2009年09月11日
フェデラーがなぜ強い?
Federer def Soderling: 6-0, 6-3, 6-7(6), 7-6(6)
風がどんどん強くなって寒くなってきました。最初の第2セットは、解説者もフェデラー自身も言っているように、「完璧なテニス」をフェデラーが見せてくれました。特にベーグルで終えた第1セットは、ビデオの教材のようでした。
第1・2セット
フェデラーのアグレッシヴなテニスを満喫できました。まずラケットスピードが数段に上がっています。生でみているとときどき球が見えないくらいフラット気味でコーナーをつき、夢のようなショットの展開でした。
そしてどんなに振られても、体の軸が崩れていないので、カウンターショットがしっかりと打てること。そしてリカヴァリーが実に速い。このリカヴァリーの速度は Soderling ソダーリング(これは英語読みです)とはくらべものになりませんでした。これはまさにフェデラーのアスレティシズムが卓越しているかを物語っていて、ポイントごとにお見事!の拍手でしたが、これは教材ビデオではありませんので、試合としてはつまらなく、正直言ってあまりにも寒いので、早く試合が終わってほしいと心の中では願っておりました。(もちろんフェデラーが勝ってもらってですが)
観客もちょっと退屈したのでしょうね。プラスティックのバッグ(スーパの薄い袋)が舞い上がる。ティッシュペーパーが舞い上がる。困ったことに面白がって飛ばす人間がいるのですね。そしてそれらをキャッチした人に拍手が湧くなど、あまりにもフェデラーが一方的なので、観客のフォーカスもそれてしまったようでした。「フェデラー!」「ソダーリング!」など声も滅多にあがらず、盛り上がりに欠け、私たちはチケット代損したかな、という気持ちもありました。
第3・4セット
インドアでは誰にも負けないソダーリングですが、風が強い日はやはり影響を受けてしまうようです。前半は風が強くサーヴがうまく入らなかったソダーリングでしたが、後半から風も静まりサーヴが入るようになり、それとともに彼のパーフォーマンスもアップしてきました。今まで不安定だった武器のフォアでポイントを決められるようになり、アグレッシヴなネットプレーをむずかしくさせられたフェデラーは少しディフェンシヴになってきました。
第3セットをタイブレークでフェデラーから奪い、しかも第4セットでもタイブレークの接戦で、危うく第5セットかと思わせるほどのソダーリングのパーフォーマンスは、スリルのあるゲーム展開で私たちは大満足でした。
ソダーリングの調子が上がってきた原因は何だったのしょう?
ソダーリングのコメント
「最初の2セットが余りにも悪すぎた。だからもう失うものはないと思って、ミスを覚悟で思い切り打つことにしたんだ。それと風がおさまってきたことも僕にとってはプラスだった。前半は風が強くて、サーヴがうまく入らなかったが、後半から入り出した。しかしフェデラーにとって風は関係ないみたいだったね。彼ほど風に左右されない選手は知らないよ。」
フェデラーのコメント
「僕のパーフォーマンスが落ちてきたわけではなく、彼が調子を上げてきたことがこの結果となった。第3セットから、ソダーリングはこれ以上失うものはないという感じでバンバン打ってきて、そのショットが入りだした。そうすると普段はエラーが出るショットも入ってくる。彼の武器のフォアが安定してきて、しかも彼のバックハンドのプレースメントがよかった。」
ジミー・コナーズのコメント
「ソダーリングのパーフォーマンスに大きなショックを受けたよ。前半は調子が出なかったが、後半で彼がいかにすばらしいテニスができるかを彼は証明した。彼は誰でも倒すことができる選手であることを実証した。第4セットは彼が勝ってもおかしくないテニスだったので、このフェデラー戦は彼に大きな自信を与えたと思う。」
まさにコナーズの言うとおり、ソダーリングは記者会見で「僕はフェデラーに勝つ自信がある」と豪語しました。Yeah, sure. I'm pretty sure that I can beat him.
しかしフェデラーとソダーリングの差はまだ大きいと思います。
最初の2セットはソダーリングのバックハンドへの攻撃が多かったフェデラーですが、第4セットのタイブレークでは、フェデラーはソダーリングのフォアに賭けました。ソダーリングは恐るべきフォアの武器を持っていますが、一発勝負を狙ったきわどいショットを狙ってくるので、たとえフォアでウィナーになる可能性があっても、エラーになる確率が高いことを知っていました。しかしソダーリングのバックハンドは確実に返してきますので、確率から言えばファオで勝つ方が高いとフェデラーと判断して、ソダーリングのフォアに賭けました。
テニスは確率のスポーツです。特にタイブレークのようなシチュエーションでは、ソダーリングのgo-for-itのリスクのあるプレーは、やってよいときとやってはいけないときがあります。たったの1ポイントの差というのは、大変むずかしいポイントの取り方です。
フェデラーがなぜ強いか?
