2009年02月19日
錦織スタッツ研究
2月17日のメンフィス大会では錦織選手がバグダティスと対戦、1回戦を5-7, 3-6で残念ながら敗退してしまいました。
昨日は一日中出かけていましたので、残念ながらライヴスコアで観戦できておりませんが、ライスコ分析をしてみたいと思います。
第1サーヴの確率だけではゲームを読めない:
フェデラーの平均1stサーヴは63%。今回のバグダティス戦の圭君は62%。
スタッツの上では二人の1stサーヴは変わりません。では二人の違いは?
サーヴィスゲームをキープするということはどういうことなのか?
よいサーヴを入れ、ゲームを自分のコントロール下におさめ、得点につなげるのがサーヴィスゲームです。ですからその大切な役割をしてくれる1stサーヴがまず入らなければお話になりません。しかし今回の圭君のように、バグダティスよりも15%も高い率で1stサーヴを入れているのに、なぜ負けてしまうか?(錦織は62%、バグダティスは47%)
サーヴには速度、回転、プレースメント、Disguise(サーヴが予測できない)の4つの勝つための要素があります。できればこの4要素すべてを総合したサーヴを打てればベストです。フェデラーのサーヴがなぜすばらしいのか? 毎回サーヴィスモーションが同じですので、レシーヴ側はどちらにやってくるのか予測できないのです。
確かに%が高ければ高いほど、リターンされにくいでしょうが、クウォリティーが低ければ、リターンを許してしまって相手に主導権を与えてしまいます。ここで重要になるのは、1stサーヴでどれだけポイントがとれたかという点です。以下はサーヴィスの確率と得点率です。
1stサーヴの得点率の意味するもの:
錦織: 得点率55%(40本のうち22本を得点)
バグダティス: 得点率81%(27本のうち22本を得点)
1stサーヴの確率が悪くても、サーヴの質がよければ8割以上をバグダティスは得点に結びつけています。従って得点に結びついた1stサーヴは%に違いがあっても、結果的には二人とも同じ22ポイントとなっています。
2ndサーヴの得点率の意味するもの:
錦織: 得点率44%(25本のうち11本を得点)
バグダティス: 得点率50%(30本のうち15本を得点)
ここで二人の得点差が4ポイントでてきます。2ndサーヴでも相手に得点を与えないためには、リターンされにくいサーヴを圭君はもっと打つ必要があります。
錦織のリターンの得点率:
バグダティスの1stサーヴ得点率が81%(22/27)ですので、彼のサーヴがよくてなかなかリターンできなかったことを示しています。圭君のリターンの得点率は従って19%のみで、5本のリターンしかポイントがとれていません。これではブレークするのは大変むずかしいことを物語っています。これは圭君に大きなプレッシャーとなります。
それではポイントの総合計算をしてみましょう
サーヴとリターンによるポイントを総合したものが総合得点となります。圭君の場合は以下のようになります。
錦織の総合ポイント:53ポイント
1stサーヴ: 22
2ndサーヴ: 11
1stリターン:5
2ndリターン:15
バグダティスの総合ポイント: 69ポイント
1stサーヴ: 22
2ndサーヴ: 15
1stリターン:18
2ndリターン:14
この二人のおおきな違いは、バグダティスの1stリターンが18ポイントもとっていることです。これはいかに圭君の1stサーヴがとりやすいかを物語っています。2ndサーヴで叩かれることがあっても、1stサーヴで相手に「たいしたことないな」とおもわせるのは絶対禁物。相手はブレークできると自信をもってリターンを打ってきますので、相手にアグレッシヴな展開を許してしまいます。
いくら圭君にリターン力があっても、ワイドやTを狙ったスピンサーヴはリターンができません。エースでも圭君は1本しかありませんが、バグダティスは7本打っています。
エースがなぜ大切なのか?
