2008年09月11日
アンディ・マリー戦争
「アンディ・マリーは一夜にしてヒーローになった。しかしなったところはアメリカだけだった。」
マリーのUS Openの決勝戦について、イギリスの名門新聞『タイムズ』の記事が、「イギリスはアンディ・マリーを愛せるようになるだろうか?」の題で皮肉たっぷりに書いています。
http://timesonline.typepad.com/sports_commentary/2008/09/will-britain-le.html
なぜ英国人がスコティッシュのアンディによくやった!と褒めてやらないのか?
なぜイングリッシュがアンディを認めたがらないか?
(英語でEnglishは正確に言えば、イングランドに生まれた人をさし、ここではイギリス人と訳すると混乱しますので、イングリッシュと呼びます。いわゆる私たちが言っている英国生まれは、ブリティッシュBritishです。区別をはっきりさせるために、ここでは英国人としました。)
スコットランドとイングランドの関係は、例えれば仲の悪い兄弟のようなもので、英国に住んだ経験がないと、想像するのはむずかしいと思いますが、アンディ・マリーの決勝戦でこの二国の関係が表面化してきました。何しろFirst Warから700年の間に、何度も引き起こしてして来た戦争の傷がまだ癒えないで今日に至っているのですから根が深いのです。
アンディが英国でヒーローになれないのは、この対抗意識からくることも原因ですが、また価値観の違いも浮上してとても興味深いのです。コメントではマリー派、アンチ・マリー派に真っ二つに分かれて喧々囂々。その有様を「マリー戦争」とひやかして書いている私としては、同じ英国人なのだからマリーを応援してやればよいのにと思うのですが、誇り高きイングリッシュにとっては、マリーは受け入れがたいのです。ティム・ヘンマンのような清潔で礼儀正しい選手は誇りに思うが、マリーはパンクみたいでヒゲが汚らしい。マナーがなっていない。態度が大きい。ウィンブルドンのガスケ戦で見せた、勝利の腕こぶのみせびらかしが下品だった。と、いくらでも気に入らないことがあるようです。つまりチャンピオンとしてふさわしくないのです。
スコティッシュも負けておらず、あの堅苦しいヘンマンの紳士面は気に入らない。それに比べてマリーは正直で面白い。皆がヘンマンになってしまえば、テニスもつまらなくなって誰も見ないだろう、という訳です。
英国ローン協会出身のヘンマンは、ジェントルマンの象徴ですが、アンディはスポイルされたわがままな若造というイメージでこの二人は絶えず比較されてきました。しかし今回は特別に理由があるのです。 アンディが記者会見で、サッカー選手権について質問されたとき、「スコットランドは、他のチームに負けても、イングランドだけには負けてほしくない」と冗談のつもりで言った言葉が一人歩きして、アンディはイギリスのメディアから非難ゴウゴウの集中豪雨にあってしまいました。 実はその前にヘンマンとマリーの間で「サッカー・トラッシュ・トーク」(サーッカーチームのこき下ろし合い)が冗談で交わされていたという背景を知らないプレスは、アンディの軽い冗談を大々的に報道したものですから、イングリッシュはムッときたのは当然です。しかもアンディは昔から、英国のテニスに対して批判的で、そのためにスペインでテニスを修行したのですから、イングリッシュにとってはますます面白くないのです。
「僕はアンディは傲慢で好きでないよ。スコッティッシュだけれど、フェデラーを応援したよ」
「僕はイングリッシュだけれどヘンマンはつまらん。アンディーのファンなんだ」
という裏切り者もぞくぞくでてきて、ブログのマリー戦争は収拾がつかなくなってきました。
このマリー戦争が、単純なスコティッシュvsイングランドの民族対立だけにとどまらないのは、「チャンピオンとはどうあるべきか?」という個人の価値感に深く根ざした問題だからでしょう。
まだ21才のアンディは、今はまだ自分の個性を生かしつつチャンピオンにふさわしい選手になる成長の過渡期です。フェデラーがラケットをコートに投げて怒りを表現することをやめ、言葉の選び方も相手をけなすことなく意見を述べられるようになってくるまでかなりの時間を要しています。
私のブログでも『錦織選手の今後の課題』で、ITOの問題と共にこのチャンピオンとは何かの問題に触れていますが、価値観の違いからいろいろ反響を呼んでしまいました。
しかし「チャンピオンとは?」「ヒーローとは?」の答えはとてもシンプルだと思うのです。時代を超え、国境を超え、ジェネレーションを超えた答えがヒーローなのです。子供は複雑な問題のコアを本能的に見分ける能力があります。子供たちが「彼のようになりたい」と思える選手が、チャンピオンでありヒーローだと思うのです。
「 正々堂々と戦う正義の味方」
この基本さえ押さえておけば、いろんなヒーローが出現してもよいと思うのですが。
マリーのUS Openの決勝戦について、イギリスの名門新聞『タイムズ』の記事が、「イギリスはアンディ・マリーを愛せるようになるだろうか?」の題で皮肉たっぷりに書いています。
http://timesonline.typepad.com/sports_commentary/2008/09/will-britain-le.html
なぜ英国人がスコティッシュのアンディによくやった!と褒めてやらないのか?
