2009年06月03日
モメンタムのマジックとは
モメンタムMomentumという言葉があります。「勢い」という意味ですが、テニスにおいては「試合の流れ」とでも訳したらよいでしょうか。このモメンタムがいかに試合に大切であるか? モメンタムがいつシフトしてしまうのか? どうすればモメンタムを自分サイドにシフトさせて試合に勝つことができるのか?
フェデラーvsハースの5セットマッチでは、うまくモメンタムをつかんだのがフェデラー。モメンタムを失ったのがハース。意外と語られていないこのモメンタムについて述べてみたいと思います。
Federer def Haas: 6-7(4), 5-7, 6-4, 6-0, 6-2
2セットもとられたフェデラーに対して、マッケンローはI can’t believe it!と叫びました。さすが彼の有名な言葉、You can’t be serious! とは言いませんでしたが、これはテニスファンなら共通の思いだったのではないでしょうか。
フェデラーはあまりにもエラーが多すぎます。それも少しラインからはずれたようなエラーではなくて、空高く飛んでいくとんでもないホームラン。あれは一体どういうことなんでしょうね。マッケンローは「ラケットのスウィートスポットに当たらないと、クレーでは特にああいう当たりになることが多い」と言って異ましたが。でもクレーでなくてもハードでもフェデラーはあのホームランをよく打っています。
「ナダルが敗退してしまったことでプレッシャーはありませんか?」
記者会見で質問を受けたフェデラーは、「NO」と全仏優勝へのプレッシャーを否定していますが、ないはずがありません。しかもハースはサーヴもよくソリッドなプレーをしています。なかなかリズムが得られず、ぎくしゃくした感じのする2セットでした。
全豪のバーディッチ戦でみせた、あの2セットダウンからのカムバックをフェデラーが成し遂げることができるのか?
第2セットの12ゲーム(6-5)で、フェデラーはまたもやとんでもないミスヒットでブレークされてしまい、タイブレークのチャンスを逃してしまいました。思わずマッケンローは叫びます。「あれは一体なんなんだ! あんなショットはみたことがない!」
こんな不安定な感じで果たしてフェデラーはカムバックできるのか? 第3セットに入っても、ハースは崩れる様子がありません。しかし幸いなことにフェデラーのサーヴは崩れることがなく、サーヴィスゲースをホールドし続けます。
フェデラーとハースのモメンタムのシフトの過程
まずフェデラーのモメンタムのシフトが起こったのは第3セットの8ゲーム(4-3)フェデラーのサーヴィスゲームのときです。
2度もイージーミスをしてしまったフェデラーは30-40でブレークポイントを迎えます。ここでブレークされてしまっては、もうフェデラーがカムバックできるチャンスはほとんどなくなってしまいます。このブレークポイントはマッチポイントに等しい最も重要なキーモーメントです。
では第3セットで何がおきたのか?
Federer vs Haas
4-3 Federer’s serve
(1)ハースがセンターに。
フェデラーはバックで打たず回り込んでフォアの態勢に。
(ウィナーを狙うポジション。これでフェデラーはインサイドアウトとダウンザラインの二つのオプションを得ます)
(2)フェデラーが選んだのはインサイドアウト。ターゲットはハースのサイドラインとサーヴィスラインとの交差するTに。(リスクを負うガッツのあるメンタリティーが必要)
(3)この奇跡的なウィナーで会場は大歓声。「ロジャー!ロジャー!」今まで静かだった観客が熱狂的なフェデラー応援に。
(観客を巻き込むことが必要)
(4)ハースがロングのエラーでフェデラーをブレークすることができず。
(ラックも必要)
4-4 Haas’s serve
(5)40-15 ハースがネットにかけるエラー。
(6)40-30 ハースのダブルフォルト。
(7)40-40 ハースがウィナーの狙い過ぎでわずかにアウト
(8)40-ad ハースが大きくベースラインを超すロングのミスでブレークされる。
(フェデラーがモメンタムをシフトしかけたことで、ハースが焦って自分のモメンタムを自らギヴアップしてしまう)
モメンタムをシフトさせた後はふたたび相手に戻ってしまわないよう、そのバックアップがひつようです。フェデラーは冷静にエラーを減らす一方、ハースは逆に怒りと焦りで冷静さを失い、完全にモメンタムを失って、第4セットは0-6のラヴゲームで落としてしまいました。
マッケンローがマイクから「トイレに行け!」と何度もハースに呼びかけたのは、ハースが第5セットを勝つにはregroupするしか手段が残されていなかったのです。ハースは頭を冷やすためにトイレに行きましたが、すでにtoo lateでした。
一方的な第4ゲームでしっかりとリズムをつかんだフェデラーは、第5セットを6-2で勝ち取って、5セットマッチのドラマが終わりました。
このように両者のモメンタムに注意を払って観戦すれば、ますますテニスが面白くなります。いよいよフェデラーvsモンフィス戦が始まります。二人のどちらがモメンタムのマジックをうまく使って勝利を手にすることができるでしょうか? さあ力を入れて観戦です!