チープポイントとして簡単に得点になるだけでなく、相手に与えるプレッシャーがとても大きいのです。特にブレークポイントをとりながら、エースをされてブレークチャンスを逃してしまったときなど、ブレークすることの難しさを思い知らされますので効果は絶大です。
圭君のこれからの課題は一にもサーヴ、二にもサーヴだと思います。エースが打てなくても相手に気持ちよくリターンさせないサーヴが必要です。サーヴでゲームの主導権を握ってはじめて、彼のAir-Kや炸裂フォアハンドを打つことができるのですから。
息子が属していたクラブでは、US Openジュニアに出場する選手と混じって練習しておりましたが、ここで不思議に思ったのは、サーヴにかける時間の少なさです。最後の15分くらいです。長時間サーヴの練習はできないので仕方ないとは思いますが、一般にサーヴにかける練習量は少なすぎると思います。あとはほとんどグラウンドストークで、ヴォレー、オーヴァーヘッドも費やす時間は少なかったことを覚えています。
圭君は今度は大阪でのデ杯ですね。これは私は観戦できませんので、皆さんのコメントをお待ちしています。
昨日は一日中出かけていましたので、残念ながらライヴスコアで観戦できておりませんが、ライスコ分析をしてみたいと思います。
ライヴスコアのスタッツの見方
第1サーヴの確率だけではゲームを読めない:
フェデラーの平均1stサーヴは63%。今回のバグダティス戦の圭君は62%。
スタッツの上では二人の1stサーヴは変わりません。では二人の違いは?
サーヴィスゲームをキープするということはどういうことなのか?
よいサーヴを入れ、ゲームを自分のコントロール下におさめ、得点につなげるのがサーヴィスゲームです。ですからその大切な役割をしてくれる1stサーヴがまず入らなければお話になりません。しかし今回の圭君のように、バグダティスよりも15%も高い率で1stサーヴを入れているのに、なぜ負けてしまうか?(錦織は62%、バグダティスは47%)
サーヴには速度、回転、プレースメント、Disguise(サーヴが予測できない)の4つの勝つための要素があります。できればこの4要素すべてを総合したサーヴを打てればベストです。フェデラーのサーヴがなぜすばらしいのか? 毎回サーヴィスモーションが同じですので、レシーヴ側はどちらにやってくるのか予測できないのです。
確かに%が高ければ高いほど、リターンされにくいでしょうが、クウォリティーが低ければ、リターンを許してしまって相手に主導権を与えてしまいます。ここで重要になるのは、1stサーヴでどれだけポイントがとれたかという点です。以下はサーヴィスの確率と得点率です。
1stサーヴの得点率の意味するもの:
錦織: 得点率55%(40本のうち22本を得点)
バグダティス: 得点率81%(27本のうち22本を得点)
1stサーヴの確率が悪くても、サーヴの質がよければ8割以上をバグダティスは得点に結びつけています。従って得点に結びついた1stサーヴは%に違いがあっても、結果的には二人とも同じ22ポイントとなっています。
2ndサーヴの得点率の意味するもの:
錦織: 得点率44%(25本のうち11本を得点)
バグダティス: 得点率50%(30本のうち15本を得点)
ここで二人の得点差が4ポイントでてきます。2ndサーヴでも相手に得点を与えないためには、リターンされにくいサーヴを圭君はもっと打つ必要があります。
錦織のリターンの得点率:
バグダティスの1stサーヴ得点率が81%(22/27)ですので、彼のサーヴがよくてなかなかリターンできなかったことを示しています。圭君のリターンの得点率は従って19%のみで、5本のリターンしかポイントがとれていません。これではブレークするのは大変むずかしいことを物語っています。これは圭君に大きなプレッシャーとなります。
それではポイントの総合計算をしてみましょう
サーヴとリターンによるポイントを総合したものが総合得点となります。圭君の場合は以下のようになります。
錦織の総合ポイント:53ポイント
1stサーヴ: 22
2ndサーヴ: 11
1stリターン:5
2ndリターン:15
バグダティスの総合ポイント: 69ポイント
1stサーヴ: 22
2ndサーヴ: 15
1stリターン:18
2ndリターン:14
この二人のおおきな違いは、バグダティスの1stリターンが18ポイントもとっていることです。これはいかに圭君の1stサーヴがとりやすいかを物語っています。2ndサーヴで叩かれることがあっても、1stサーヴで相手に「たいしたことないな」とおもわせるのは絶対禁物。相手はブレークできると自信をもってリターンを打ってきますので、相手にアグレッシヴな展開を許してしまいます。
いくら圭君にリターン力があっても、ワイドやTを狙ったスピンサーヴはリターンができません。エースでも圭君は1本しかありませんが、バグダティスは7本打っています。
エースがなぜ大切なのか?