なぜイングリッシュがアンディを認めたがらないか?
(英語でEnglishは正確に言えば、イングランドに生まれた人をさし、ここではイギリス人と訳すると混乱しますので、イングリッシュと呼びます。いわゆる私たちが言っている英国生まれは、ブリティッシュBritishです。区別をはっきりさせるために、ここでは英国人としました。)
スコットランドとイングランドの関係は、例えれば仲の悪い兄弟のようなもので、英国に住んだ経験がないと、想像するのはむずかしいと思いますが、アンディ・マリーの決勝戦でこの二国の関係が表面化してきました。何しろFirst Warから700年の間に、何度も引き起こしてして来た戦争の傷がまだ癒えないで今日に至っているのですから根が深いのです。
アンディが英国でヒーローになれないのは、この対抗意識からくることも原因ですが、また価値観の違いも浮上してとても興味深いのです。コメントではマリー派、アンチ・マリー派に真っ二つに分かれて喧々囂々。その有様を「マリー戦争」とひやかして書いている私としては、同じ英国人なのだからマリーを応援してやればよいのにと思うのですが、誇り高きイングリッシュにとっては、マリーは受け入れがたいのです。ティム・ヘンマンのような清潔で礼儀正しい選手は誇りに思うが、マリーはパンクみたいでヒゲが汚らしい。マナーがなっていない。態度が大きい。ウィンブルドンのガスケ戦で見せた、勝利の腕こぶのみせびらかしが下品だった。と、いくらでも気に入らないことがあるようです。つまりチャンピオンとしてふさわしくないのです。
スコティッシュも負けておらず、あの堅苦しいヘンマンの紳士面は気に入らない。それに比べてマリーは正直で面白い。皆がヘンマンになってしまえば、テニスもつまらなくなって誰も見ないだろう、という訳です。
英国ローン協会出身のヘンマンは、ジェントルマンの象徴ですが、アンディはスポイルされたわがままな若造というイメージでこの二人は絶えず比較されてきました。しかし今回は特別に理由があるのです。 アンディが記者会見で、サッカー選手権について質問されたとき、「スコットランドは、他のチームに負けても、イングランドだけには負けてほしくない」と冗談のつもりで言った言葉が一人歩きして、アンディはイギリスのメディアから非難ゴウゴウの集中豪雨にあってしまいました。 実はその前にヘンマンとマリーの間で「サッカー・トラッシュ・トーク」(サーッカーチームのこき下ろし合い)が冗談で交わされていたという背景を知らないプレスは、アンディの軽い冗談を大々的に報道したものですから、イングリッシュはムッときたのは当然です。しかもアンディは昔から、英国のテニスに対して批判的で、そのためにスペインでテニスを修行したのですから、イングリッシュにとってはますます面白くないのです。
「僕はアンディは傲慢で好きでないよ。スコッティッシュだけれど、フェデラーを応援したよ」
「僕はイングリッシュだけれどヘンマンはつまらん。アンディーのファンなんだ」
という裏切り者もぞくぞくでてきて、ブログのマリー戦争は収拾がつかなくなってきました。
このマリー戦争が、単純なスコティッシュvsイングランドの民族対立だけにとどまらないのは、「チャンピオンとはどうあるべきか?」という個人の価値感に深く根ざした問題だからでしょう。
まだ21才のアンディは、今はまだ自分の個性を生かしつつチャンピオンにふさわしい選手になる成長の過渡期です。フェデラーがラケットをコートに投げて怒りを表現することをやめ、言葉の選び方も相手をけなすことなく意見を述べられるようになってくるまでかなりの時間を要しています。
私のブログでも『錦織選手の今後の課題』で、ITOの問題と共にこのチャンピオンとは何かの問題に触れていますが、価値観の違いからいろいろ反響を呼んでしまいました。
しかし「チャンピオンとは?」「ヒーローとは?」の答えはとてもシンプルだと思うのです。時代を超え、国境を超え、ジェネレーションを超えた答えがヒーローなのです。子供は複雑な問題のコアを本能的に見分ける能力があります。子供たちが「彼のようになりたい」と思える選手が、チャンピオンでありヒーローだと思うのです。
「 正々堂々と戦う正義の味方」
この基本さえ押さえておけば、いろんなヒーローが出現してもよいと思うのですが。
投稿者 Tennisnakama 05:52 | コメント(9)| トラックバック(0)
ボルグも王者になる前、若かりし頃はそうだったと聞きます。
ランクアップとともに、態度もそれにふさわしいものになっていくのですね。
スコットランドとイングランド。
以前、メルギブソンの映画を見たときに、解らないながらも、
深い歴史と溝があるんだなぁとおもいました。
