2009年01月26日
成功恐怖症?
オーストラリアン・オープン Day 6
フェデラー def バーディッチ 4-6, 6-7, 6-4, 6-4, 6-2
フェデラーが5セットまで戦わなければならなかったこのR16のバーディッチ戦は、全く違った2試合の展開をみせ、その意味ではとても興味深い試合となりました。
(日本ではベルディフと呼ばれていますが、海外では一般にバーディッチと呼ばれていますので、この呼び方を採用しています。同じチェコ人のマティナ・ナルヴァティロヴァは彼のことをバーディックと呼んでいます。)
前半はバーディッチの完璧ともいえる攻撃のテニスで、技術的にはバーディッチがフェデラーを上回るテニスでした。後半はフェデラーがメンタルで上回り、結局メンタルの強いフェデラーが5セット目を勝ち取りR16はフェデラーの勝利に終わりました。
このゲームをメンタルゲームへと変化させたのは、第3セットの7ゲーム目(33)バーディッチのサーヴィスゲームです。ブレークポイントをサーヴィスエースで免れたバーディッチは、武器のフォアハンドと豪快なサーヴをフルに駆使してフェデラーからポイントを奪っていきます。しかしバーディッチは取り返しのつかないミスを犯してしまったのです。フワッと上がってきた球をスマッシュしようとして、ネットしてしまいました。こんな簡単なスマッシュを!しかもこの大切なポイントで!バーディッチは信じられない顔をしました。
この瞬間が、ゲーム展開を技からメンタルに流れを変えてしまいました。ここで興味深いのは、二人の抱いた本能的な直感です。フェデラーは「5セットに持ち込まれても勝つ自信があった」と、揺るぎない勝つという信念と自信によって、リズムを取り返していきます。
反面、過去に勝っていながら、最後に勝利を逃がしてしまった多くの苦い経験をもつバーディッチには、「やっぱり」という気持が湧いてきたのではないでしょうか。今まであれほど鋭いショットを見せていたバーディッチに冴えがなくなってきました。「やっぱり僕は勝てない」「今まで有利だったのは運がよかったからだ。」と自分が信じられないバーディッチが顔を覗き出してきたような印象を受けます。
2004年にフェデラーを倒して、センセーションナルに突然出現した、あの透き通るグリーンの目をしたチェコの18才の青年に、世界が魅せられました。彼のフラット気味のフォアハンドは、爆発的な威力でもってコーナーを突抜け、長身から叩き付けられるサーヴは、フェデラーもリターンができないほどの威力を持ちます。この才能に溢れるバーディッチがまだトップ5にも入れず20番台をウロウロしているのは、ガスケと並んでテニスの七不思議にあげれれるほど理解に苦しむ現象なのです。
今回の試合を再度観て感じたのは、有利に試合を展開させても、最後に負けてしまうのは、単なるメンタルで片付けられない問題があるのではないかという点です。ひょっとしたら彼の問題は緊張して固くなるだけでなく、もっと奥深いものがあるのではないかと思うのです。
(これから私の独断的で大胆な分析にはいります)
この繰り返されるバーディッチのメンタルの問題は、「成功恐怖症」Success Syndrome に似ています。この成功恐怖症は特に才能のある人によく見られる症状で、「自分の成功はまぐれだった」という自分への過小評価と不信感からきています。そして成功するのが恐くなってしまい(テニスでは優勝)、途中で投げ出してしまうのです。
なぜこのような印象を受けたかというと、第5セットの8ゲーム(2-5)でフッと見せたバーディッチの笑顔が、実に不釣り合いに見えたからでした。せっかくデュースにもっていったのですから、ここから取り返すぜという顔ではなく、何となくホッとした表情を見せたのです。「僕はフェデラーには勝てないことは分かってるんだ。自分に過大な期待をかけないでよかった。」といったプレッシャーから逃れた安堵感だったような気がするのです。
勝てる試合を何度も落としてきたバーディッチには、勝てる自分を信じていないように思えます。優勢だった状況から、一挙に崩れだしたバーディッチをみていると、成功恐怖症(テニスでは勝利を恐れる)から抜け出せない彼を垣間みたような気がするのです。スポーツサイコロジーで読んだことがありますが、かなり多くの選手にみられる現象だということでした。
強いメンタルで知られるフェデラーは、「2セットダウンからでも自分は勝てると信じていた」と記者会見で言っています。どんな窮地に陥っても、最後には勝てるという自分に対する信念と自信は、13タイトルを勝ち得たチャンピオンでしか持ち得ないアセットかもしれません。
果たしてこのアセットでもって、フェデラーは次の試合をメンタルゲームに持ち込み、ゲームを有利に展開できるでしょうか?
