2009年08月23日
ジョコヴィッチがナダルに快勝、決勝へ
シンシナティ準決勝 2009年8月22日
Djokovic def Nadal: 6-1, 6-4
ジョコヴィッチが今年最高のレベルのテニスをみせ、ナダルに快勝しました。やっと本来のジョコヴィッチが戻ってきた感じで、バシバシと左右にウィナーを決めてましたね。
ジョコヴィッチはほとんどベースラインから下がることなく、オンザライズでヒットしていますが、ナダルは5mくらいも下がっているときがあります。これだけ下がってしまうと、オープンスペースが広いので相手に与えるプレッシャーがなく、ジョコはアグレッシヴな作戦を展開することができ、気持ちよくウィナーを打っていました。
ビデオのポイント解説:第2セット:4-3(ジョコのサーヴ)
第2セットの8ゲーム目4-3、30-40でジョコのブレークポイントです。ナダルのポジションに注意してください。せっかく攻撃を与えても、後ろにすぐ下がってしまっています。 逆にジョコは一歩コートの中に入ってウィナー狙いです。これでジョコはブレークをセーヴして40-40にもどしました。
同じく8ゲーム目、ジョコのアドヴァンテージです。ここでナダルは思いきって攻撃にでるため、徐々に上がって、ベースラインからジョコのバックにオフェンシヴショットを打ってネットダッシュします。しかし問題は、ネットプレーにコミットしていないため、ポジションがサーヴィスラインでストップです。これではパッシングショットの嵐に合ってしまいます。つまりナダルは、気持ちの上でアグレッシヴにアタックするに至っていないのです。
まずジョコヴィッチのサーヴが大変よく決まっていました。第1打がエース。これは最高の出だしでした。
「今日はとてもよくプレーできて嬉しい。特に第1セットの1stサーヴのポイント率が78%で、この試合は今シーズンの中でもベストの一つだった。」
「最初のポイントから試合をコントロールし、アグレッシヴでチャンスを狙って叩く。これが僕の作戦で実行することができた。サーヴは特によく入ったし、ここぞというときにサーヴィスウィナーをとることができた。今日のようなレベルの高いテニスを決勝でもやらなければならない。」
ジョコヴィッチはセンターから角度をつけることができる数少ない選手の一人ですが、特にフォアのインサイドアウトが深くきまりナダルからポイントを奪いました。ジョコのショットの当たりがよく深いので、ナダルはベースラインからかなり下がらなくてはならなかったことが敗因の一つですが、反対にナダルがショートボールを打つために、ジョコはコートに中に入ってウィナーを打つことができました。
ナダルファンには申しわけないのですが、あれだけ下がってしまったディフェンステニスでは、走りまわらなくてはならず膝がもちません。自分が走らないためには、最初のショットからコントロールして早めにポイントを稼ぐ必要があります。
ウィナーもしくはウィナーに近いショットでポイントをとるには、相手に時間を与えないことが絶対条件です。ジョコヴィッチはウィナーが21、ナダルは10でした。ジョコにウィナーが多いのは、
(1)ベースラインから下がらない
(2)オンザライズでディープに打つ
(3)フラット気味に速い球を打つ
ではナダルのテニスはどうだったかというと、相手に時間を与えてしまうテニスでした。
(1)ベースラインから下がりすぎ
(2)下がってしまっているのでオンザライズでは打てず(しかもショートボール)
(3)スピンがかかりすぎてスピードが遅い
さらにナダルにとって悪いことは、ジョコのサーヴがすばらしく、ナダルにリターンゲームをさせなかったことです。ジョコはリターンでは25ポイント取っていますが、ナダルは17ポイントです。ナダルのサーヴは進歩したもののnot enough。現代テニスはサーヴが武器でなければ勝てないのです。
あと数時間ではじまるシンシナティ決勝ですが、ジョコヴィッチの作戦は?