今回の記事で、テニスとともに理解が深まり、自分にとってとてもよかったです。
マナーのよくない人は好きじゃないけど、
確かに全てのテニスプレーヤーが優等生だったら、きっとまたそれも面白くないですよね。
私も優等生ばかりより、個性豊かな選手が沢山いる方が好きです。色んなキャラがいる方がトーナメントに彩りを与えると思いますから。
アンディに関しては、私自身が英国在住(ロンドン市内でなく、南西部です)なので、ウンウン!と頷いて読みました。英国は歴史を背負って気高く生きていますから、ムツカシイところが有りますよね。
この6月に、世界で最も美しいと賞賛されるロンドンのテニスクラブで、「F××k!」と叫びながらプレイをするアンディの姿に、一部の観客は呆れ 「今、彼、何か言った?(苦笑)」「さぁ?何も聞こえなかったけど(苦笑)」「きっと 『Focus!』って言ったんじゃない?(笑)」 「あぁ、きっとそうね(笑)」 という会話がなされていました。『F××k』 なんて言葉を私達は知らないし、使ったこともない。そういう意味だと思います。
暴言も多いですし、芝や天気など、いちいち文句をつけては試合を中断するし、マッケンローか?という振る舞いも多かったです(マッケンロー好きなんですけどね、私)。
ヘンマンは認めるけど、アンディを英国代表と受け入れるのは、微妙なようです。(まぁ、ヘンマンが引退してしまった今は、アンディを応援しているようですが)新聞の見出しも「GREAT SCOTS!」とスコットランド人であることをわざわざ書いていました。
USオープンでナダルに勝利したことで、アンディの言動が王者にふさわしいものになっていけば・・・・と願います。まだ21歳ですから期待できますよね。アンディのプレイは素晴らしいので、これからも楽しみです。
皆さんも、何かこのブログで討議していきたいテーマがあれば、
info@tennisnakama.comまでご連絡ください。
いま日本で、こちらのブログような切り口のテニスの報道は、ほんの少しあるかな?といった程度しかありません。「イギリスに於けるアンディ・マリー」なんて、皆無に思います。貴重な情報と、Tennisnakamaさんの主観に基づきながらも客観性を保った記事、毎回更新を心待ちにしています。
マリー、よくスコットランド旗柄の帽子をかぶっているのを見るので、スコテッシュとしての自負があるんだなぁと思っていました。英国って複雑で面白いですね。このままイングランドのメディアに揉まれて、真の英国のヒーローになっておくれー!と期待しています。
誰も書かなかったことを書く。
同じテーマでも違った視点から迫る。
ただ単純にテニスの試合の結果を伝える情報屋にはならない。
客観的に情報を処理した上で、自分の意見を述べる。
これからもよろしくお願いいたします。
イギリスって面白いですよね。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド…。
サッカーを見始めて知ったことの1つです。初めは「なんでイングランド代表にギグスがいないの?!」と思いました。ほんと、仲悪いですね。イギリス代表…、考えるだけでワクワクするのに。
(すいませんテニスと関係なくて ^^;)
マリー、ウィンブルドンで結構応援もらってんじゃん!と思いましたが、スコットランドの人が多かったんでしょうかね。
Fワードを拒むところも面白いですよね~。きっと貴族関係のお方??イギリス人ならごくごく普通に言うと思うので。そんな会話が横であったら笑っちゃうな。
テニスはやっぱり特別なんですね。でも昔はもっと厳しかったような?今はラケット投げたりする選手けっこういますよね。残念。(でもサフィンはすき)。叫ぶ選手も。サンプラスは試合中、ほとんど声を発さない記憶があります。いつ頃から、変わっていったんでしょうか??
思うように試合が進まないときにこそ、だと思います。自分のペースで進んでるときに八つ当たりする選手はいませんよね。
アンディマリーは才能ある素晴らしい選手なので、もちろんウィンブルドンでも大人気です。
ちなみに、国籍問わず、素晴らしいプレイをする選手には、いつも惜しみない拍手や声援が送られていると思います。例えそれが敵であったとしても。そういう点では、英国人は懐が深いです。
ただ、歴史的な背景を持つ国との対抗意識に関しては、とても複雑な感情が存在しているため、なかなかマリーを認めることができないのだと思います。勿論、マナーの点も大いに関係あると思います。
(テニスでなくとも、ウォータールーの戦いなんて、今でもフランス人との口論の元になるので禁句です)
私自身も英国に住むまではよく分からない事でしたので、住むとか、英国人とお付き合いがあるとかでないと、なかなか理解するのが難しいのだと思います。