2009年02月12日
新アンチ・ドーピングルールの波紋
ドーピングの問題でスポーツ業界がいろいろ騒がしくなってきました。
アメリカではヤンキーズのスーパースター、A-Rod(アレックス・ロドリゲス)のドラッグの使用が噂されていましたが、ステロイド系の薬物使用を最終的に認めました。
(スポニチ記事)
しかし、野球界はもともとドーピングについては規制がゆるく、特に筋肉増強剤については真剣に取り組む姿勢をしめしてこなかった背景に、「うるさいことは言わず、ホームランがもっと見れればよいじゃないか」といったパーフォンマンス重視のファン心理が大きく影響していたと思います。
しかしジェントルマンスポーツを死守していかなければならない宿命を背負ったテニスでは、ますますドーピングの取り締まりは厳しくなる一方で、新しく改正された「アンチ・ドーピング・プログラム」は選手を犯罪者扱いにしていると、怒りをかくせない選手が続出してきています。
まず、アンディー・マリーが英国紙、The Timesに不満をぶちまけました。そしてマレーだけでなく、ナダルを始め多くの選手が、厳しすぎる新しいアンチ・ドーピング・ルールに改正の要求することを考えています。
では「あまりにも行き過ぎている」という批判をもろに受けている新しい規則とは?
新しいアンチ・ドーピング・ルールTennis Anti-doping Program 2009が今年の1月1日から施行されることになりました。262ページにもおよぶ膨大なプログラムですが、簡単に紹介してみたいと思います。
まずドーピングとはどんな薬物が含まれるのでしょうか?(何百というものすごい数と種類ですので、おおざっぱに紹介します。種類の多さは前の規定とあまり変わりはないと思います。)
ステロイド系(約80種類)
ホルモン系(成長ホルモンなど)
β2作用剤
酸素運搬の強化剤
薬理学的、化学的、物理的操作
興奮剤(コケイン、アドレナリン促進剤など)
麻薬(モルヒネなど)
カナビノイド(マリワナ、大麻など)
遺伝子ドーピング
ドーピング違反で有名なのは、ヒンギス(コケイン使用の疑い)ですが、その他にも、コリア(ビタミン剤に含まれる違反物質の疑い)、プエルタ(8年間の最も厳しい出場停止)があります。最も最近の例では、ヴォランドリ(イタリア)が3ヶ月の停止を受けてオーストラリアン・オープンを欠場しました。
本人が知らずにある風邪薬を飲んでひっかかった例もありますし、テストの結果自体が間違っていたというケースもあります。口に入れるものはすべて検査の対象になるので、ビタミン剤でも神経質になっている選手の話をよく聞きます。
しかし選手たちにもっとも不満が集まっているのは、このドーピングの種類ではなく、ドーピングテストのやり方です。
問題は、今年から予告なくして採血または採尿するシステムになったことです。この予告なしのコレクション・オフィサーの訪問は、365日いつどこで行われるのか分からないのです。この突然のテストを実現するには、選手の居所がわからなくてはなりません。
「一日一時間」が問題の新しいルールです。テストが受けられる居場所を報告する義務が設けられました。つまりこの一時間はここにいます、という場所を前もって報告しなければならないのです。これは365日にあてはまるルールで一日も抜かしてはならないのです。
これは大変な義務だと思います。例えば、予定が急遽変更になることがあります。試合に負けてしまって急遽、移動しなくてはならなくなることは日常茶飯の出来事でしょうし、彼らのように移動しない私でも、毎日のスケジュールを念頭において事前に報告することは、不可能に近い作業です。
もし事故などで緊急に報告できなくてテストをミスれば、テスト不履行とされます。あのダブルスのチャンピオン、マイク・ブライアンがタイアのパンクでテニスをミスってしまいました。パンクしたときにすぐ報告しなかったのです。あとの1回はうっかりスケジュールの変更を報告し忘れたことによってミスってしまいました。これでマイクはすでに合計2回の不履行です。3ストライク・アウトのルールで、18ヶ月の間に3回ミスると、厳しい場合は2年間の出場停止の処分を受けてしまいます。
アンディ・マレーはタイム紙に、新しい規則はノーマルな生活を不可能にすると、不満をぶちまけています。
http://www.timesonline.co.uk/tol/sport/tennis/article5671975.ece
「オーストラリアンから自宅に帰ってきたその日の朝7時にたたき起こされた。僕は時差でもうろうとしていて、何が起こったのかよく分からない状態だったんだ。オーストラリアン・オープンでは4日前にテストを受けたばかりなのに、これはひどいと思う。もし飛行機に乗り遅れてしまって帰れなくなってしまっても、即WADA (World Anti-doping Agency)に連絡しなければならない。休暇中でもだ。」
この厳しいルールはテニスだけでなく、サッカー、サイクリング、ヴァレーボールなどの選手にも適用され、ナダルはスペインの記者に、サッカー選手たちとともに、「プライヴァーシー侵害」として法的手段をとることを考えていると述べたそうです。
ではフェデラーの見解はどうでしょう?
