2009年04月26日
フェレールがどこまでナダルを?
まもなくバルセロナ決勝、ナダルvsフェレールがはじまります。誰の目にもナダルの優勝は疑いなく、ナダル自身「今僕は最高の状態、I’m in best form, ever」なんて言っているくらいですから、一方的な決勝になるかも知れませんね。
さて、昨日のナダルvsダヴィデンコの準決勝ですが、ダヴィデンコが自分の最高レベルで試合を戦い続けることができなかったのが残念です。もし、彼がオンザライズで確実にサイドライン近くにナダルを左右に振り続けることができたとしたら? ダヴィデンコが100%のテニスをすれば、ナダルを打倒できたのかも知れませんが、これは非現実な話です。ナダルは80%の力で楽勝できる。それがナダルの強さでしょうか。
風をどのように利用するか、風に逆らったのがダヴィデンコでした。ナダルは不必要な走りやウィナーショットはできるだけ避け、堅実なプレーをしました。相手によって自分のプレーを調節。ブレークポイントなどレベルを上げなくてはならないときに、ウィナーショットやサーヴィスウィナーでポイントがとれる自信とメンタルの強さは、王者の貫禄とでもいいましょうか。
では今日の決勝でフェレールはどうすればナダルを倒すことができるか? 決勝前におさらいをしてみましょうか。
(1)チープポイント(簡単にとれるポイント)をとれるサーヴィス力があることが絶対条件。
エースやサーヴィスウィナーが多くとれないときびしい。フェレールは準決勝でゴンザレスと戦いましたが、第3セットに5-2の勝利寸前になりながら、ゴンザレスにタイブレークにされてしまったのは、サーヴ力の差と言ってよいと思います。5-3の第9ゲームでフェレールは自分のサーヴィスゲームを0-40で落としています。いくらメンタルが強くても、重要なポイントをサーヴで稼げなければブレークされてしまいます。
ナダルの武器はサーヴィスリターンです。よほどのサーヴをしないとサーヴィスゲームをホールドするのはむずかしいのです。現にダヴィデンコは1stサーヴの確率が84%(ナダルは67%)と圧倒的にナダルよりも高いのに得点が十分にできていないのは、サーヴは確率ではないことを示しています。ナダルからポイントをとるには、パワフルで、プレースメントがよく、スピンのきいたオールマイティーなサーヴでなければならないのです。この点でフェレールはまず失格です。
(2)オンザライズの確実なショット。
ナダルの足でも間に合わないショットを打つには、オンザライズで打つ必要があります。まずダヴィデンコのように、オンザライズで確実に両サイドライン近くにウィナーが打てる技術が必要。状況にもよりますが、ナダルのリーチはサイドラインの15cmくらいまでは全部とってしまいますので、ラインを狙っていかなければ試合をコントロールできない。ですから対戦相手にプレッシャーがかかり、無理なショットが増えてミスが多くなります。しかもオンザライズのショットは、タイミングが命ですので、バウンスがイレギュラーなクレーではミスする確率が多くなります。フェレールはカウンターパウンチャーですが、ゴンザレスとの試合ではオンザライズで打ってましたので期待ができるかも。
(3)ペースを変えてリズムを与えない。
ダヴィデンコの弱点は、マレーのようにペースを変えることなく、このオンザライズの一辺倒。これではいくらよいショットを打っても、ナダルにショットを読まれてしまいます。最近は両手バックハンドの選手が頻繁に片手バックでスライスを使っていますが、クレーではスピンが殺されてしまってハードほど有効ではありませんが、ペースを変える意味では重要なショットです。マレーがよく使うループボールが有効なので(ナダルをベースラインに止めておくことができる)もっと使ってもよいかと思います。ペースを変えるのはフェレールは得意ではありませんので、残念ですがこれも期待できません。
(4)ネットダッシュでヴォレーで決める。
