2008年05月19日
ナダルのインジャーリー・タイムアウトについて
http://www.atptennis.com/のホームページ
不思議なハンブルグのマスターズでした。トロフィーを受ける優勝者が浮かない顔をしています。メディアの写真撮影に対しても、ぎこちない笑顔です。もちろん負けたフェデラーの顔が暗いのは分かりますが、ナダルがなぜそれほど嬉しそうに見えないのか。このハンブルグはナダルがまだ制覇していないクレーの重要な大会。是が非でも勝ち取りたかったタイトルのはずです。しかしトロフィー授与式でも、仲良しのフェデラーと会話を交わす様子もなく、居心地わるそうな印象を受けたナダルの態度について、ここでいつもの大胆なTennisnakamaの独断分析を行いたいと思います。どのメディアも書かなかったナダルのインジャリー・タイムアウトについてです。
この決勝戦の勝敗を決定したのは、第1セットのナダルのインジャリー・タイムアウトです。
第1セットのスコアはフェデラーのリードで5-2。フェデラーのアグレッシヴなゲーム展開で、誰の目にも彼の第1セットの勝利が明らかでした。そしてチェンジオーヴァー(コートをチェンジする時)です。ナダルはトレーナーを呼びました。ナダルは右の太ももの後ろを指して、何かトレーナーに訴えています。痛そうです。誰もが彼の右足のマメのひどい状態をTVで見ていますので、これはただ事ではないと思ったはずです。しかも、昨日のジョコヴィッチとの準決勝の壮絶な戦いを観戦した人は、「ナダルが肉離れ?」の最悪の事態を想像したと思います。ナダルのコーチは顔を引き攣らせながら、手を横に切るようにして、「Stop!」のサインをナダルに送っています。「リタイアせよ!」のサインです。ナダルはきっとトレーナーと相談したかったのでしょう。続行してよいものかどうか?
ナダルは試合を続行することに決めました。しかし試合をみていると、ナダルの足に特別に異常があったとは思えないフットワークです。うーん・・・これでインジャリー・タイムアウトかあ・・・私は別にナダルにいちゃもんをつける気はさらさらありませんが、このインジャーリー・タイムアウトが、どのような場合にとられるべきかについて、ルールの再検討が叫ばれているのは事実。
ナダルは以前にも負けそうになったときに、トレーナーを呼びマッサージを受けたことがあります。これはナダルに限ったことではなく、マッサージによって痛くなってきた体の疲れをほぐし、勝ってる相手のリズムを崩す目的でこのタイムアウトをとる選手が増えてきています。これはインジャリー・タイムアウトのabuseです。インジャーリーの予防はインジャリーではないのですから。
今日の試合は、確かにナダルのフットワークは、昨日のジョコヴィッチとの試合とは比べものにならないほど、スピードに欠けるものがありました。が、果たしてインジャーリー・タイムアウトをとるほどのものであったかどうか? それはナダル自身にしか分からないことです。
インジャリー・タイムアウトの後の結果はご承知の通りです。エンパイアステートビルから急降下するように、突然コントロールを失ったフェデラーは、連続29ポイントをナダルに譲ってしまいました。ケガをしている対戦相手を(しかも相手は仲のよいナダルです)サイドに振ったり、ドロップショットをしたりできなかったフェデラーに痛く同情します。弱っている相手に決定的打撃を与えて、最後のとどめを刺す事ができなかった。それをプロ精神の欠如という人もいるでしょうが、私は彼の困惑したテニスに人間性を感じます。「後味の悪い勝ち方はしたくない」それが彼の首をしめる自殺行為となってしまった・・・
完全にリズムを失ったフェデラーは、かろうじて第2セットを7-6のタイブレークで勝ちとりましたが、もうそれは, too lateだったのです。ナダルの足は、走れば走るほど油がよくまわるエンジンのように、あのスーパーフットワークが戻ってきたからです。ナダルは足の回復とともに、自信も回復しました。この絶対諦めないナダルの態度は立派です。が。。。多分私一人だけでしょうね。素直に喜べないのは。。。(アメリカのメディアはすべて、ナダルに大賛辞をおくっていますので)