「科学の進歩とともにドーピングの問題もむずかしくなってきている。前もって選手にテストをすることを知らせていたら、違反を発見するのがむずかしい。やっかいなシステムだけれど、テニスをクリーンなスポーツにしたいので、僕は一日一時間のルールは構わない。」
新ルールについては、マレーは以下の見解を述べています。
「ドラッグ問題はテニスにおいてはそれほど大きな問題になっていない。僕はドラッグテストをサポートするし、スポーツにおいてはドラッグの使用は厳しく非難されるべきだと思っている。しかしテニス選手のドラッグ問題の対応は、現実的かつ実用的であるべきだと思う。」
大会から大会へ、多くの荷物とともに移動を続けなくてはならない選手に、この新ルールはとても過酷で同情に耐えません。クリーンなテニスのために、日々努力をしている選手たちに大きな拍手をおくりたいと思います。
アメリカではヤンキーズのスーパースター、A-Rod(アレックス・ロドリゲス)のドラッグの使用が噂されていましたが、ステロイド系の薬物使用を最終的に認めました。
(スポニチ記事)
しかし、野球界はもともとドーピングについては規制がゆるく、特に筋肉増強剤については真剣に取り組む姿勢をしめしてこなかった背景に、「うるさいことは言わず、ホームランがもっと見れればよいじゃないか」といったパーフォンマンス重視のファン心理が大きく影響していたと思います。
しかしジェントルマンスポーツを死守していかなければならない宿命を背負ったテニスでは、ますますドーピングの取り締まりは厳しくなる一方で、新しく改正された「アンチ・ドーピング・プログラム」は選手を犯罪者扱いにしていると、怒りをかくせない選手が続出してきています。
まず、アンディー・マリーが英国紙、The Timesに不満をぶちまけました。そしてマレーだけでなく、ナダルを始め多くの選手が、厳しすぎる新しいアンチ・ドーピング・ルールに改正の要求することを考えています。
では「あまりにも行き過ぎている」という批判をもろに受けている新しい規則とは?
新しいアンチ・ドーピング・ルールTennis Anti-doping Program 2009が今年の1月1日から施行されることになりました。262ページにもおよぶ膨大なプログラムですが、簡単に紹介してみたいと思います。
まずドーピングとはどんな薬物が含まれるのでしょうか?(何百というものすごい数と種類ですので、おおざっぱに紹介します。種類の多さは前の規定とあまり変わりはないと思います。)
ステロイド系(約80種類)
ホルモン系(成長ホルモンなど)
β2作用剤
酸素運搬の強化剤
薬理学的、化学的、物理的操作
興奮剤(コケイン、アドレナリン促進剤など)
麻薬(モルヒネなど)
カナビノイド(マリワナ、大麻など)
遺伝子ドーピング
ドーピング違反で有名なのは、ヒンギス(コケイン使用の疑い)ですが、その他にも、コリア(ビタミン剤に含まれる違反物質の疑い)、プエルタ(8年間の最も厳しい出場停止)があります。最も最近の例では、ヴォランドリ(イタリア)が3ヶ月の停止を受けてオーストラリアン・オープンを欠場しました。
本人が知らずにある風邪薬を飲んでひっかかった例もありますし、テストの結果自体が間違っていたというケースもあります。口に入れるものはすべて検査の対象になるので、ビタミン剤でも神経質になっている選手の話をよく聞きます。
しかし選手たちにもっとも不満が集まっているのは、このドーピングの種類ではなく、ドーピングテストのやり方です。
問題は、今年から予告なくして採血または採尿するシステムになったことです。この予告なしのコレクション・オフィサーの訪問は、365日いつどこで行われるのか分からないのです。この突然のテストを実現するには、選手の居所がわからなくてはなりません。
「一日一時間」が問題の新しいルールです。テストが受けられる居場所を報告する義務が設けられました。つまりこの一時間はここにいます、という場所を前もって報告しなければならないのです。これは365日にあてはまるルールで一日も抜かしてはならないのです。
これは大変な義務だと思います。例えば、予定が急遽変更になることがあります。試合に負けてしまって急遽、移動しなくてはならなくなることは日常茶飯の出来事でしょうし、彼らのように移動しない私でも、毎日のスケジュールを念頭において事前に報告することは、不可能に近い作業です。
