットを打った瞬間、ジョコは背中の下部に手を当てて顔をゆがめました。どうやら腰を痛めた模様。痛さのせいかジョコは、ブレークポイントで大きくワイドにはずれるバックハンドを打ってブレークされてしまいました。スコアは4-3でナダルのリードです。
ここでジョコはメディカル・タイムアウトをとります。トレーナーがジョコの右側の背中の下部をマッサージしています。背中が気になるのか、ジョコはブレークされてしまって、第1セットは6-3でナダルの勝利に終わりました。
しかし、ジョコに故障がなくても、ナダルはこのセットは勝っていたと思います。後半のナダルは試合を支配しジョコに付け入る隙を与えませんでした。
第2セット
第2セットはジョコの執念のセットでした。猛然と立ち向かったジョコは、サーヴィスが75%の高率で、アグレッシヴな攻撃を続けます。ハイライトは第1ゲームのブレークポイントです。ジョコは何度もウィナーを狙いますが、ナダルのカウンターショットで決まらず、最後にドロップショットを試みます。しかしナダルがネットに届きロブ返し。34のストロークの後、やっとジョコはスマッシュでナダルをブレークしました。
第1ゲームですでにナダルをブレークしたジョコは、まさに恐れを知らずのアグレッシヴ・テニスを展開。圧倒的なジョコ・テニス「両サイドに振り回してオープンコートにウィナーを決める」の強さを披露してくれました。5-2の第8ゲームでは、最後にサーヴィスエースを立て続けに2本とってナダルをブレークして、第2セットを快勝しました。
第2セットをナダルが2-6で完敗しましたが、私にはナダルが第3セットを落とすことは考えられませんでした。長年ナダルの試合を見てきた経験からくる直感とでもいいましょうか。まずジョコのフィジカルと集中力の問題です。ナダルのスピンボールは相手を2倍以上疲れさす威力があり、試合が長引けば長引くほどナダルの有利になるからです。ジョコが第2セットでみせたのは彼のベストなテニスです。このレベルを第3セットまで持ち続けるのは不可能に近いと感じたのです。
第3セット
第1ゲームはナダルの真の強さを見せたゲームでした。ジョコは勝った勢いでナダルをブレークしようと、またもやアタックモード全開で40-30のブレークチャンスを迎えます。ナダルはここで落としてしまうと第2セットの二の舞になり、ジョコの勢いを止められなくなります。絶対落としてはならないゲームなのです。
ジョコのパーフェクトなドロップショットにベースラインから猛然ダッシュしたナダルは、超アングルのヴォレーでウィナーを。エッ? まさか!? 考えられないナダルのスーパショットに、呆然としたジョコは膝まずいてうなだれてしまいました。
I don’t believe it!! 解説者が叫びます。興奮して席から飛び上がって叫ぶ様子が目に浮かびます。This is sensational!!何度も解説者が叫びました。
人間の限界に挑戦する二人。彼らが繰り広げる壮絶なドラマに会場は拍手が鳴り止みません。
3度のブレークポイントを逃れたナダルは、「バモース!」と拳を握りしめ大声で叫びました。ライオンの王者、ナダル獅子が吠えたのです。危ないのはジョコです。この「バモース!」でナダルのギアは全開です。一瞬たりとも狙った獲物は逃がさない。ナダルの目は獰猛な獣の目となってジョコを追いつめ、ブレークしてしまいました。
しかしジョコもしぶとくあきらめません。第3ゲームではナダルのバックサイドを攻撃、ワイドに振ってオープンコートにウィナーを決めていきます。このパターンは効果的で何度もジョコは成功しています。ナダルはジョコの浮いた球をネットダッシュせず、ベースラインに留まっています。そしてやがてはジョコにウィナーをとられてブレークされ、これでスコアは元通りのイーヴンになってしまいました。もったいない!