「昨日のジョコヴィッチとの試合はきびしかったです。だから今日の試合は、始めの頃はひどかった。そのうち足が痛くなってきて、集中するのがむずかしくなってきました。(インジャーリー・タイムアウトの後は)だんだん痛みが薄れてきて, 少しよくなってきましたが。」
ナダルのフェア精神とスポーツマンシップはよく知られています。それだけに、(あの程度の痛みで?)インジャリー・タイムアウトをとったことによって、フェデラーにあれほどのインパクトを与えてしまったことに、逆に驚きを隠せないのが正直なナダルの心境のような気がするのですが。スカッと喜べない正直な顔をナダルに見た気がします。これは私一人の思い過ぎでしょうか? (以前、フェデラーがトレーナーを呼んで、足首のテーピングをやりなおしてもらったことがあります。対戦相手は忘れましたが、あの時は確かフェデラーがリードしている時でした。)
私は原則として、インジャリー・タイムに反対です。もしケガだと判断すれば、退場するべきです。他のスポーツでは、作戦のためにタイムアウトがあっても、試合を中断するこのようなインジャーリー・タイムアウトはありません。インジャリーはケガなのですから、十分に走れる状態はインジャリーとは呼ばない。もし退場すると決めたら、観客に事情を説明して退場するべきです。
今日は、ポイントをとったときに出るナダルの「Vamos!」がありませんでした。 握りこぶしを上げるいつものガッツポーズもなく、淡々とした何とも不思議なマスターズ決勝でした。
皆さんはインジャーリー・タイムアウトのルールについてどう思われますか?
投稿者 Tennisnakama 08:02 | コメント(23)| トラックバック(0)
今回のナダルのインジャリーについての真相はわかりませんが、
流れを変えるために利用するのは卑怯だと思います。
前日にジョコのシツコイ前後の振り回しでダメージが溜まったと見えたからなのか、
後半に使う気でとっておいたのかは判りませんが、「ドロップショット」を1stセットは
あまり使ってなかったですよね?(フェデラーが)
昨日の試合で初めて打ったネット際でのドロップは明らかに躊躇したような中途半端なモノでした。
中盤、ナダルの方から「ドロップOK、ほらボクは使うよ、大丈夫だよロジャー」みたいな先制ドロップを
打ったナダルに「インジャリーのことは気にしないで」と伝えたかったのかな?・・・と。
(美化して見すぎですかね?・・・てへ。)
フェデラーのNo.1たるテニスをしようと(弱ったトコ狙いじゃなく、力・技勝負)して自滅していくのを見て
「あぁ、余計な気を使わせちゃったかなぁ・・ごめんよロジャー・・・」的な気分になっての表彰式ではと。
(またまた美化し過ぎ?) 昨日の負けを全仏に引きずらなければイイけど・・。
自分は今日思いっきり引きずった状態でした ・・・てへ・・・・ あぁ シュン。。。
ヤンコビッチが、よく使いますよね。(笑)あと、シャラポアとか。
何がなんでも勝とうとする選手の、ひとつの作戦、と、私は受け止めてました。
昨日の試合は、とても面白かった。レベルが数段違う試合でした。
授賞式はGAORAでは放送されなかったんです。
なるほどね。会話がなかったんだ。
Tennisnakamaさんの分析は、あたってそうですね。
先にも書きましたが、インジャリータイムアウトを流れを変える作戦に使うのを、卑怯でなく、普通と思ったほうが、選手側の精神衛生的によいと思います。
性格いいと、頑張って使っても、「それを使った自分」に動揺しちゃいそうですけどね。
フェデラーは、ホークアイシステムも、中断があって集中力が切れると反対だったしね。
きっと、使わないでしょうね。
それに、フェデラーが負けてる時に、使うところを、、、想像したら、、、
たしかに、フェデラーじゃない!!