「ラファが相手のときは、時間があってもっといろんなことをさせてもらえるが、ロジャーの場合はポイントが短いので、今までのようなプレーをされるとむずかしい。彼は僕のサーヴィスゲームにプレッシャーを与えてくるだろうし、またネットにもくるだろうし。彼がマレー戦のときのようなプレーすれば、僕たちの試合はおもしろくなるだろうね。」
二人の過去の対戦成績はフェデラーの7勝4敗。今年はローマとマイアミの両試合にフェデラーが負けています。しかし今のフェデラーはあのときとは同一選手ではありません。
自信満々なジョコヴィッチは果たしてメンタルをクールに保つことができるかどうか。ジョコが焦ってポイントを急ぎすぎるとジョコが負け。フェデラーの撹乱作戦にパニックにならないで、落ち着いて対応すれば、面白い試合になりそうです。
Djokovic def Nadal: 6-1, 6-4
ジョコヴィッチが今年最高のレベルのテニスをみせ、ナダルに快勝しました。やっと本来のジョコヴィッチが戻ってきた感じで、バシバシと左右にウィナーを決めてましたね。
ジョコヴィッチはほとんどベースラインから下がることなく、オンザライズでヒットしていますが、ナダルは5mくらいも下がっているときがあります。これだけ下がってしまうと、オープンスペースが広いので相手に与えるプレッシャーがなく、ジョコはアグレッシヴな作戦を展開することができ、気持ちよくウィナーを打っていました。
ビデオのポイント解説:第2セット:4-3(ジョコのサーヴ)
第2セットの8ゲーム目4-3、30-40でジョコのブレークポイントです。ナダルのポジションに注意してください。せっかく攻撃を与えても、後ろにすぐ下がってしまっています。 逆にジョコは一歩コートの中に入ってウィナー狙いです。これでジョコはブレークをセーヴして40-40にもどしました。
同じく8ゲーム目、ジョコのアドヴァンテージです。ここでナダルは思いきって攻撃にでるため、徐々に上がって、ベースラインからジョコのバックにオフェンシヴショットを打ってネットダッシュします。しかし問題は、ネットプレーにコミットしていないため、ポジションがサーヴィスラインでストップです。これではパッシングショットの嵐に合ってしまいます。つまりナダルは、気持ちの上でアグレッシヴにアタックするに至っていないのです。
まずジョコヴィッチのサーヴが大変よく決まっていました。第1打がエース。これは最高の出だしでした。
「今日はとてもよくプレーできて嬉しい。特に第1セットの1stサーヴのポイント率が78%で、この試合は今シーズンの中でもベストの一つだった。」
「最初のポイントから試合をコントロールし、アグレッシヴでチャンスを狙って叩く。これが僕の作戦で実行することができた。サーヴは特によく入ったし、ここぞというときにサーヴィスウィナーをとることができた。今日のようなレベルの高いテニスを決勝でもやらなければならない。」
ジョコヴィッチはセンターから角度をつけることができる数少ない選手の一人ですが、特にフォアのインサイドアウトが深くきまりナダルからポイントを奪いました。ジョコのショットの当たりがよく深いので、ナダルはベースラインからかなり下がらなくてはならなかったことが敗因の一つですが、反対にナダルがショートボールを打つために、ジョコはコートに中に入ってウィナーを打つことができました。
ナダルファンには申しわけないのですが、あれだけ下がってしまったディフェンステニスでは、走りまわらなくてはならず膝がもちません。自分が走らないためには、最初のショットからコントロールして早めにポイントを稼ぐ必要があります。
ウィナーもしくはウィナーに近いショットでポイントをとるには、相手に時間を与えないことが絶対条件です。ジョコヴィッチはウィナーが21、ナダルは10でした。ジョコにウィナーが多いのは、
(1)ベースラインから下がらない
(2)オンザライズでディープに打つ
(3)フラット気味に速い球を打つ
ではナダルのテニスはどうだったかというと、相手に時間を与えてしまうテニスでした。
(1)ベースラインから下がりすぎ
(2)下がってしまっているのでオンザライズでは打てず(しかもショートボール)
(3)スピンがかかりすぎてスピードが遅い
さらにナダルにとって悪いことは、ジョコのサーヴがすばらしく、ナダルにリターンゲームをさせなかったことです。ジョコはリターンでは25ポイント取っていますが、ナダルは17ポイントです。ナダルのサーヴは進歩したもののnot enough。現代テニスはサーヴが武器でなければ勝てないのです。
あと数時間ではじまるシンシナティ決勝ですが、ジョコヴィッチの作戦は?