今日の試合を観戦していても言えることは、サーヴで苦境を救えること。そしてショットの選択が卓越していることです。サーヴの達人は多いですが、ショットの選択の達人はなかなかおりません。このコンビネーションがフェデラーをチャンピオンにし、ソダーリングがまだGSのタイトルをとれない理由の一つだと思います。
サーヴ+フォアハンドの武器+フットワーク+ネットプレー+メンタル+作戦+状況判断(ショットの選択)+フィットネスなどの総合点からみれば、やはりフェデラーとナダルが他の選手をかなり離していると思います。(ナダルはサーヴとネットプレーではフェデラーに劣りますが)
ですからソダーリングは「僕はフェデラーに勝つことができる」という自信も、これらの総合点があがれば実現するかもしれませんが、今の段階ではまだ無理なのでは。(ソダーリングのファンには申し訳ないですが)
Wozniacki def Oudin: 6-2, 6-2
このスコアからはウダンの完敗のようにみえますが、17歳のウダンは最後までガッツのあるテニスをしました。今ではマスコミやファンに追っかけられ、セキュリティーも必要になるほど人気スターになってしまったウダンは、徐々にプレッシャーが襲ってきたのかもしれません。
今までにない苛つきをみせて(これは勝たなくてはならないというプレッシャーが大きく影響)エラーが多くなってしまいました。ウォズニアッキWozniackiはカウンターパンチャーのチャンピオンです。どんなショットを打っても返ってきます。これは対戦相手にとって無理なショットを強いられるため、エラーが増えることになり、ウダンは武器のフォアが入らず、ますます焦ってしまったということでしょうか。
しかしまだ17歳。しかも小柄で(エナンとおなじ168cm)あれだけのファオのショットが打てるのは見事です。またショットを混ぜてゲームを組み立てていくインテリジェンスのあるテニスもできます。あとはフォアとバックでダウンザラインでウィナーがとれること。彼女のテニスは日本テニスにとって研究対象になるテニスですので、これからが楽しみな選手です。
(追記1)
「選手名を正しく呼ぼう」の運動をしていますが、どうしても本人が自分の名前を言っているケースが少ないので、ウダンのように分かっている場合はともかく、分からない場合はアメリカ/イギリスの放送が圧倒的に多いので、英語圏で呼ばれている呼び方を採用しています。ですからClijstersの場合はクライスターズと書いています。しかしあまりにも日本での呼び方と違う場合は、スペルを付け加えるようにして、アルファベットでサーチができるようにすることにしました。
(追記2)
このブログはあくまでもtennisnakamaの意見です。データ、解説者の発言、自分のテニス経験などを総合して分析しておりますが、あくまでも私個人の意見であることをご了解ください。
風がどんどん強くなって寒くなってきました。最初の第2セットは、解説者もフェデラー自身も言っているように、「完璧なテニス」をフェデラーが見せてくれました。特にベーグルで終えた第1セットは、ビデオの教材のようでした。
第1・2セット
フェデラーのアグレッシヴなテニスを満喫できました。まずラケットスピードが数段に上がっています。生でみているとときどき球が見えないくらいフラット気味でコーナーをつき、夢のようなショットの展開でした。
そしてどんなに振られても、体の軸が崩れていないので、カウンターショットがしっかりと打てること。そしてリカヴァリーが実に速い。このリカヴァリーの速度は Soderling ソダーリング(これは英語読みです)とはくらべものになりませんでした。これはまさにフェデラーのアスレティシズムが卓越しているかを物語っていて、ポイントごとにお見事!の拍手でしたが、これは教材ビデオではありませんので、試合としてはつまらなく、正直言ってあまりにも寒いので、早く試合が終わってほしいと心の中では願っておりました。(もちろんフェデラーが勝ってもらってですが)
観客もちょっと退屈したのでしょうね。プラスティックのバッグ(スーパの薄い袋)が舞い上がる。ティッシュペーパーが舞い上がる。困ったことに面白がって飛ばす人間がいるのですね。そしてそれらをキャッチした人に拍手が湧くなど、あまりにもフェデラーが一方的なので、観客のフォーカスもそれてしまったようでした。「フェデラー!」「ソダーリング!」など声も滅多にあがらず、盛り上がりに欠け、私たちはチケット代損したかな、という気持ちもありました。
第3・4セット
インドアでは誰にも負けないソダーリングですが、風が強い日はやはり影響を受けてしまうようです。前半は風が強くサーヴがうまく入らなかったソダーリングでしたが、後半から風も静まりサーヴが入るようになり、それとともに彼のパーフォーマンスもアップしてきました。今まで不安定だった武器のフォアでポイントを決められるようになり、アグレッシヴなネットプレーをむずかしくさせられたフェデラーは少しディフェンシヴになってきました。
第3セットをタイブレークでフェデラーから奪い、しかも第4セットでもタイブレークの接戦で、危うく第5セットかと思わせるほどのソダーリングのパーフォーマンスは、スリルのあるゲーム展開で私たちは大満足でした。
ソダーリングの調子が上がってきた原因は何だったのしょう?