第3セットの勝敗を決定したのは第4ゲーム(2-1)だと思います。ジョコのサーヴです。ジョコが勝ち急いでしまいました。ミスが目立ち15-40とブレークポイントを迎え、最後はワイルドなミスでブレークされてしまいます。これはジョコも記者会見で言っているように「もっと辛抱強くプレーするべきだった。」
ジョコのエラーは試合を通して47もおかしています。ナダルの24の2倍です。これはリスクを犯さなければ勝てないジョコのプレッシャーを大きさを物語っています。
第5ゲームではスコアは3-1、ナダルのリードとなってしまい、ジョコは心身ともに疲れが出てきました。ドロップショットも甘く、フットワークにもたつきが出てきました。今までウィナーが打てたショットも決まらなくなって、0-40でナダルに完敗。
ジョコのファイトもここまでが限界でした。第6ゲーム(4-1)でジョコは試合を投げ出しました。もうどう攻めてよいのか分からず、一か八かの一発勝負です。結果は当然のごとく、15-40, 0-40で第3セットは1-6の惨敗となってしまいました。
Federerはトップ4に勝てるか?
マレーの準決勝、ジョコの決勝を観てまず思ったのは、このハイレベルの試合を果たして今のフェデラーが出来るかどうか? ライン上にウィナーを打ち込まなければ勝てなくなってきている今日のテニスにあって、昔のスイス時計のような正確さは、今のフェデラーにはありません。クレーではサーヴがよくてもリターンされてしまうので、サーヴ&ヴォレーは武器とはなりませんし、ネットダッシュも相手の球を浮かせるだけのショット力がなければ、パッシングショットで逆襲されます。クレーでは球のスピンや速さが殺されてしまうため、マレーのペースを変えるテニスはそれほど効果はなく、今までマレーはクレーは不振でした。
エミリオ・サンチェスが言った「Correct Playerでなければクレーは勝てない」という意味がだんだん分かってきたような気がします。あらゆる技術を正確に身につけた、正確なテニスをする選手でなければならない。ナダル、ジョコ、マレーに勝つには、果たしてどれだけフェデラーが正確な選手でありうることができるでしょうか?
今後のNadalの課題:
ナダルは怪我をしないかぎりクレーは勝っていくと思いますが、しかし疲れが最大の敵となるでしょうね。今週はバルセロナ、来週はローマと3週間立て続けにトーナメントが続きます。それにマドリッドのマスターズも控え、フレンチまで十分に体を休めることができるかどうか?
当然フレンチは優勝するものとして、彼の最大ゴールはウィンブルドンとUS Openのグランドスラムの記録だと思います。速い芝とハードでは、浮いた球をネットで決めないと勝てません。ダヴィデンコが準決勝で見せた見事なネットダッシュです。疑問なのは、ナダルはなぜ相手の球が浮いているのに、もっとネットダッシュしてヴォレーで決めてしまわないのか? あれほどネットプレーはうまいのに。リスクは負いたくないためについ自分の居心地のよい場所(ベースライン)から打ってしまうのでしょうが、これでは速いサーフェスで勝つのはむずかしい。ジョコヴィッチは決勝では31ネットダッシュしています。ナダルはそれでも15回していますが、もっとできるチャンスはありました。後はサーヴのプレースメント。この二つが向上すればナダルのブランドスラム達成も夢でないと思っています。
(後記)
ナダルのトニーコーチは、「ナダルはこの試合はもっとちゃんとやれるはずだったのでちょっと自信を失っている。サーヴが弱すぎた。」という厳しいコメントを残しています。勝ったことは褒めてあげるが、試合の内容がもう一つといいたげなコーチ。
ナダルはクレーでは1セットも負けてはならない宿命にあるようで、いやはや彼のプレッシャーは想像を絶するものがありますね。
(追記:2007年のハンブルグでフェデラーに負けた試合について)
このハンブルグのマスターズは観戦しましたが、フェデラーも調子はよかったのですが、ナダルが疲れすぎていました。彼は以下のクレーのトーナメントをすべて優勝して休む暇がなく、メンタル的にも限界がきていたと思います。とてもナダルらしくないミスの多い試合で、ナダル自身疲れすぎたと認めていましたから。フェデラーの優勝にケチをつける気はありませんが、通常の状態であれば、フェデラーが勝てたかどうかわからないトーナメントでした。
2007年ナダル優勝の経歴
4月15日モンテカルロ・マスターズ
4月23日バルセロナ
5月7日ローマ・マスターズ
5月14日ハンブルグ・マスターズ
これでモンテカルロは5年連続優勝となります。そしてナダルのクレーのタイトルは実に23となり、クレーの決勝で負けたのは1回だけ。フェデラーにまけた2007年ハンブルグの決勝のみという信じられない強さです。