たしかに、卑怯な作戦だな。。。。。
昨日の試合ですが、そう言われてみれば表彰式のナダルの表情にいつものような明るさはなかったし、フェデラーとも何かぎこちない感じでした。私も少し気になっていたのですが、この記事を読んでなるほどと思いました。ナダルは試合後のコメントでも "It was a strange match" と言っていますし、第1セットはフェデラーのミスに助けられたとも言っています。はっきり言わないまでも、言外にメディカルタイムアウトの罪悪感が滲み出ているように感じられます。ナダルファンの私としては、あのときタイムアウトを取ったナダルの気持ちは分からなくはないです。ローマでの一件もあるので、ナダルとしては全仏に響くような致命的な怪我だけはしたくなかったのだと思います。続けていいものか専門家の意見を聞いておきたかったんじゃないかと。ただ、メディカルタイムアウトのあり方には私も少し疑問を感じます。
私もフェデラーの人間性はすばらしいと思います。この記事を読んで、そうか、そういう理由もあって
調子を崩してしまったのか、と納得しました。種丸さんがおっしゃっているように、フェデラーが王者たる故に敗れてしまった試合だったかもしれません。ただ、私はそういうものを一切かなぐり捨てて必死で勝ちに行くフェデラーが全仏では見てみたいんですけどね。良いか悪いかは別にして、ジョコビッチなら弱点を容赦なく攻撃するんじゃないかなと思います。
それでは、これからもブログ楽しみにしております。
フェデラーはそこまでして勝ちたくないのでしょうね。
本当に強いから。
わたしも相手が変だと(びっこ引き始めたり、足つりそうだったり)
急に風船の空気が抜けるみたいに、気合が入らなくなるんです。
それまで調子よかったにもかかわらず。
だからフェデラーの気持ちがよくわかります。
(おまえといっしょにするなって?ww)
ナダルは本当に足が痛くてインジャリー取ったと信じてます。
フェデラーはナダルに大事にいたってほしくないって言う気持ちが
あったんじゃないかと思います。
ただ フェデラーは全仏は生涯グルンドスラムを今度こそ採るべく全力をかけていると思われますので そちらで勝負したかったのでしょうか?
フェデラーは絶対王者たる態度、人格、テニスプレーでただただ尊敬し 憧れるのみです。
フェデラーの偉大さをまた感じさせていただきました。
逆にフェデラーがボールを高く打ち上げたり、マナーが少し悪かったと思いました。
そこまでして続けるんだったら、最初からインジャリー
とらなきゃいいのにね。
インジャリータイムアウトの後に流れが変わったのは、事実だけど、それで、ナダルに気を使い、攻めていけず、勝利を棒に振るって・・・どうなんだろう・・
今のフェデラーは、喉から手がでるほど優勝がほしいはず、相手は、一番勝ちたい相手ナダルだし、いくら仲がよくても、情けをかけるなんて事は、あるのかな・・。
逆に情けをかけたのなら、プロとしてのフェデラーに少しがっかりします。
インジャリータイムアウトは、流れを変えるためだけに使われるのは、どうかと思いますが、試合中、治療をうけることは、別にいいんじゃないかなぁ・・・個人で戦う、過酷なスポーツだし(試合時間が長い)・・・
テニスがプロ競技の中で一番過酷だとわたしは思っています。
とくに楽そうにみえるのが野球とゴルフですかね~。(その方面の人ごめんなさい)
バスケ、ラグビー、サッカーはきつそうですね。
フェデラーのファンなので、残念で残念でたまりません。しかし今回彼が手加減したということはあり得ないのではないでしょうか。全仏へむけて是が非でも守りたかったタイトルの筈です。勝負はフィジカル、メンタルも含めて決着がつくものと思います。
インジャリー・タイムアウトは認められてもよいと思いますが、試合の流れを変えるために、あるいはひと息入れるために意図的に乱用する選手はいます。それを防ぐのはなかなか難しいですね、本当のところは誰にも分からないので。。。 これはリタイアについても同じことが言えます。死語かもしれませんが≪紳士のスポーツ≫なのですから、相手を信用するしかなさそうです。 乱用を防ぐには、タイムを取った場合はペナルティとして何ポイントか相手に与えるのが良いかもしれません。
ナダルのスポーツマンシップは疑いませんが、彼のタイムの取り方は悪気はないのは分かるとしても、少々身勝手な場合がありました。天然なんでしょうか(笑)。 2006年モンテカルロ決勝で1st set 1st game でフェデラーがサーブのポジションについた直後にタイムを取った時は、かなり腹立たしく思いました。その時はブレークされたように記憶しています。