ソダーリングのコメント
「最初の2セットが余りにも悪すぎた。だからもう失うものはないと思って、ミスを覚悟で思い切り打つことにしたんだ。それと風がおさまってきたことも僕にとってはプラスだった。前半は風が強くて、サーヴがうまく入らなかったが、後半から入り出した。しかしフェデラーにとって風は関係ないみたいだったね。彼ほど風に左右されない選手は知らないよ。」
フェデラーのコメント
「僕のパーフォーマンスが落ちてきたわけではなく、彼が調子を上げてきたことがこの結果となった。第3セットから、ソダーリングはこれ以上失うものはないという感じでバンバン打ってきて、そのショットが入りだした。そうすると普段はエラーが出るショットも入ってくる。彼の武器のフォアが安定してきて、しかも彼のバックハンドのプレースメントがよかった。」
ジミー・コナーズのコメント
「ソダーリングのパーフォーマンスに大きなショックを受けたよ。前半は調子が出なかったが、後半で彼がいかにすばらしいテニスができるかを彼は証明した。彼は誰でも倒すことができる選手であることを実証した。第4セットは彼が勝ってもおかしくないテニスだったので、このフェデラー戦は彼に大きな自信を与えたと思う。」
まさにコナーズの言うとおり、ソダーリングは記者会見で「僕はフェデラーに勝つ自信がある」と豪語しました。Yeah, sure. I'm pretty sure that I can beat him.
しかしフェデラーとソダーリングの差はまだ大きいと思います。
最初の2セットはソダーリングのバックハンドへの攻撃が多かったフェデラーですが、第4セットのタイブレークでは、フェデラーはソダーリングのフォアに賭けました。ソダーリングは恐るべきフォアの武器を持っていますが、一発勝負を狙ったきわどいショットを狙ってくるので、たとえフォアでウィナーになる可能性があっても、エラーになる確率が高いことを知っていました。しかしソダーリングのバックハンドは確実に返してきますので、確率から言えばファオで勝つ方が高いとフェデラーと判断して、ソダーリングのフォアに賭けました。
テニスは確率のスポーツです。特にタイブレークのようなシチュエーションでは、ソダーリングのgo-for-itのリスクのあるプレーは、やってよいときとやってはいけないときがあります。たったの1ポイントの差というのは、大変むずかしいポイントの取り方です。
フェデラーがなぜ強いか?
今日の試合を観戦していても言えることは、サーヴで苦境を救えること。そしてショットの選択が卓越していることです。サーヴの達人は多いですが、ショットの選択の達人はなかなかおりません。このコンビネーションがフェデラーをチャンピオンにし、ソダーリングがまだGSのタイトルをとれない理由の一つだと思います。
サーヴ+フォアハンドの武器+フットワーク+ネットプレー+メンタル+作戦+状況判断(ショットの選択)+フィットネスなどの総合点からみれば、やはりフェデラーとナダルが他の選手をかなり離していると思います。(ナダルはサーヴとネットプレーではフェデラーに劣りますが)
ですからソダーリングは「僕はフェデラーに勝つことができる」という自信も、これらの総合点があがれば実現するかもしれませんが、今の段階ではまだ無理なのでは。(ソダーリングのファンには申し訳ないですが)
Wozniacki def Oudin: 6-2, 6-2
このスコアからはウダンの完敗のようにみえますが、17歳のウダンは最後までガッツのあるテニスをしました。今ではマスコミやファンに追っかけられ、セキュリティーも必要になるほど人気スターになってしまったウダンは、徐々にプレッシャーが襲ってきたのかもしれません。
今までにない苛つきをみせて(これは勝たなくてはならないというプレッシャーが大きく影響)エラーが多くなってしまいました。ウォズニアッキWozniackiはカウンターパンチャーのチャンピオンです。どんなショットを打っても返ってきます。これは対戦相手にとって無理なショットを強いられるため、エラーが増えることになり、ウダンは武器のフォアが入らず、ますます焦ってしまったということでしょうか。
しかしまだ17歳。しかも小柄で(エナンとおなじ168cm)あれだけのファオのショットが打てるのは見事です。またショットを混ぜてゲームを組み立てていくインテリジェンスのあるテニスもできます。あとはフォアとバックでダウンザラインでウィナーがとれること。彼女のテニスは日本テニスにとって研究対象になるテニスですので、これからが楽しみな選手です。