ジョコヴィッチは負けましたが最高のプレーをしました。特に第2セットのアグレッシヴな攻撃テニスはすざましく、ナダルはたじたじと守りのテニスに終始。ジョコは「クレーでは僕はベストのプレーをした」と言っています。しかしマレーもそうですが、ナダルに勝つには、彼らの最高のテニスを最後まで維持しなければなりません。1球たりとも甘いショットを打てば自殺行為となり、それはとても非人間的なことで不可能にすら見えます。ジョコは彼のベストなテニスをプレーし続けることができずナダルに破れてしまいました。
Nadal def Djokovic: 6-3, 2-6, 6-1
第1セット
第1セットはブレークにはじまりブレークに終わる不思議なセットでした。第3ゲームでお互いがブレークし合ってスコアはイーヴンの1-1。ジョコのサーヴです。1stサーヴにラインマンがFaultの判定を下しました。ナダルはひょっとしたらInかもしれないと思ったのでしょう。ジョコが頼みもしないのに、ナダルは球跡をしらべるために、自分のコートのサーヴィスラインまで行きました。そしてアンパイアを呼んで、確認してほしいとリクエストしたのです。結局アンパイアは、Outと判定しましたが、こんなことは大変めずらしいことです。普通は相手のサーヴが入っているかもしれないと思っても、相手が頼みもしないのに自ら不利になるようなことはしないものです。このような行為がナダルを真のスポーツマンとして尊敬される要因となっているのでしょうね。
第3ゲームはジョコがサーヴィスゲームをホールドすることができましたが、第4ゲームで再びナダルがブレークされてしまいます。ナダルの立っている平均位置が解説者によるとベースラインから2.1m。ジョコは1.4m。ナダルはジョコに比べてベースラインから下がりすぎています。これではウィナーが決まらない。ジョコも下がり過ぎのナダルに気がついたのでしょう。さかんにドロップショットをしかけてきます。
1-3とブレークされてしまったナダルは猛烈な反撃をしかけ始めました。他の選手ですと、ブレークされてしまうとプレッシャーが高まり固くなったり焦ったりしてプレーに影響が出てきます。つまり力み現象です。ここでナダルのすごいのは、ネガティヴ・エネルギーを「僕は絶対勝ってみせる!」のポジティヴ・エネルギーに転換できること。集中力を100%アップして攻撃モードにスウィッチ・オンがかかり40-0と圧倒的な強さでジョコをブレークし直してしまいました。
ジョコも負けていません。「僕だって負けるもんか!」第6ゲームに猛然と攻撃をしかけてきます。両選手一歩も攻撃の手を緩めず、ウィナー狙いのきわどいショットが両サイドに決まっていきます。こうなるとテニス観戦の醍醐味です。相手のエラーで得点するテニスはつまらないものがありますが、お互いがウィナーを決め合って競り合うゲームは迫力そのもの。40-30でナダルは神業的なバックハンドクロスがコーナーに突き刺さってサーヴィスゲームをホールドしました。
第5・第6ゲームを連続勝ち取ったナダルの勢いはもう止められません。第7ゲームは40-15ですでにブレークポイントです。しかしジョコも粘りもすばらしく、ドロップショットで決め、フォアのダウンザラインのウィナーで挽回。デュースに戻しますが、ベースラインをオーヴァーしたショットを打った瞬間、ジョコは背中の下部に手を当てて顔をゆがめました。どうやら腰を痛めた模様。痛さのせいかジョコは、ブレークポイントで大きくワイドにはずれるバックハンドを打ってブレークされてしまいました。スコアは4-3でナダルのリードです。
ここでジョコはメディカル・タイムアウトをとります。トレーナーがジョコの右側の背中の下部をマッサージしています。背中が気になるのか、ジョコはブレークされてしまって、第1セットは6-3でナダルの勝利に終わりました。
しかし、ジョコに故障がなくても、ナダルはこのセットは勝っていたと思います。後半のナダルは試合を支配しジョコに付け入る隙を与えませんでした。
第2セット
第2セットはジョコの執念のセットでした。猛然と立ち向かったジョコは、サーヴィスが75%の高率で、アグレッシヴな攻撃を続けます。ハイライトは第1ゲームのブレークポイントです。ジョコは何度もウィナーを狙いますが、ナダルのカウンターショットで決まらず、最後にドロップショットを試みます。しかしナダルがネットに届きロブ返し。34のストロークの後、やっとジョコはスマッシュでナダルをブレークしました。