相手に甘いカウンターショットを打たせる武器が必要ですが(例えばゴンザレスのパワフルなフォアハンド)、少しでも相手の球が浮いてくるとすかさずネットダッシュしてヴォレーで決められる技術が必要。ヴォレーが最もうまい選手としてステパネックがあげられますが、彼は元ダブルスの選手だっただけに、実に見事なヴォレーで決めます。ヴォレーは練習だけでは身に付かず(勘が必要)、ダブルスに出て磨かなければ上達しません。その意味でナダルは長年ダブルスに出場したかいがあって、彼のヴォレーの上達は目を見張るものがあります。フェレールの第2セットのカムバックを可能にしたのは、この攻撃的なネットプレーが大きな要因となっています。これはフェレールにもっとも期待できる攻撃プレーです。捨て身でかかれば意外と効果的かも。
(5)ナダルをベースラインより奥深く下がらせる。
ナダルにはショートボールは自殺行為です。チャンスを逃さず必ず叩かれウィナーとなってしまうので、ディープボールを打つことが絶対条件となります。ナダルの弱点は、相手にアグレッシヴに攻めてこられると、ベースラインから3mくらい下がってしまうこと。これだけ下がると彼は返球できますが、攻撃ができなくなります。そしてナダルの甘い球が返ってくる可能性が高くなります。ナダルを苦しませたのはべルダスコのオーストラリアン・オープン準決勝でした。べルダスコのベースライン近くに落ちるディープなストロークに、ナダルは苦戦を強いられ5セットまでもつれ込みました。 フェレールはベースライナーですので調子がよければ期待できそうです。
(6)安定したショット力と冷静なメンタル。
ダヴィデンコは準決勝でブレークチャンスを6回も得ながら1回もブレークできませんでした。これはつい力んでウィナーを狙いすぎたミスが多かったのですが、
ここぞというチャンスを逃してしまう選手が意外に多いことに気がつきます。チャンスをものにするには、冷静なメンタルと確実にポイントできるショット力が必要です。ナダルが大切なポイントでは、球の方向を変えずクロスを打ち続けるのは、このショットではミスをしない自信があるからです。コートがあれほど空いているのに、なぜオープンコートにダウンザラインで決めないか?とよく不思議に思いますが、自信のあるショットで決める方を選択しているのはある意味では賢明だと思います。(あまり同じパターンだと相手に読まれてしまいますが)
果たしてどれだけフェレールががんばってくれるでしょうか?
今からいよいよフェレールとの決勝が始まります。
パチパチパチ!
さて、昨日のナダルvsダヴィデンコの準決勝ですが、ダヴィデンコが自分の最高レベルで試合を戦い続けることができなかったのが残念です。もし、彼がオンザライズで確実にサイドライン近くにナダルを左右に振り続けることができたとしたら? ダヴィデンコが100%のテニスをすれば、ナダルを打倒できたのかも知れませんが、これは非現実な話です。ナダルは80%の力で楽勝できる。それがナダルの強さでしょうか。
風をどのように利用するか、風に逆らったのがダヴィデンコでした。ナダルは不必要な走りやウィナーショットはできるだけ避け、堅実なプレーをしました。相手によって自分のプレーを調節。ブレークポイントなどレベルを上げなくてはならないときに、ウィナーショットやサーヴィスウィナーでポイントがとれる自信とメンタルの強さは、王者の貫禄とでもいいましょうか。
では今日の決勝でフェレールはどうすればナダルを倒すことができるか? 決勝前におさらいをしてみましょうか。
(1)チープポイント(簡単にとれるポイント)をとれるサーヴィス力があることが絶対条件。
エースやサーヴィスウィナーが多くとれないときびしい。フェレールは準決勝でゴンザレスと戦いましたが、第3セットに5-2の勝利寸前になりながら、ゴンザレスにタイブレークにされてしまったのは、サーヴ力の差と言ってよいと思います。5-3の第9ゲームでフェレールは自分のサーヴィスゲームを0-40で落としています。いくらメンタルが強くても、重要なポイントをサーヴで稼げなければブレークされてしまいます。
ナダルの武器はサーヴィスリターンです。よほどのサーヴをしないとサーヴィスゲームをホールドするのはむずかしいのです。現にダヴィデンコは1stサーヴの確率が84%(ナダルは67%)と圧倒的にナダルよりも高いのに得点が十分にできていないのは、サーヴは確率ではないことを示しています。ナダルからポイントをとるには、パワフルで、プレースメントがよく、スピンのきいたオールマイティーなサーヴでなければならないのです。この点でフェレールはまず失格です。