対戦相手はバーディッチと違い、ショットにミスの少ないデルポトロです。ディフェンスがうまく、一発勝負をやらないデルポトロだけに、フェデラーのエラーは大禁物です。
アガシが言っていた「エラーを15以下に押さえたら僕はどんな試合でも勝てる」まさにこの言葉が今後のフェデラーの課題ではないかと思います。
QFのデルポトロ戦を注目したいと思います。
フェデラー def バーディッチ 4-6, 6-7, 6-4, 6-4, 6-2
フェデラーが5セットまで戦わなければならなかったこのR16のバーディッチ戦は、全く違った2試合の展開をみせ、その意味ではとても興味深い試合となりました。
(日本ではベルディフと呼ばれていますが、海外では一般にバーディッチと呼ばれていますので、この呼び方を採用しています。同じチェコ人のマティナ・ナルヴァティロヴァは彼のことをバーディックと呼んでいます。)
前半はバーディッチの完璧ともいえる攻撃のテニスで、技術的にはバーディッチがフェデラーを上回るテニスでした。後半はフェデラーがメンタルで上回り、結局メンタルの強いフェデラーが5セット目を勝ち取りR16はフェデラーの勝利に終わりました。
このゲームをメンタルゲームへと変化させたのは、第3セットの7ゲーム目(33)バーディッチのサーヴィスゲームです。ブレークポイントをサーヴィスエースで免れたバーディッチは、武器のフォアハンドと豪快なサーヴをフルに駆使してフェデラーからポイントを奪っていきます。しかしバーディッチは取り返しのつかないミスを犯してしまったのです。フワッと上がってきた球をスマッシュしようとして、ネットしてしまいました。こんな簡単なスマッシュを!しかもこの大切なポイントで!バーディッチは信じられない顔をしました。
この瞬間が、ゲーム展開を技からメンタルに流れを変えてしまいました。ここで興味深いのは、二人の抱いた本能的な直感です。フェデラーは「5セットに持ち込まれても勝つ自信があった」と、揺るぎない勝つという信念と自信によって、リズムを取り返していきます。
反面、過去に勝っていながら、最後に勝利を逃がしてしまった多くの苦い経験をもつバーディッチには、「やっぱり」という気持が湧いてきたのではないでしょうか。今まであれほど鋭いショットを見せていたバーディッチに冴えがなくなってきました。「やっぱり僕は勝てない」「今まで有利だったのは運がよかったからだ。」と自分が信じられないバーディッチが顔を覗き出してきたような印象を受けます。
2004年にフェデラーを倒して、センセーションナルに突然出現した、あの透き通るグリーンの目をしたチェコの18才の青年に、世界が魅せられました。彼のフラット気味のフォアハンドは、爆発的な威力でもってコーナーを突抜け、長身から叩き付けられるサーヴは、フェデラーもリターンができないほどの威力を持ちます。この才能に溢れるバーディッチがまだトップ5にも入れず20番台をウロウロしているのは、ガスケと並んでテニスの七不思議にあげれれるほど理解に苦しむ現象なのです。
今回の試合を再度観て感じたのは、有利に試合を展開させても、最後に負けてしまうのは、単なるメンタルで片付けられない問題があるのではないかという点です。ひょっとしたら彼の問題は緊張して固くなるだけでなく、もっと奥深いものがあるのではないかと思うのです。
(これから私の独断的で大胆な分析にはいります)
この繰り返されるバーディッチのメンタルの問題は、「成功恐怖症」Success Syndrome に似ています。この成功恐怖症は特に才能のある人によく見られる症状で、「自分の成功はまぐれだった」という自分への過小評価と不信感からきています。そして成功するのが恐くなってしまい(テニスでは優勝)、途中で投げ出してしまうのです。
なぜこのような印象を受けたかというと、第5セットの8ゲーム(2-5)でフッと見せたバーディッチの笑顔が、実に不釣り合いに見えたからでした。せっかくデュースにもっていったのですから、ここから取り返すぜという顔ではなく、何となくホッとした表情を見せたのです。「僕はフェデラーには勝てないことは分かってるんだ。自分に過大な期待をかけないでよかった。」といったプレッシャーから逃れた安堵感だったような気がするのです。