フェデラーvsハースの5セットマッチでは、うまくモメンタムをつかんだのがフェデラー。モメンタムを失ったのがハース。意外と語られていないこのモメンタムについて述べてみたいと思います。
Federer def Haas: 6-7(4), 5-7, 6-4, 6-0, 6-2
2セットもとられたフェデラーに対して、マッケンローはI can’t believe it!と叫びました。さすが彼の有名な言葉、You can’t be serious! とは言いませんでしたが、これはテニスファンなら共通の思いだったのではないでしょうか。
フェデラーはあまりにもエラーが多すぎます。それも少しラインからはずれたようなエラーではなくて、空高く飛んでいくとんでもないホームラン。あれは一体どういうことなんでしょうね。マッケンローは「ラケットのスウィートスポットに当たらないと、クレーでは特にああいう当たりになることが多い」と言って異ましたが。でもクレーでなくてもハードでもフェデラーはあのホームランをよく打っています。
「ナダルが敗退してしまったことでプレッシャーはありませんか?」
記者会見で質問を受けたフェデラーは、「NO」と全仏優勝へのプレッシャーを否定していますが、ないはずがありません。しかもハースはサーヴもよくソリッドなプレーをしています。なかなかリズムが得られず、ぎくしゃくした感じのする2セットでした。
全豪のバーディッチ戦でみせた、あの2セットダウンからのカムバックをフェデラーが成し遂げることができるのか?
第2セットの12ゲーム(6-5)で、フェデラーはまたもやとんでもないミスヒットでブレークされてしまい、タイブレークのチャンスを逃してしまいました。思わずマッケンローは叫びます。「あれは一体なんなんだ! あんなショットはみたことがない!」
こんな不安定な感じで果たしてフェデラーはカムバックできるのか? 第3セットに入っても、ハースは崩れる様子がありません。しかし幸いなことにフェデラーのサーヴは崩れることがなく、サーヴィスゲースをホールドし続けます。
フェデラーとハースのモメンタムのシフトの過程
まずフェデラーのモメンタムのシフトが起こったのは第3セットの8ゲーム(4-3)フェデラーのサーヴィスゲームのときです。
2度もイージーミスをしてしまったフェデラーは30-40でブレークポイントを迎えます。ここでブレークされてしまっては、もうフェデラーがカムバックできるチャンスはほとんどなくなってしまいます。このブレークポイントはマッチポイントに等しい最も重要なキーモーメントです。
では第3セットで何がおきたのか?