(2)オンザライズの確実なショット。
ナダルの足でも間に合わないショットを打つには、オンザライズで打つ必要があります。まずダヴィデンコのように、オンザライズで確実に両サイドライン近くにウィナーが打てる技術が必要。状況にもよりますが、ナダルのリーチはサイドラインの15cmくらいまでは全部とってしまいますので、ラインを狙っていかなければ試合をコントロールできない。ですから対戦相手にプレッシャーがかかり、無理なショットが増えてミスが多くなります。しかもオンザライズのショットは、タイミングが命ですので、バウンスがイレギュラーなクレーではミスする確率が多くなります。フェレールはカウンターパウンチャーですが、ゴンザレスとの試合ではオンザライズで打ってましたので期待ができるかも。
(3)ペースを変えてリズムを与えない。
ダヴィデンコの弱点は、マレーのようにペースを変えることなく、このオンザライズの一辺倒。これではいくらよいショットを打っても、ナダルにショットを読まれてしまいます。最近は両手バックハンドの選手が頻繁に片手バックでスライスを使っていますが、クレーではスピンが殺されてしまってハードほど有効ではありませんが、ペースを変える意味では重要なショットです。マレーがよく使うループボールが有効なので(ナダルをベースラインに止めておくことができる)もっと使ってもよいかと思います。ペースを変えるのはフェレールは得意ではありませんので、残念ですがこれも期待できません。
(4)ネットダッシュでヴォレーで決める。
相手に甘いカウンターショットを打たせる武器が必要ですが(例えばゴンザレスのパワフルなフォアハンド)、少しでも相手の球が浮いてくるとすかさずネットダッシュしてヴォレーで決められる技術が必要。ヴォレーが最もうまい選手としてステパネックがあげられますが、彼は元ダブルスの選手だっただけに、実に見事なヴォレーで決めます。ヴォレーは練習だけでは身に付かず(勘が必要)、ダブルスに出て磨かなければ上達しません。その意味でナダルは長年ダブルスに出場したかいがあって、彼のヴォレーの上達は目を見張るものがあります。フェレールの第2セットのカムバックを可能にしたのは、この攻撃的なネットプレーが大きな要因となっています。これはフェレールにもっとも期待できる攻撃プレーです。捨て身でかかれば意外と効果的かも。
(5)ナダルをベースラインより奥深く下がらせる。
ナダルにはショートボールは自殺行為です。チャンスを逃さず必ず叩かれウィナーとなってしまうので、ディープボールを打つことが絶対条件となります。ナダルの弱点は、相手にアグレッシヴに攻めてこられると、ベースラインから3mくらい下がってしまうこと。これだけ下がると彼は返球できますが、攻撃ができなくなります。そしてナダルの甘い球が返ってくる可能性が高くなります。ナダルを苦しませたのはべルダスコのオーストラリアン・オープン準決勝でした。べルダスコのベースライン近くに落ちるディープなストロークに、ナダルは苦戦を強いられ5セットまでもつれ込みました。 フェレールはベースライナーですので調子がよければ期待できそうです。
(6)安定したショット力と冷静なメンタル。
ダヴィデンコは準決勝でブレークチャンスを6回も得ながら1回もブレークできませんでした。これはつい力んでウィナーを狙いすぎたミスが多かったのですが、
ここぞというチャンスを逃してしまう選手が意外に多いことに気がつきます。チャンスをものにするには、冷静なメンタルと確実にポイントできるショット力が必要です。ナダルが大切なポイントでは、球の方向を変えずクロスを打ち続けるのは、このショットではミスをしない自信があるからです。コートがあれほど空いているのに、なぜオープンコートにダウンザラインで決めないか?とよく不思議に思いますが、自信のあるショットで決める方を選択しているのはある意味では賢明だと思います。(あまり同じパターンだと相手に読まれてしまいますが)
果たしてどれだけフェレールががんばってくれるでしょうか?