もし事故などで緊急に報告できなくてテストをミスれば、テスト不履行とされます。あのダブルスのチャンピオン、マイク・ブライアンがタイアのパンクでテニスをミスってしまいました。パンクしたときにすぐ報告しなかったのです。あとの1回はうっかりスケジュールの変更を報告し忘れたことによってミスってしまいました。これでマイクはすでに合計2回の不履行です。3ストライク・アウトのルールで、18ヶ月の間に3回ミスると、厳しい場合は2年間の出場停止の処分を受けてしまいます。
アンディ・マレーはタイム紙に、新しい規則はノーマルな生活を不可能にすると、不満をぶちまけています。
http://www.timesonline.co.uk/tol/sport/tennis/article5671975.ece
「オーストラリアンから自宅に帰ってきたその日の朝7時にたたき起こされた。僕は時差でもうろうとしていて、何が起こったのかよく分からない状態だったんだ。オーストラリアン・オープンでは4日前にテストを受けたばかりなのに、これはひどいと思う。もし飛行機に乗り遅れてしまって帰れなくなってしまっても、即WADA (World Anti-doping Agency)に連絡しなければならない。休暇中でもだ。」
この厳しいルールはテニスだけでなく、サッカー、サイクリング、ヴァレーボールなどの選手にも適用され、ナダルはスペインの記者に、サッカー選手たちとともに、「プライヴァーシー侵害」として法的手段をとることを考えていると述べたそうです。
ではフェデラーの見解はどうでしょう?
「科学の進歩とともにドーピングの問題もむずかしくなってきている。前もって選手にテストをすることを知らせていたら、違反を発見するのがむずかしい。やっかいなシステムだけれど、テニスをクリーンなスポーツにしたいので、僕は一日一時間のルールは構わない。」
新ルールについては、マレーは以下の見解を述べています。
「ドラッグ問題はテニスにおいてはそれほど大きな問題になっていない。僕はドラッグテストをサポートするし、スポーツにおいてはドラッグの使用は厳しく非難されるべきだと思っている。しかしテニス選手のドラッグ問題の対応は、現実的かつ実用的であるべきだと思う。」
大会から大会へ、多くの荷物とともに移動を続けなくてはならない選手に、この新ルールはとても過酷で同情に耐えません。クリーンなテニスのために、日々努力をしている選手たちに大きな拍手をおくりたいと思います。
投稿者 Tennisnakama 00:56 | コメント(7)| トラックバック(0)
ドーピングは言語道断と思いますが、このルールは本当に厳しいですね。
口にするものどころか、24時間全てが管理下にあるようで、このストレスは想像を超えます。
フェデラーの余裕なコメントは全部ミルカがやってくれるからなのでは?ミルカは怒ってたりして・・・。
ここまでやらなければいけないくらいに事態は深刻と言う事でしょうか。残念な事です。
プロテニスの顔つきです。去年にくらべるとずつと ずつと テニスが上手になり 足もはやくなりなしたよ
彼の元気な姿が見たければ momokiyo さんのブログhttp://momokiyo.blog.tennis365.net でみてください
明日もmomokiyoさんと応援にゆきます。皆さんの分まで大きな声で応援しますので
私はお金を払ってストリーミングを観ます。もしよかったら生観戦の感想をコメントにください。私は観た直後2時間以内にアップします。
TennisnakamaさんのBlog紹介させていただきました~
プロプレイヤーだから仕方ない面もあるかとは思いますが
ドーピング検査の方法がひどいですね!
やってないと言う自信はあってもスケジュール通りには行かないこともあるし
気分転換に急にここに立ち寄るなんてことが出来なくなるは選手は息が詰まるよ~!
明日の記事楽しみにしています~
明日は仕事とテニスで家にいないので見るチャンスゼロだわ~(T▽T)
私たちには見えないところで、選手たちは大変な努力をしているんですね。 だからこそファンは目いっぱい応援しないとですね。ロジャー、今は余裕~に構えているけど、今年の中ごろになったら「やっぱりストレスたまるよ~」とか、言ってないといいけど!(笑)
オリンピックを控えての強化らしいのですが、テニスではあまり効果が見えないクスリが多いらしいですね。
プライバシー侵害や、過酷なスケジュールとその管理とも戦わなければならない選手たちの要求が何とか通ってくれたらいいのだけれど!
わたしのブログで、この記事を紹介させてください。