第1ゲームですでにナダルをブレークしたジョコは、まさに恐れを知らずのアグレッシヴ・テニスを展開。圧倒的なジョコ・テニス「両サイドに振り回してオープンコートにウィナーを決める」の強さを披露してくれました。5-2の第8ゲームでは、最後にサーヴィスエースを立て続けに2本とってナダルをブレークして、第2セットを快勝しました。
第2セットをナダルが2-6で完敗しましたが、私にはナダルが第3セットを落とすことは考えられませんでした。長年ナダルの試合を見てきた経験からくる直感とでもいいましょうか。まずジョコのフィジカルと集中力の問題です。ナダルのスピンボールは相手を2倍以上疲れさす威力があり、試合が長引けば長引くほどナダルの有利になるからです。ジョコが第2セットでみせたのは彼のベストなテニスです。このレベルを第3セットまで持ち続けるのは不可能に近いと感じたのです。
第3セット
第1ゲームはナダルの真の強さを見せたゲームでした。ジョコは勝った勢いでナダルをブレークしようと、またもやアタックモード全開で40-30のブレークチャンスを迎えます。ナダルはここで落としてしまうと第2セットの二の舞になり、ジョコの勢いを止められなくなります。絶対落としてはならないゲームなのです。
ジョコのパーフェクトなドロップショットにベースラインから猛然ダッシュしたナダルは、超アングルのヴォレーでウィナーを。エッ? まさか!? 考えられないナダルのスーパショットに、呆然としたジョコは膝まずいてうなだれてしまいました。
I don’t believe it!! 解説者が叫びます。興奮して席から飛び上がって叫ぶ様子が目に浮かびます。This is sensational!!何度も解説者が叫びました。
人間の限界に挑戦する二人。彼らが繰り広げる壮絶なドラマに会場は拍手が鳴り止みません。
3度のブレークポイントを逃れたナダルは、「バモース!」と拳を握りしめ大声で叫びました。ライオンの王者、ナダル獅子が吠えたのです。危ないのはジョコです。この「バモース!」でナダルのギアは全開です。一瞬たりとも狙った獲物は逃がさない。ナダルの目は獰猛な獣の目となってジョコを追いつめ、ブレークしてしまいました。
しかしジョコもしぶとくあきらめません。第3ゲームではナダルのバックサイドを攻撃、ワイドに振ってオープンコートにウィナーを決めていきます。このパターンは効果的で何度もジョコは成功しています。ナダルはジョコの浮いた球をネットダッシュせず、ベースラインに留まっています。そしてやがてはジョコにウィナーをとられてブレークされ、これでスコアは元通りのイーヴンになってしまいました。もったいない!
第3セットの勝敗を決定したのは第4ゲーム(2-1)だと思います。ジョコのサーヴです。ジョコが勝ち急いでしまいました。ミスが目立ち15-40とブレークポイントを迎え、最後はワイルドなミスでブレークされてしまいます。これはジョコも記者会見で言っているように「もっと辛抱強くプレーするべきだった。」
ジョコのエラーは試合を通して47もおかしています。ナダルの24の2倍です。これはリスクを犯さなければ勝てないジョコのプレッシャーを大きさを物語っています。
第5ゲームではスコアは3-1、ナダルのリードとなってしまい、ジョコは心身ともに疲れが出てきました。ドロップショットも甘く、フットワークにもたつきが出てきました。今までウィナーが打てたショットも決まらなくなって、0-40でナダルに完敗。
ジョコのファイトもここまでが限界でした。第6ゲーム(4-1)でジョコは試合を投げ出しました。もうどう攻めてよいのか分からず、一か八かの一発勝負です。結果は当然のごとく、15-40, 0-40で第3セットは1-6の惨敗となってしまいました。
Federerはトップ4に勝てるか?
マレーの準決勝、ジョコの決勝を観てまず思ったのは、このハイレベルの試合を果たして今のフェデラーが出来るかどうか? ライン上にウィナーを打ち込まなければ勝てなくなってきている今日のテニスにあって、昔のスイス時計のような正確さは、今のフェデラーにはありません。クレーではサーヴがよくてもリターンされてしまうので、サーヴ&ヴォレーは武器とはなりませんし、ネットダッシュも相手の球を浮かせるだけのショット力がなければ、パッシングショットで逆襲されます。クレーでは球のスピンや速さが殺されてしまうため、マレーのペースを変えるテニスはそれほど効果はなく、今までマレーはクレーは不振でした。
エミリオ・サンチェスが言った「Correct Playerでなければクレーは勝てない」という意味がだんだん分かってきたような気がします。あらゆる技術を正確に身につけた、正確なテニスをする選手でなければならない。ナダル、ジョコ、マレーに勝つには、果たしてどれだけフェデラーが正確な選手でありうることができるでしょうか?