勝てる試合を何度も落としてきたバーディッチには、勝てる自分を信じていないように思えます。優勢だった状況から、一挙に崩れだしたバーディッチをみていると、成功恐怖症(テニスでは勝利を恐れる)から抜け出せない彼を垣間みたような気がするのです。スポーツサイコロジーで読んだことがありますが、かなり多くの選手にみられる現象だということでした。
強いメンタルで知られるフェデラーは、「2セットダウンからでも自分は勝てると信じていた」と記者会見で言っています。どんな窮地に陥っても、最後には勝てるという自分に対する信念と自信は、13タイトルを勝ち得たチャンピオンでしか持ち得ないアセットかもしれません。
果たしてこのアセットでもって、フェデラーは次の試合をメンタルゲームに持ち込み、ゲームを有利に展開できるでしょうか?
対戦相手はバーディッチと違い、ショットにミスの少ないデルポトロです。ディフェンスがうまく、一発勝負をやらないデルポトロだけに、フェデラーのエラーは大禁物です。
アガシが言っていた「エラーを15以下に押さえたら僕はどんな試合でも勝てる」まさにこの言葉が今後のフェデラーの課題ではないかと思います。
QFのデルポトロ戦を注目したいと思います。
投稿者 Tennisnakama 05:21 | コメント(9)| トラックバック(0)
オーストラリアオープンも2週目にはいり、 面白くなって来ましたね。 あの美しいフェりが 1回戦で負けてしまいがっかりしましたが、 まだ 好きなナダル、ソンガ、それに シモンも残っているので、 楽しみです。 わたしはカナダに住んでいて、 テニスは アメリカの放送のものを見ることになります。 実は まだ 圭クンのテニスの試合を ちゃんと 見たことがないのです。 圭クンがアメリカの有名なプレイヤーと対戦するか、 Best16 ぐらいに 入らないと テレビでは なかなか 見れません。 次の フレンチオープンでは Best16にはいって、試合が見れることを祈ってます。
ひとつ、 テレビの放送に関して、 不満があるのですが、 どうして、 ダブルスの試合は放映されることが 少ないのでしょうか。 テレビを見ている人のほとんどが ダブルスプレーヤーなのに、 ダブルスの試合は シングルの試合が早く終わったときしか 放映されません。 今回はウィリアムズ姉妹がでているので、 少し見れるかもしれませんが せめて セミファイナルからの 3試合だけでも見たいものです。
さて、私は最近のストリーミングがすごくよくなって錦織選手の試合はほとんどPCで観ています。ダブルスも今結構ライヴで観戦できます。ただこれらのサイトは不法のようなのでお教えすることができないのです。グーグルでaustralian open live streamingと打って一度検索してみてください。いろんなサイトの情報が入ってきます。
「成功恐怖症」の分析、私はものすごく納得できました。選手たちには乗り越えなくてはいけないメンタル面での壁がいくつもあるわけですが、その壁にもいろんな種類があるのだとわかりました。昔心理学の本を読んだ時に、「成功恐怖症」について書いてあり、「これを克服するのは、大変だろうなあ」と思った覚えがあります。才能がある人ほど、それに陥りやすいというのもよくわかります。
私は昨日、サフィーナの試合を見ていて、「怖くて腕が縮こまりそうな時ほど、勇気を出して攻めて行く」という壁を彼女が越えているのを見たような気がしました。長い時間をかけ自分と戦って復活したドキッチにも感動を覚えます。選手たちが自分の抱えるメンタル面での壁を越える瞬間を見ると、勇気がわきます。バーディチがこの「成功恐怖症」を乗り越える日を楽しみにしています。(彼はかっこいいから、もっともっと活躍して欲しい!…というのが本音??)