「ラファが相手のときは、時間があってもっといろんなことをさせてもらえるが、ロジャーの場合はポイントが短いので、今までのようなプレーをされるとむずかしい。彼は僕のサーヴィスゲームにプレッシャーを与えてくるだろうし、またネットにもくるだろうし。彼がマレー戦のときのようなプレーすれば、僕たちの試合はおもしろくなるだろうね。」
二人の過去の対戦成績はフェデラーの7勝4敗。今年はローマとマイアミの両試合にフェデラーが負けています。しかし今のフェデラーはあのときとは同一選手ではありません。
自信満々なジョコヴィッチは果たしてメンタルをクールに保つことができるかどうか。ジョコが焦ってポイントを急ぎすぎるとジョコが負け。フェデラーの撹乱作戦にパニックにならないで、落ち着いて対応すれば、面白い試合になりそうです。
2009年08月23日
フェデラーがマレーを破り決勝へ
Federer def Murray:6-2, 7-6(8)
フェデラーは終始落ち着いてNo.1の余裕をみせ、今年のなかでは最高のテニスをみせてくれました。
ギルバートが試合の直前のロッカールームの印象を述べていましたが、フェデラーは冗談をとばしてリラックスしていたのと対照的に、マレーは緊張した面持ちで、ボクサーのようなウォーミングアップを真剣にやっていたとか。
このコメントを聞いて、試合が始まる前から「マレーはすでに負けてしまっている」ような予感がしたのです。今やマレーにはイギリス人だけでなく、世界が注目しています。今年のハードコートのトップ4との対戦成績をみてみましょう。何と4勝1敗と圧倒的な強さです。解説者が口をそろえて「ハードはマレー」と賞賛していたことからも、プレッシャーがいかに大きかったか、想像がつきます。
対フェデラー:2勝0敗
対ナダル: 1勝1敗
対ジョコヴィッチ:1勝0敗
試合直前のギルバートの「作戦は何?」という質問に、「同じ球は2度続けて打たない。」「ショットをミックスする。」この2点を強調していました。まさにこの作戦を実行にうつし、マレーにリズムを与えませんでした。そしてフェデラーの特攻隊のようなアグレッシヴな攻撃に、マレーはどのように対応してよいのか分からず、といった中途半端なテニスで気がついたら6-2で負けていた、という一方的なゲーム展開でしたね。
フェデラーは特にフォアハンドがフラット気味で、スピードを増しパワフルで、しかもオンザライズで打ってくるので、マレーとしてはお手上げの状態。クロスとダウンザラインにウィナーをガンガン決めるところなどは、かつてのゴールデン時代のフェデラーを彷彿とさせ、コメンテイターのギルバートとケイヒルは興奮気味で解説していました。
感心したのは、フェデラーの1stサーヴです。第1セットは36%と低いにもかかわらず、ポイント取得率は100%なのです。 つまり22回サーヴするうち、36%の8回しか1stサーヴが入らなかったにもかかわらず、すべて得点につながっています。これは彼のサーヴのクウォリティが大変高いことを示しています。
またフェデラーのリターンもすばらしかったです。マレーはクロスは大変うまいのですが、苦手なのはセンターよりのショット。フェデラーはマレーに角度をつけさせることなく、バックのスライスを効果的に使いながら、最後はフォアかバックのダウンザラインで決めるというパターンがとても有効でした。
フェデラーのフットワークはスピードがあり、絶えず前進する攻撃的なフットワークです。特に今日はリズミックでほれぼれとするフットワークをみせてくれました。
マレーの問題は、ショートボールが多かったこと。フェデラーは必ずこのショートボールを叩いてウィナーにしていましたので、たとえ第2セットのタイブレークを失っていたとしても、フェデラーは問題なく第3セットをものにしていたと思います。
第2セット
4ゲーム目(2-1)では3本も立て続けにエースをとるほど、サーヴの調子がよくなり、リズムをとりもどしたかに見えたマレーでしたが、フェデラーからモメンタムを奪うことはできませんでした。
エースやサーヴィスウィナーをとっても、あとのショットにエラーがでる。イライラしたマレーは、エラーをおかすたびに、ラケットのストリングに拳を叩き付けたため、右手のこぶしが血だらけ。昔ユズニーが怒ってラケットでおでこをたたいて、血が吹き出るという過激な行為もありましたが、それにしても利き手を傷つけるなんて・・・よほど口惜しかったのでしょうね。