今後のNadalの課題:
ナダルは怪我をしないかぎりクレーは勝っていくと思いますが、しかし疲れが最大の敵となるでしょうね。今週はバルセロナ、来週はローマと3週間立て続けにトーナメントが続きます。それにマドリッドのマスターズも控え、フレンチまで十分に体を休めることができるかどうか?
当然フレンチは優勝するものとして、彼の最大ゴールはウィンブルドンとUS Openのグランドスラムの記録だと思います。速い芝とハードでは、浮いた球をネットで決めないと勝てません。ダヴィデンコが準決勝で見せた見事なネットダッシュです。疑問なのは、ナダルはなぜ相手の球が浮いているのに、もっとネットダッシュしてヴォレーで決めてしまわないのか? あれほどネットプレーはうまいのに。リスクは負いたくないためについ自分の居心地のよい場所(ベースライン)から打ってしまうのでしょうが、これでは速いサーフェスで勝つのはむずかしい。ジョコヴィッチは決勝では31ネットダッシュしています。ナダルはそれでも15回していますが、もっとできるチャンスはありました。後はサーヴのプレースメント。この二つが向上すればナダルのブランドスラム達成も夢でないと思っています。
(後記)
ナダルのトニーコーチは、「ナダルはこの試合はもっとちゃんとやれるはずだったのでちょっと自信を失っている。サーヴが弱すぎた。」という厳しいコメントを残しています。勝ったことは褒めてあげるが、試合の内容がもう一つといいたげなコーチ。
ナダルはクレーでは1セットも負けてはならない宿命にあるようで、いやはや彼のプレッシャーは想像を絶するものがありますね。
(追記:2007年のハンブルグでフェデラーに負けた試合について)
このハンブルグのマスターズは観戦しましたが、フェデラーも調子はよかったのですが、ナダルが疲れすぎていました。彼は以下のクレーのトーナメントをすべて優勝して休む暇がなく、メンタル的にも限界がきていたと思います。とてもナダルらしくないミスの多い試合で、ナダル自身疲れすぎたと認めていましたから。フェデラーの優勝にケチをつける気はありませんが、通常の状態であれば、フェデラーが勝てたかどうかわからないトーナメントでした。
2007年ナダル優勝の経歴
4月15日モンテカルロ・マスターズ
4月23日バルセロナ
5月7日ローマ・マスターズ
5月14日ハンブルグ・マスターズ
投稿者 Tennisnakama 01:01 | コメント(14)| トラックバック(0)
試合をみれば一目瞭然ですが、マレー、ジョコビッチ、ナダルは高次元で拮抗していて試合をみるのがほんとうに楽しみです。今のフェデラーにあのレベルはとても期待できないでしょうから、当面は彼ら3人がしのぎをけずるのでしょうね。それにしてもナダルは本当に凄かった。
あと私事ですが、テニスをまじめにはじめることにしました!(もちろんレジャーですが)。これでプロ選手の凄さをより感じられるんでしょうね(笑)
2007年のハンブルグ大会については、(追記)として書き足しておきました。
さて、プロのショット選択やタクティックスを理解するには、まずご自身が試合に出られることをお進めします。
そうすると自分のブレースタイルが分かってきます。その認識の上に立ってゲームをどうのように組み立てていけばよいか。ショットの選択、してはいけないショットなどなど、いろんなことが見えてきます。トーナメントにでれば、メンタルとはどういうものなのかもよく分かってきます。
そうなるとテニスに完全にはまります。試合を観ていても自分を投影することができるからです。これから楽しいテニス人生が始まりますね!