チープポイントとして簡単に得点になるだけでなく、相手に与えるプレッシャーがとても大きいのです。特にブレークポイントをとりながら、エースをされてブレークチャンスを逃してしまったときなど、ブレークすることの難しさを思い知らされますので効果は絶大です。
圭君のこれからの課題は一にもサーヴ、二にもサーヴだと思います。エースが打てなくても相手に気持ちよくリターンさせないサーヴが必要です。サーヴでゲームの主導権を握ってはじめて、彼のAir-Kや炸裂フォアハンドを打つことができるのですから。
息子が属していたクラブでは、US Openジュニアに出場する選手と混じって練習しておりましたが、ここで不思議に思ったのは、サーヴにかける時間の少なさです。最後の15分くらいです。長時間サーヴの練習はできないので仕方ないとは思いますが、一般にサーヴにかける練習量は少なすぎると思います。あとはほとんどグラウンドストークで、ヴォレー、オーヴァーヘッドも費やす時間は少なかったことを覚えています。
圭君は今度は大阪でのデ杯ですね。これは私は観戦できませんので、皆さんのコメントをお待ちしています。
投稿者 Tennisnakama 00:22 | コメント(12)| トラックバック(0)
ブリスベンでのベルディヒ戦では(錦織選手は)エースも結構取れており、サーブのスピードやパワー・キレが明らかにUPしているのを感じたのですが、腕を痛めて以降、サーブの調子があまり芳しくないように思います。
またベルディヒ戦の時のようなサーブが戻ってくれば、上位選手が相手でも自ずと勝利が見えてくると思います。
錦織君のサービスはフォームを改造中と聞いた事があるのですが、それが原因なのでしょうか… 以前はスピードはなくても プレースメントの高いサービスを入れていたと思います。うーん… 難しいですね(^_^;)サーブといえば、私が通っている(日本の)テニスのスクールでもサーブ練習にあまり時間をかけてくれません!私はレフティーなのにサーブが苦手で練習をしたいのですが、ストロークとボレー中心で サーブの練習もあまりしないのに試合形式に入ってしまいます。アメリカでもサーブの練習をあまりしないなんて驚きです!あ、でもジュニアと一般(シニア?)を一緒にしてはいけませんね。でも 世界的にそういった傾向なのでしょうか…
私はキックサーヴのやりすぎで昔肩の手術を受けましたが、サーヴは肩が勝負なので、圭君の肩も心配しているのです。デルポトロのときでも、1stサーヴの確率は43%と大変ひくかったものですから。何事もなければよいのですが。
みどりさん、
息子がレフティーでしたので、サーヴの練習はよくつきあいました。レフティーのサーヴはスライスが一番。特にアドコートからのスライスはワイドに切れて絶対とれません。これ一つで試合に勝てますので、ぜひ練習してください。
錦織君の課題はやはりサービス改善ですか。。。tennisnakama さんご指摘の4要素の改善という観点に大賛成です。
更に、もう一つの課題と思えるものがあります。すなわち、メンタル・タフネス改善です。
これは1月の全豪O 決勝戦における Federer のサービスを思い出すと、彼ですら苦慮していたかに見える課題(これは特に対 Nadal 戦限定?)。
これが上述の改善された技術を確実に発揮させてくれる基盤かなと思うのです。特に気力の浮き沈みの振幅 のperformance への影響を如何にミニマイズするか、きっとトレーニングしているんだろうなとは思います。これはOn the Job Training、つまり試合の実践の中で身に付ける必要があるでしょうから、それこそ tough でしょうね。
うーむ、よく考えると、テニスであろうが一般ビジネスであろうが、同じ人間のやることで、課題は同じようなものですね。自分も精進しなくては…。
最後に、今いちばん気になっているのは、腕(または肘?)痛の回復です。彼の performance に重大な影響を未だに与えているのであれば、大会をキャンセルしても全力で回復を完遂して欲しいです。
おっしゃるようにメンタルはどのようにトレーニングをしていけばよいのか? これだけはトレーニングだけでは解決できない問題でしょうね。つまり生まれもったものもあると思いますので。バーディッチのように、いくら経験を積んでも最後にはビビってしまう選手もおりますから。
圭君がデルポ戦で、「全く勝てるイメージがわかなかった」と言っていたようですが、これは気になる言葉です。プランA がだめならプランB。それでもだめなら プランCと、作戦を変更できる柔軟性も大切です。しかし解説者も言ってましたが、実際分かっていてもなかなか自分のスタイルでない作戦は実行できないのだそうです。しかしフォアハンドでガンガン打ってくる選手には、もっとスライスをつかってもよいと思います。ウィナー狙いの攻撃テニスだけでなく、相手に気持ちよく打たせない幅のあるテニスができれば50番台に戻ることも可能かと思います。
圭クン残念でしたね。まだまだ課題は(伸びしろというのかな?)は沢山ありそうですね。
ところで、バグダティスとの試合中、圭クンの携帯電話が2度なったということで、日本でも「恥ずべきマナー違反」と取り上げられているようなのですが、海外でも何か言われていますか?