Federer vs Haas
4-3 Federer’s serve
(1)ハースがセンターに。
フェデラーはバックで打たず回り込んでフォアの態勢に。
(ウィナーを狙うポジション。これでフェデラーはインサイドアウトとダウンザラインの二つのオプションを得ます)
(2)フェデラーが選んだのはインサイドアウト。ターゲットはハースのサイドラインとサーヴィスラインとの交差するTに。(リスクを負うガッツのあるメンタリティーが必要)
(3)この奇跡的なウィナーで会場は大歓声。「ロジャー!ロジャー!」今まで静かだった観客が熱狂的なフェデラー応援に。
(観客を巻き込むことが必要)
(4)ハースがロングのエラーでフェデラーをブレークすることができず。
(ラックも必要)
4-4 Haas’s serve
(5)40-15 ハースがネットにかけるエラー。
(6)40-30 ハースのダブルフォルト。
(7)40-40 ハースがウィナーの狙い過ぎでわずかにアウト
(8)40-ad ハースが大きくベースラインを超すロングのミスでブレークされる。
(フェデラーがモメンタムをシフトしかけたことで、ハースが焦って自分のモメンタムを自らギヴアップしてしまう)
モメンタムをシフトさせた後はふたたび相手に戻ってしまわないよう、そのバックアップがひつようです。フェデラーは冷静にエラーを減らす一方、ハースは逆に怒りと焦りで冷静さを失い、完全にモメンタムを失って、第4セットは0-6のラヴゲームで落としてしまいました。
マッケンローがマイクから「トイレに行け!」と何度もハースに呼びかけたのは、ハースが第5セットを勝つにはregroupするしか手段が残されていなかったのです。ハースは頭を冷やすためにトイレに行きましたが、すでにtoo lateでした。
一方的な第4ゲームでしっかりとリズムをつかんだフェデラーは、第5セットを6-2で勝ち取って、5セットマッチのドラマが終わりました。
このように両者のモメンタムに注意を払って観戦すれば、ますますテニスが面白くなります。いよいよフェデラーvsモンフィス戦が始まります。二人のどちらがモメンタムのマジックをうまく使って勝利を手にすることができるでしょうか? さあ力を入れて観戦です!
投稿者 Tennisnakama 23:31 | コメント(17)| トラックバック(0)
フェデラーvsモンフィス戦。第1セットをタイブレイクで失ったモンフィスは、第2セットで集中を失ったようですね。第2セットのゲームでは第1セットのような緊張感を感じませんでした。
第3セットがどうなるか、じっくり見たいと思います。
Tennisnakamaさん、今日のモンフィス戦のフェデラーはどうでしたか?
私には『ロジャー・フェデラー』に見えました。
ロジャー、SF進出おめでとうー!がんばれー!! HOP ROGER!!!
私も皆さんのようなすばらしいreaderの方々にめぐりあえて幸せです。原稿に時間がかかることもありますが、じっくりと書いていきたいと思っていますので、今後ともよろしく。
TOMさん、
褒めていただいて本当に嬉しいです。調子者ですからよし、頑張ろうと元気がでてきます。むかし現役の頃、カレッジフットボールを追って全米をかけまわったこともあるんですよ。あのときはでも、よくルールがわからないでモメンタムどころじゃなかったです。(汗)
p.composeさん、
これで一安心ですね。でもデルポが調子がよく、マドリッドの敵を打とうと目を光らせていますので、まだちょっと心配。でも経験が助けると思いますので、フェデは決勝、そして優勝しますよ。
yamaさん、
ここでフェデラーvsモンフィスのモメンタムを考えてみたいと思います。(続く)
フェデラーvsモンフィス戦は第1セットのタイブレークがキーでした。
5-4:モンフィスはフェデの浮いた球をスマッシュしてアグレッシヴに
5-5:モンフィスはサーヴィスウィナーでセットポイントへ。モンフィスがギアアップ。
5-6: このセットポイントを落とすと、フェデは第1セットを落としてモンフィスにモメンタムを与えてしまう重要なポイント。しかしフェデはモンフィスのポジションを狂わせてforced errorをさそってデュースに。
6-6:フェデラーがサーヴィスウィナー
7-6:セットポイントをでフェデラーはアグレッシヴにネットダッシュ。ヴォレーでポイントを決めて第1セットをとりました。
どっちに転んでもおかしくなかった第1セットで、モメンタムのシフトをはかったのはフェデラー。それは一言でメンタルと表現してよいと思いますが、ショットの選択、ガッツ、そしてサーヴ力の総合力だったと思います。
一方、失望したモンフィスは、第2セットの初っぱなからブレークされ、それ以降はモメンタムをつかむチャンスを失ってしまいました。このようにあのタイブレークが、いわゆるdecisive moment決定的瞬間となりました。フェデラーはモンフィスのテニスを知っていますので、それ以降は自分のモメンタムをキープにゆとりがでていました。(モンフィスのテニスとは、リズムにのっているときは手がつけられないほどすごいが、のっていないときはディフェンシヴでミスがふえる。)
No.1,3,4 のプレーヤーがいない中で 優勝しても 運がよかっただけ、と言われるだけだと思う。そんなこと思ってるの 私だけかな? フェデラーには ナダルと 去年のウィンブルドンみたいなすごい試合をして、 そして 勝ってほしいのです! 時間がたつと みんな 内容を忘れて、 クレイで優勝した、 ということだけが残るから、 やっぱり、 どうしても 優勝したいだろうな。
男子は層が厚くて、 20~30位のランクだったら、 誰でも勝つチャンスがあるんですね。 それと話は変わりますが、 だいぶ前にクライチェックが 男子と女子の賞金には 差があって 当然、と言うコメントをして、 キングやクリスエバートから 総攻撃をうけました。 あれは 多くの人が内心は同意してるけど、 怖くて言えなかったことだと 思います。 わたしは 賞金は 基本的には同じでいいと思いますが、 短い女子の試合をみてると、 楽チンでいいな~とも 思います。
私もTVで一部始終拝見してましたが、これほどリズムと流れが明らかに変わった試合はそう無いのではと感じた試合でした。第3セットの途中まで完璧に押してたハースがラブゲームとは・・・。
単純な質問ですが、最近のフェデラーの戦いにハラハラさせられるのはどうしてでしょうか?tennisnakamaさんの分析は?