(追記1)
「選手名を正しく呼ぼう」の運動をしていますが、どうしても本人が自分の名前を言っているケースが少ないので、ウダンのように分かっている場合はともかく、分からない場合はアメリカ/イギリスの放送が圧倒的に多いので、英語圏で呼ばれている呼び方を採用しています。ですからClijstersの場合はクライスターズと書いています。しかしあまりにも日本での呼び方と違う場合は、スペルを付け加えるようにして、アルファベットでサーチができるようにすることにしました。
(追記2)
このブログはあくまでもtennisnakamaの意見です。データ、解説者の発言、自分のテニス経験などを総合して分析しておりますが、あくまでも私個人の意見であることをご了解ください。
投稿者 Tennisnakama 00:57 | コメント(6)| トラックバック(0)
もう記事アップしてくださったんですね。お疲れのところありがとうございます。
ロジャーvsソダーリングの際、WOWOWの解説者が「ソダーリングはロジャーのボディを狙ったサーブを使う作戦のようです」と言っていましたが、やはり風が強くてうまくいかず、さらにロジャーの調子が良すぎて太刀打ちできなかったようですね。まだに教材ビデオのようでした(笑)。でもそこで開き直った(?)ソダーリングの強さは本当に怖いくらいでしたが、総合点でソダーリングを上回っているロジャーに勝つのはもう少し先になりそうですね(ソダーリングファンの皆様ごめんなさい)。
それからウダンもTennisnakamaさんのおっしゃるように、劣勢になった状況でも、前向きにゲームを組み立てるべくよく考えたプレーをしているように見えました。今回はウォズニアッキの粘りに負けてしまいましたが、本当にこれからが楽しみですね。
さあ、DAY11は男子QFの残り2戦です。もちろんしっかり観戦します。
段々ソダーリングがフェデラーに迫って来ているのは感じますね。デルポトロ、チリッチと言った若手も怖い存在ですが、フェデラーのメンタルも復活したと信じたいです。wowow のインタヴューでも又「子供達にゲームを見せたい、テニスと家庭のバランスを取ってこれからも長くプレーしたい」とのことなので、フェデラーの今後の長い活躍を期待しています。だけどまずは、US 優勝 。
ソダーリングに今回欠けていたことが顕著に感じられたものは、決定的なポイントを取りに行く時のメンタル・タフネス。
自分の、そして、相手のセット・ポイントにおいて、チャンス・ボールを何れも unforced error としてしまいました。ちびった、という感じで。
その点以外は、かなり互角に張り合っていたと思いました。
改善されると top 10 入り間違いないという印象です。
メンタルという魔法の言葉は、何にでも使えて便利ですが、では具体的にどういうことなのか?これは便利なだけにあいまいな表現で、私は意識的に使わないようにしています。
もしメンタルが私たちがイメージしている、集中力、タフさ、信念、ガッツなどを意味しているのなら、トップ選手なら誰でも備えていると思います。ではマッチポイントがとれる選手となかなか取れない選手の違いは?モメンタムのシフトがはかれる選手とはかれない選手とは?
メンタルといわれている以外に、脳のメモリーと身体のマッスルメモリーに関係あるのではないかと思っています。このメモリーがちぐはぐであれば、なかなかリズムをつくりだすことがむずかしい。自信がなくなればこのメモリーが怪しくなる。メンタルとはそのメモリーを一体化する能力ではないかと思うのです。フェデラーやデルポがブレークポイントでエースがとれる、これはどういうことなのか? なぜ彼らにできて他の選手になかなかできないことなのか? 最近この問題に興味があり、私なりにリサーチしてみたいと思っています。
わたしはロジャーファンであると同時にソダーリングのファンなので、これまでも非常に競っていながらどうしても取りきれない(これまで取ったセットが2つのみ)理由がなになのか、とても興味があります。
単なるイメトレではなく、身体にも勝負時のサービスエースの記憶が刻み込まれているがゆえに、非常に高い確率で再現できる、ということでしょうか?(すみません、理解不足かもしれませんね。。)
リサーチの結果を、心待ちにしています!