私自身もその記事は「は?そんなことあっていいの?」と思いましたが・・・。圭クンはパンツ換えといい、若干脇が甘いような気がします。若いという理由で許される年齢ではなくなってきているし、注目度も高くなっているので、ちょっとした事で話題になり可愛そうですが、この携帯は・・ちょっとね・・・。
「試合以前にも学ぶべきことはまだまだ多そうだ」と 記事にありましたがごもっともです。
携帯電話が鳴ったことは知りませんでした。日本の記事は読んでないので初めて知りました。海外ではフェデラーやナダルくらいのレベルにならないと、書いてくれませんので大丈夫です。(変な言い方ですが) 最近負けが続いてランキングも落ちてしまいましたので、あのティーンセンセーションという紹介もされなくなって寂しいです。やはり勝負の世界は勝たねば話題にもしてくれません。
私がUS Openのときに、「帽子やパンツの取り替えのためのトイレットブレークはおかしい」と書いてファンの方々からさんざん非難を受けました。しかし圭君が負けてくると彼に対する風当たりは強くなってきます。私はこの携帯はミスであって、これから気をつければよいことだと思います。うっかりしていたということは誰にもあるのですから。勝ってるときは批判をしてもよいと思いますが、負け続けているときはそれでなくても落ち込んで弱気になるものです。自信のなさが選手にとって最大の敵。デ杯で中国を撃滅して自信回復をしてほしいと願っています。
テニス観戦初心者の私にとって、スタッツの意味するところを詳しく読み取るのは
難しく、いつも??の状況でした。
1stの入りがよいのに相手のポイントに結びついてしまうのは
確かによほどサーブの内容がよくなかったんでしょうね。
いつもの圭くんはサーブのスピードがあまりないのに、コースが良かったりするので結構自分のポイントに結びついていました。まだまだ体調面でOKとはいっていないようです。
早くはつらつとした圭くんのプレーが見たいですね。
その日が近いうちにまた来ることを心から臨んでいます。
コメントありがとうございます。
びっくりしました!
実は私の先のコメントも、錦織君のDel Potro に対する『全く勝てるイメージがわかなかった』発言もイメージしながら書きました(ただ、当て推量ですが、この発言はどうも予め植えつけられている苦手意識が根底にあるような気もします。2試合の対戦ぶりからして)。
どうも自分の作戦が上手く行かないとき、「パニック」に陥り、なかなか抜け出せないように見えます。
しかしながら、彼にはやろうと思えば出来る「引き出し」が多い方であると私は思っています。
それを発揮できる場面が減っているのは、彼も研究される対象になってしまったからでしょうか。
『ウィナー狙いの攻撃テニス』(仰るとおり!)では読まれます。ミスを誘われます。「パニック」時には精度も落ちているので、デフレ・スパイラルへ。
『相手に気持ちよく打たせない』引き出しが使えるようになることを祈るばかりです。
(これがまた、自分もあまり気持ちよくなかったりするかも知れませんが)
人一倍の「負けず嫌い」精神で克服して欲しいです。
アドバイスありがとうございます☆今日はスクールのテニスがあったのですが、珍しくも 最後の15分(位かな?)をサービス練習に当ててくれました!しかし…一度フォームが崩れると駄目ですね。グリップの握り方までおかしくなる有り様で情けないです(T_T)tennisnakamaさんの仰る通り 練習あるのみですね!頑張ります!!
錦織君はデ杯で自信を取り戻して欲しいですね。もしかしたら 今が更なる飛躍への大きな壁なのかもしれません。これを乗り越えて また更なる高みへの昇る事を一ファンとして祈り、温かく見守っていきたいと思います☆ランキングがちょこっと下がっても気にしませんよ~(^-^)q
わたしのスクールのコーチは、サーブ練習にじっくり時間をかけてくれます。
おかげで、ゲームのときリズムがついてゲームの組み立てが楽になりました。
わたしでさえこう思うのですから、圭くんなんか効果抜群なんじゃないかしら!
スタッツから導き出された彼の課題。
ぜひ、彼と彼のコーチに伝えてあげたいです。
今後、サーブ強化することでランキング上昇が見られたらいいですね。
あとは、ラファとともに怪我の克服・・・!