勝負師とはいい表現ですね。試合は勝負なのですから彼らはすべて勝負師。彼らに必要な勝負師としての勘、つまりどこで押してどこで引く。この勘はなかなか学習できない天性の領域ですよね。アメリカは今ポーカーが大流行(Texas Holdemというスタイル)していてTVで毎晩流してなかなか面白い。(関係ないか)
toranekoさん、
フェデラーのインターヴューからはナダルがいようといないとタイトルはタイトル、是が非でもとりたいみたいですよ。パリの街を歩くと、皆がよってきて「今年はロジャーの年、頑張れー」と言ってくれるのだそうです。それはすごい人だかりでフェデラーも絶対今年は頑張るんだと言ってました。
ハラハラしてしまう理由としては、フェデラーがすんなり勝てないからで、大きく分けて3つの理由が考えられると思います。(1)なかなか自分のリズムを見いだせない。(2)どこでエラーをおかすか分からない。(3)負けてくるといつメンタルのメルトダウンがくるか分からない。つまり予期できない不安な材料が多いということではないでしょうか。(1)リズムの問題ですが、フェデラーはこの全仏はとても緊張することが多いと言ってました。プレッシャーが大きくて体が固くなってます。(2)エラーですが、モノや腰痛のために長期にわたって十分なトレーニングができなかったことによる弊害(フットワークと反応の遅さ)が、ヒッティングのタイミングを失わせる原因の一つになっていると思います。(3)メンタルが崩れてしまうことがあるのは、自分のテニスに自信がもてないからでしょうね。
さて、準決勝ですがデルポはいい線をいくと思いますが、まだまだフェデラーを尊敬しすぎて勝てないと思います。決勝ですが、ソダリングは未知数で危ない。ゴンゾー(ゴンザレスのニックネーム)なら勝てる。フェデがプレッシャーに負けなければ優勝するでしょうね。
もう運が良くても何でもいいんです(笑)やっぱり今のフェデラーには一つ一つ「勝つ」ということが必要なのだと思います。マイアミでしたでしょうか、彼が「もう20試合も勝ててないんだ、僕が勝つことなんて誰も期待してないよ」なんて言った時は正直そこまで思っているのかとショックでした。 WBもAOも、素晴らしい試合をしたと讃えられましたが、後に残ったのは「負け」という現実、大観衆の中悔し涙を流した彼が一番その「現実」を痛いほど分かっているのではないかと思います。
SFに残った誰もがとても素晴らしいパフォーマンスをしています。運やまぐれだけじゃなく実力を存分に発揮している選手ばかり。本当にだれが優勝してもおかしくないです。だからこそロジャーにもその中の一人に残っていることを誇りに思っててほしいし、次の試合に全力で向かってほしいです。
panさん、ええこと言いまんなぁ~その通りでっせっ!!ファンの鏡やっ!!
なんだか救われました!感動しました!ありがとうございました。
いただきます。コールのことですが、1回目のデュースの時は、
「エガリテ」とは言わずに、40-40的なことを言っていませんか?
2回目のデュースからは「エガリテ」と言っているようなのですが、
これは何か理由があるのでしょうか?それとも、私の耳がおかしい!?