おっしゃるとおりクレーでのプレッシャーなのだと私も思います。
クレーの王者と言われ続け、絶対に負けてはならない!と自分に課しているように見えました。
完璧・絶好調とはいいがたいラファのプレーに、ジョコは付け入る隙がたくさんあったとおもいます。
3セットも集中力をとぎらさなければ、もっとジョコの欲する展開になったと。
ラファは優勝して、嬉しさ爆発、というより、クレーの王者としての責任をまっとうできたとほっとしていたようでした。勝ち続けていくとさらに大きなものが自分に襲い掛かってくるのですね。
ロジャーが「自分自身でモンスターを作ってしまった」と言っているように。
日本の番組で解説者が、「ナダルはフェデラーを見てプレーをレベルアップさせてきた。
フェデラーあってのナダルだった。いつでもフェデラーの挑戦者としての自分が、奮い立たせる
原動力になっていた。」というようなことを言っていました。
これからの一人旅、ラファにとっては苦しい道になるのでしょうか。トップの誰もが通らなければならない道なんでしょうね。まさに求道者=修行者ですね(泣)
ナダルはライスコ見てても苦しくなるほど。
精神的にも肉体的にも疲れがたまっていることがありありなのに、続けてバルセロナにも出るだなんて、やめてーっ!と叫びたくなりました。
ファンとしては、もう少し出場試合数を減らして、けがをしないよう、一年でも長くプレイして欲しいと思います。
tennisnakamaさんの分析は大好きでいつもお邪魔させてもらっています。
またのぞきに来ますね。
ナダルはライスコ見てても苦しくなるほど。
精神的にも肉体的にも疲れがたまっていることがありありなのに、続けてバルセロナにも出るだなんて、やめてーっ!と叫びたくなりました。
ファンとしては、もう少し出場試合数を減らして、けがをしないよう、一年でも長くプレイして欲しいと思います。
tennisnakamaさんの分析は大好きでいつもお邪魔させてもらっています。
またのぞきに来ますね。
ナダルはライスコ見てても苦しくなるほど。
精神的にも肉体的にも疲れがたまっていることがありありなのに、続けてバルセロナにも出るだなんて、やめてーっ!と叫びたくなりました。
ファンとしては、もう少し出場試合数を減らして、けがをしないよう、一年でも長くプレイして欲しいと思います。
tennisnakamaさんの分析は大好きでいつもお邪魔させてもらっています。
またのぞきに来ますね。
あのトップスピンを見たいです。もしきたら上司の種丸と、ナダルが好きなドラゴンボールのコスプレして激しく応援します!!
マレー戦、ジョコ戦、どちらも素晴らしい試合でしたね。ラファがクレーでは当たり前のように勝つのかと思っていましたが、この2人は今後のまた違った展開を予想させてくれるプレーをしていました。マレーの存在はジョコをも大きくしたと思います。しかし、やっぱりラファが勝つ!!強いですね。
この試合を観ては、残念ながら 今現在のフェデラーはこの3人には勝てないと思います。実力ではNo.4と認めざるおえません(ファンですが、あえて)。でも、その事実を受け止めてまた頑張ってもらいたい。ナダルもそれを望んでいるでしょうから・・・。実力伯仲のBIG4であって欲しいです。
ラファ 5連覇 おめでとー!! その努力が素晴らしい!
ナダルも相当厳しい道を行かなくてはいけないのでしょうね。。
そしてフェデラー。
サンプラスやアガシのように、フェデラーも一度陥落するのでしょうか・・。
厳しい世界の中で、ある一定の浮き沈みがあるものなのでしょうか。
それでもまた彼らのように、再び這い上がってほしいです。
世界一のフェデラーの理解者、ミルかさんと共に!!
ナダル、勝つと思ってはいたけど…あーやれやれハラハラしました。
コートに寝ころんで、嬉しそうでしたねー。
プレッシャーもあったし、ほっとしたんでしょうね。
私は去年までのクレーでのプレイは見ていないのですが、
今年、他を圧倒、というほどの強さはなかったものの、しっかり締めるとこは締めて
No.1の力を見せたという感じがしますね。
それを追い上げるジョコとマリーも鬼気迫って、これからが本当に楽しみです。
フェデラーは、夏までには4位になってるのかも知れないですね…。
(グランドスラムは集中力違うとは思いますが)
決勝2nd setのジョコや、セミで2nd setをtie breakに持ち込んだときのマリーのような
必死に食らいつく気持ちが今、フェデラーには感じられないです。
去年のウィンブルドンのような執念、今年は見られるかなあ…。
でも、この間、フアン・カルロス・フェレーロが5年半ぶりにタイトル獲得したという記事を見て、
その5年半にフェデラーがどれほどタイトルをとって来たのかと思ったら、
今も2位の位置にいるのがどれほどすごいことなのか、と思いました。
テニスには引き分けがなくて、勝者がいれば必ず敗者もいるのだから、
テニスプレーヤーのほとんどは負け続けながら、挑戦することをやめない人たちなんですね。
フェデラーは多く勝ってきた分、余計に勝てない今が辛いかもしれないけど
ランキング落ちても、なかなか記録更新できなくても、
挑戦し続けて、感動させてくれるプレイを見せてほしいです。
「またのぞきますね」とおっしゃらず、毎日でも大歓迎ですので、お待ちしています。
コメント提供者の皆様、
なかなかすばらしいコメントをありがとうございます。こうやっていろんな方の考え方、分析が加わることによってブログの面白さが増していきます。簡単な感想だけでも結構です。参加することに意義あり。オリンピック精神でいきましょう!