確かに、素人の私ですらメンタルゲームに変った瞬間がわかりました。
「これはだめだ~」から「これは勝てる!」と、この試合中初めて思った瞬間です。あの後フェデラーは急に動きも良くなり、落ち着きを取り戻しましたね。(もっと早く取り戻して欲しいものですが)
「成功恐怖症」・・バーディッチの試合後のインダビューもそんな感じが出てました。あんなに凄いショットが打てるのに。。。ガスケも残念な結果になる事が多いので、ともにぜひ乗り越えてもらいたいです。
バーディッチは本当に自分のペースを作って、ミスも少なく、素晴らしいプレーをしていたと思います。ブレークしてもすぐにブレークバックされてしまうし、どこにボールを打っても足の長いバーディッチはどんどん拾う・・。そんな彼に対してロジャーは私のような素人が見てる限り「歯が立たない」ように見えてしまっていました。これで終わりなの?って‥ でも、特に5セットマッチという長丁場、やはり最後はメンタルがものをいうんですねー テレビの画面から直接は分からないけど、選手の心の中は試合の間にめまぐるしく変化するんでしょうね。それを安定させるのはやっぱり色んな経験だったりするんでしょうか。試合を、ただテニスの技術だけでなく、こうやった見方をすると、また新しい面が見えて面白さがどんどん増してきます!
試合の流れの中で、体力でもなく、簡単なメンタルとかたづけられない何かで調子を落としてしまう選手たち。
メンタルトレーニングとして、自分が勝つイメージを持つことがどんなに大事かわかります。
よく、スポーツでは、負けているとききもちを顔に出してはいけない、と言われますよね。
自分自身もよりマイナーな気分になってしまい、相手にもこれでいいぞ!と思わせてしまうから。
成功恐怖症の選手たち。
自身をコントロールして、今までのイメージを払拭して欲しいとおもいます。
なぜ負けてしまったんだろう、と見ている側も思うような試合は、こういうパターンなのかな、ってこの記事を読んで思いました。
私がファンである、水泳の北島選手は、相手に負けると思ったら、絶対負けてしまう。
最初から負けるという気持ちは持たない。(中学生くらいのときにこれに気付いたそうです。)
試合において不安な要素があっても、最終的には絶対に俺が勝つ!って思っちゃうんだそうです。
蛇足ですが、試合のイメージを、招待所にいるときから表彰台に立つまでをとてもこと細かくイメージするそうです。外見からは想像つかないですが、とても緻密です。
勝つイメージって本当に大事なんですね。
一瞬の出来事だったので深くは考えませんでしたが。
自分は負けず嫌いなのであのポイント後の笑顔は理解できませんでしたが、
成功恐怖症なるものが世の中にはあるんですね。
フェデラーファンですがバーディッチのテニスは好きなので大変興味ある試合でした。
バーディッチやガスケにはランキング10位以内に入って欲しいです。
でも時代はマレーやナダルなどオフェンシブディフェンスカウンターパウンチャーが勝つんでしょうね。
ナダルはここ1年くらい変化しているのでディフェンシブオフェンスに変わりそうですね。
しかしプロテニスもプロサッカーもプロ野球もプロゴルフでさえもデフェンスから入って行く事が勝利への鍵となっている現状で、
タイガーウッズやバーディッチ・錦織君などオフェンスから入るプレイヤーが勝って欲しいです。
しかしフェデラーはKに変えてから勢い良く振るとアウト、なので普段は短い玉しか打てなくなってしまい相手の打ちごろを配球してばかり。
差し込まれた時のスーパーカウンターもなりを潜め・・・
自分の周りではK90を買った人もN90に戻しています。
しかしKでも95は良さそうです。でもブレイドの方が評判いいですが。