ともかくタイブレークまでもちこんだマレーでしたが、8-9のマッチポイントでダブルフォルトをして負けてしまいました。
明日いよいよフェデラーはジョコヴィッチと決勝です。今日ナダルを徹底的にたたきのめしたジョコヴィッチが、果たして同じく高度なレベルで試合ができるかどうか。キーはジョコヴィッチが精度の高いショットが決められるかどうかにかかっていると思います。
フェデラーは終始落ち着いてNo.1の余裕をみせ、今年のなかでは最高のテニスをみせてくれました。
ギルバートが試合の直前のロッカールームの印象を述べていましたが、フェデラーは冗談をとばしてリラックスしていたのと対照的に、マレーは緊張した面持ちで、ボクサーのようなウォーミングアップを真剣にやっていたとか。
このコメントを聞いて、試合が始まる前から「マレーはすでに負けてしまっている」ような予感がしたのです。今やマレーにはイギリス人だけでなく、世界が注目しています。今年のハードコートのトップ4との対戦成績をみてみましょう。何と4勝1敗と圧倒的な強さです。解説者が口をそろえて「ハードはマレー」と賞賛していたことからも、プレッシャーがいかに大きかったか、想像がつきます。
対フェデラー:2勝0敗
対ナダル: 1勝1敗
対ジョコヴィッチ:1勝0敗
試合直前のギルバートの「作戦は何?」という質問に、「同じ球は2度続けて打たない。」「ショットをミックスする。」この2点を強調していました。まさにこの作戦を実行にうつし、マレーにリズムを与えませんでした。そしてフェデラーの特攻隊のようなアグレッシヴな攻撃に、マレーはどのように対応してよいのか分からず、といった中途半端なテニスで気がついたら6-2で負けていた、という一方的なゲーム展開でしたね。
フェデラーは特にフォアハンドがフラット気味で、スピードを増しパワフルで、しかもオンザライズで打ってくるので、マレーとしてはお手上げの状態。クロスとダウンザラインにウィナーをガンガン決めるところなどは、かつてのゴールデン時代のフェデラーを彷彿とさせ、コメンテイターのギルバートとケイヒルは興奮気味で解説していました。
感心したのは、フェデラーの1stサーヴです。第1セットは36%と低いにもかかわらず、ポイント取得率は100%なのです。 つまり22回サーヴするうち、36%の8回しか1stサーヴが入らなかったにもかかわらず、すべて得点につながっています。これは彼のサーヴのクウォリティが大変高いことを示しています。
またフェデラーのリターンもすばらしかったです。マレーはクロスは大変うまいのですが、苦手なのはセンターよりのショット。フェデラーはマレーに角度をつけさせることなく、バックのスライスを効果的に使いながら、最後はフォアかバックのダウンザラインで決めるというパターンがとても有効でした。
フェデラーのフットワークはスピードがあり、絶えず前進する攻撃的なフットワークです。特に今日はリズミックでほれぼれとするフットワークをみせてくれました。
マレーの問題は、ショートボールが多かったこと。フェデラーは必ずこのショートボールを叩いてウィナーにしていましたので、たとえ第2セットのタイブレークを失っていたとしても、フェデラーは問題なく第3セットをものにしていたと思います。
第2セット
4ゲーム目(2-1)では3本も立て続けにエースをとるほど、サーヴの調子がよくなり、リズムをとりもどしたかに見えたマレーでしたが、フェデラーからモメンタムを奪うことはできませんでした。
エースやサーヴィスウィナーをとっても、あとのショットにエラーがでる。イライラしたマレーは、エラーをおかすたびに、ラケットのストリングに拳を叩き付けたため、右手のこぶしが血だらけ。昔ユズニーが怒ってラケットでおでこをたたいて、血が吹き出るという過激な行為もありましたが、それにしても利き手を傷つけるなんて・・・よほど口惜しかったのでしょうね。
ともかくタイブレークまでもちこんだマレーでしたが、8-9のマッチポイントでダブルフォルトをして負けてしまいました。
明日いよいよフェデラーはジョコヴィッチと決勝です。今日ナダルを徹底的にたたきのめしたジョコヴィッチが、果たして同じく高度なレベルで試合ができるかどうか。キーはジョコヴィッチが精度の高いショットが決められるかどうかにかかっていると思います。