ちなみにフェデラー本人はインジャリー・タイムアウトを滅多に取りません。リズムが乱れるから嫌なのだとか。。テーピングの巻きなおしは2007年IWのカニャス戦と思います。2005年の上海のファイナルでセット間にとったのはかなり深刻でした。足首の怪我からの復帰直後でしたから。
マナーやスポーツマンシップは個人の主観によるものであって万人共通のものではないからです
だからナダルのインジュリータイムは卑怯だ!という人もいれば
勝利のためにルール内であればなんだってやる姿勢を評価する人もいます
例えばサッカーのダイブ、バスケの終盤のファウルゲームや時間稼ぎは客からすればしらけますが
彼らも勝つために必死なわけですから
テニスはワールドワイドなスポーツ
日本だけのスポーツであり日本の道徳に基づいた競技である相撲とは訳が違うのです
よくプロはファンあってのもの、ファンを喜ばせるプレーをすべきなどと聞きますが
そういうファンはクリーンでエキサイティングなプレーで勝利してほしいと願っているのでしょう
フェデラーはその条件を満たしていますが、
一般的に選手は万能ではなくその全てを満たすことは普通出来ません
極論すれば負けてもいいから楽しませろと思うのがファン心理ですが
何をやってでも勝ちたいと思うのが選手の心理です
この相反する心理を高い次元で折衷できるフェデラーは偉大だと思いますが、
そのあり方は理想であってルールではない、というのがプロスポーツの世界だと思います
○ルールで認められていることを本来以外の目的で使用すること
ですね
見苦しい連投失礼いたしました
ところで、アメリカのブログに載せた(世界中の人が英語でコメントしている可能性ありで、アメリカとは一概にいえませんが)、私のコメントが波紋を投げかけて議論が白熱しています。朝の5時まで応対して、また少し睡眠時間をとって投稿したブログをみてみると、「Tennisnakamaよ、返事せよ」というコメントが入ってます。これほど、みな感情的になるとは思ってもみませんでした。すこしまとめてこの話を次回にしてみます。おもしろいですよ。
わたしもだいたい同意見です。
モンテカルロのあとだったかフェデラーが「ret.はよくない、選手にも、観客にも」とか言ってませんでしたか?
ナダルがタイムを取ったとき、フェデラーは何を考えていたと思いますか。
決して「やったぜ」ではないと思います。
間違いなくそのあとはやりにくかったはずです(だから力を出し切らなくてよいという意味ではありません)。
ネットをはさんでしか戦わないテニスにもスポーツマンシップというのはあるでしょう?
サッカーのフェアプレイ賞というのを思いだしてみればいろいろ考えられると思います。
見ていて どうにもしっくり来ないハンブルグの表彰式だったので
こちらで皆さんのコメントを読み納得したような・・・
どうして 喜びが爆発しないの?ナダルらしくないぞ!って
そっか そんなこんないろいろあるんだなぁ 深い・・・deep innside
どっちにしてもナダルもフェデラーも好きです
テニスはおもしろいです!!!
これ、かなり願望が入っていませんか?表彰式で暗い顔をしているナダルはkakoさんもおっしゃっているように今回が初めてではありません。昨年のRGもとても暗い顔をしていました。グガが話しかけてやっと一瞬笑顔を見せた程度です。
それからナダルに気を遣って攻めなかったとお考えのようですが、それは王者フェデラーに対して失礼ではないかと?ナダルとフェデラーは確かにとてもよい関係ですが、仲のよいというのとは少し違うように思います。
仲のよい選手で思い出すのは、去年のUSオープンのフェレールです。彼はナダルの足がかなり悪く走れないのを知っていて、前後左右、まるでナダルの足を壊すかのように攻めまくりました。最近ではモンテカルロのフェレロです。彼も自分のテニスを貫き、勝ちました。彼らは人間として間違っているのでしょうか?????
静かに淡々とポイントを重ねていく姿は、モンテカルロ決勝も同じでしたよ。バモの雄たけびもガッツポーズもありません。皆さんは前日のジョコビッチ戦の印象を引きずっているのではないでしょうか?
ナダルは対戦相手によっては喜びを控えるようにしているそうです。
ハンブルグはクレイですが、ナダルではなくフェデラーさんの庭です。ずっと負けなしだったわけですから、その決勝に負けることがどんなに悔しいかナダルは十分すぎるほどわかっているので控えめにしていただけだと私は思います。
ここを読んだ人がナダルは卑怯者なんだ!と単純に思わないことを願います。