とても読み応えのある記事ばかりで毎日楽しみにしています。特にtennisnakamaさんのNadal論が好きです。秀逸だと思います。
ちょっとひねくれているかもしれませんが、2008年の全豪オープン準決勝でTsongaに負けた試合以降、Nadalのファンになりました。もちろん勝ったTsongaの超アグレッシブテニスに驚かされました(ラケットをKBladeに代えたほどです)が、それ以上に印象的だったのは勝つ術を探すために最後まで全力を尽くしたNadalのメンタルタフネスです。流れからして素人目でも勝ち目はないと思われた試合にもかかわらず、最後まで折れなかった心。tennisnakamaさんの記事を読むようになって、あのときRafael Nadalという人物に感じた尊敬の念がますます強くなってきました。自分もかくありたいと。
これからも楽しみにしております。
追記:
細かいことを述べて恐縮ですが、記事の中にある2.1mと1.4mという数字は、ベースラインからの距離ではなく、ボールがネットを通過するときのマージンではないでしょうか。私が見たテレビでは、解説者が"Interestingly, Nadal's average net clearance is 2 meters and 10, while Djokovic's is 1 meter and 40."と言っているように聞こえます。ただ、英語は不得意なのであまり自信はありません。あるいはtennisnakamaさんがご覧になったテレビの解説者はベースラインからの距離に言及していたのかもしれません。実際、Djokovicのドロップショット作戦はあの場面では通用していましたから。
今、ナダルとコリアのローマ決勝(2005年)を観戦しています。ナダルは4年前から今と同じくらい強かった。驚きです。しかしもっと驚いたのは175cmのコリアのすばらしさです。ダヴィデンコと同じでオンザライズでナダルを苦しめ5セットのタイブレークです。
小柄な選手のテニスの手本をみせてくれました。
さて、質問です。2.1mと1.4mの数字についてですが、
>ボールがネットを通過するときのマージンではないでしょうか<の意味がよくわからないのですが、ネットを通過するときのボールの高さのことですか? それだとしたら彼らはループボールを打っていることになりますね。私は観ながら書いているのでときどき聞き落としたり見落としたりしていますが、あのときはボールのヒッティングポジションのことをさかんに図表にして説明してましたし、ナダルが下がりすぎていることに対してディフェンスすぎるというようなことも言っていましたので、そのように解釈しましたが。
> ナダルは4年前から今と同じくらい強かった。驚きです。
全く同感です。フォアハンドは現在より荒々しいくらいですね。違いと言えば、バック側に振られたときに高い打点からフラット気味にサービスボックスの角辺りに打ち込む神業的ランニングバックハンドがない点でしょうか。
> しかしもっと驚いたのは175cmのコリアのすばらしさです。
>ダヴィデンコと同じでオンザライズでナダルを苦しめ5セットのタイブレークです。
これまた同感です。オンザライズで打つことでNadalに時間を与えないわけですね。また、チャンスのときは迷わずステップインして強打しているのも印象的でした。
> ネットを通過するときのボールの高さのことですか?
はい、ネットから2.1mあるいは1.4m上を通過するという意味かと思いました。しかし、これだとtennisnakamaさんのおっしゃるとおりちょっと高過ぎですね。ネットでの地面からの高さだとつじつまが合うかもしれません…。おそらく異なる放送をそれぞれ観ていたということでしょう。私が観たテレビではこの場面でヒッティングポジションの図表は出てきませんでした。