今からいよいよフェレールとの決勝が始まります。
パチパチパチ!
投稿者 Tennisnakama 23:09 | コメント(5)| トラックバック(0)
Twitterでは、次週のローマの情報をガンガン入れておりますので、よかったら訪問してください。
http://twitter.com/tennisnakama
今日はNYはお天気は暑すぎるくらい。これから私は近くのセントラルパークで夫(テニスがうまくない)の相手をしてきます。
なかなかナダルの1st サーブ率が上がらなかったみたいですね。
やっぱナダル勝ったか、みたいな結果ですがフェレールのここまでの健闘をみて嬉しかったです。ナダルは不戦勝がありましたしね。
フェデカップでハンチュコヴァが頑張って、ワタシはとっても嬉しかったです。最後に5-0から戻して5-4までいった彼女のメンタルは確実に強くなっていると感じました。ワタシが今日のハンチュコヴァでとても印象的だったのはバックハンドでした。一番良いときの彼女のハンチュコヴァのバックハンド、振り抜くまでどっちのサイドに来るか判らないあのフォームが戻ってきたような気がします。コーチの問題やいろんなことで低迷していたけれど、このメンタル&フィジカルのアップで、これからもシングル、そしてダブルスと結果を残してゆく気がします。
メンタルの部分の影響って、意外にダブルス組んでた杉山愛の影響って大きい気がするんですよね。こういうダブルスを組む影響ってどうなんでしょう??? フェデラーとヴァブリンカは??? 杉山もタナスガーンと組みだしてメンタル強くなったような気がしますが...それがハンチュコヴァに影響してるような...tennisnakamaさん、その辺をぜひ解説してください。お願いします。
シングルスとダブルスの相互関係ですが、ダブルスで勝つとシングルスの試合に大きな影響を与えるか?については疑問です。勝てば多少の自信となるでしょうが、全くゲーム展開の違うテニスで、しかもパートナーあってのテニスですから。フェデラーとヴァヴリンカの金メダルは、一時的な効果があってもフェデラーにとっては真の意味での自信回復にはならなかったと思います。「メンタルが強くなる」についてですが、ダブルスのメンタルの強さはシングルスとは違います。パートナーの潜在力を最高に発揮できるようにセットアップしていくのがダブルスのメンタルです。相乗効果を上げられるかどうか、大切なのはチームワークのメンタリティーです。
ダブルスは狭いスペースに球を決めていかなくてはならないゲームですので、コート感覚が磨かれ、ショットの選択が明確になってきます。その意味でシングルスプレーヤーはダブルスがうまくなることによって、立体的なテニスを構成することができ大変プラスになります。なぜ今さかんにダブルスにシングルスプレーヤーが出場しているのか、これは攻撃的なテニスに必要なアプローチショットやヴォレーがうまくなるだけでなく、シングルスプレーヤーにとってはより複雑で高度なテニスのメカニズムが理解できるようになり、シングルスのゲームに反映してくるのだと思います。よい例がナダルです。昔の彼の単純なテニスから、最近は洗練されたゲームの組み立てができるのもダブルスの影響が大だと思います。
ダブルスを観る時にもっと注意してみます。
それから、誤字を直していただいてありがとうございます。