2009年10月21日
ダヴィデンコにみる未来のテニス
Davydenko def Nadal Shanghai Final: 7-6(3), 6-3
SFで死闘のすえフルセットでジョコヴィッチを打倒したダヴィデンコを観て、もし彼にエネルギーが残っていればナダルに勝てる。それどころか、今のダヴィデンコは誰にも負けないのでは? その予感が当たって、ダヴィ(ダヴィデンコのニックネーム)は、上海マスターズでナダルを2セットで破り優勝をとげました。
しかもダヴィはナダルよりも26も多い35のウィナーで、ガンガンと攻めまくるスピーディでダイナミックなテニスを堪能させてくれました。
昨年のマイアミ決勝を思い出します。まったくナダルに追随を許すことなく、圧倒的な強さで勝ったダヴィのテニスに痛く感動して、その後何度か「ナダルを打倒するテニス」「日本選手の未来のテニス」というテーマで、彼のプレースタイルを書いてきました。
未来のテニスとは? ソダーリングやデルポトロに代表されるパワーテニスが主流となりつつある現代テニスですが、それに対抗するテニスとして、ダヴィデンコに代表されるオンザライズ・テニスに注目したいと思います。
ここで彼のスレースタイルの根本である「オンザライズ」のショットについて述べてみたいと思います。(ダヴィには、その他にも俊足、バックハンド、などの武器がありますが、ここでは省略します。)
オンザライズとは
オンザライズとは、球がバウンスした直後に打つショットですが、アガシがこのショットで有名です。彼は3歳のときからテニスを始めましたので、背丈があまりにも小さく、球が落ちた瞬間に打たなければ高く飛び跳ねしまい打てないことから、このプレースタイルを身につけるようになりました。
このショットはタイミングが命。ジュニアの段階でマスターしなければ、タイミングを習得するのは大変むずかしく、ぜひ日本のコーチはベースラインから下がらず打つ練習をプログラムに取り入れてほしいと思います。このショットを習得するといろんなメリットがついてくるのです。
つねにフォーワード・モーション Forward Motion 前進移動
ダヴィの体格は現在の日本選手の体格(178cm 70kg)です。しかし彼のストロークをみていると、ジョコヴィッチやナダルよりもスピードがありペースがあるように見えます。
いわゆる英語ではpenetrating shotと呼ばれているストロークですが、これはフラット気味で速度が速く、しかもバウンドした後にも加速して向かってくるようなショットです。ナダルは足がありますので左右に振っても追いつかれることがありますが、ダヴィのよく使うショットは、ナダルのボディー狙いのショットです。ナダルは深く突き刺さるボディーショットには、身動きがとれず(Jammed) 、球を上げてしまうかネットにかけてしまうかになります。
ではこのpenetrating shotをどうしたら生み出すことができるか?
フォーワード・モーションで球を打つ。
小柄な選手にはどうしてもソダーリングやデルポトロのようなパワーショットは無理ですが、それに近いショットを打つ事ができます。それは振り切って打つときに同時に前進するのです。これはどうすれば身につけられるか? 経験上、オンザライズで打つ練習をすると、自然に身に付いてくるショットのようです。
オンザライズでは相手のスピードに負けずに打ち返さなければなりません。それにはコンパクトスウィングでラケットスピードを増さなければ、打ち負かされてしまいます。スピードを増すためには、打つ瞬間に体ごと前進して勢いを増さなければ、オンザライズのショットは打てないのです。何度もオンザライズで練習していると、打つタイミングとフォーワード・モーションが身に付いてきます。
しかしダヴィの偉大な点はオンザライズでプレースメントができる点です。これはもう天才しか許されないようなショットですので、私たちが真似をするのは非現実ですが、オンザライズで打つ事がいかに私たちのテニスでも有効であるかは、「時間を与えない」という点です。ナダルがいくら足が速くても追いつく時間を与えてもらえないのです。これがダヴィのテニスの原点だと言えます。
ベースラインの前で打つ超アグレッシヴなテニス
オンザライズで打つにはベースラインぎりぎりのポジションで打たなければなりません。
ナダルとの決勝を観てもダヴィは終始主導権をとってゲームを展開していました。ダヴィのような速攻アグレッシヴ選手には、ナダルのようなベースラインから深く下がってしまったディフェンス選手は格好の餌食となってしまいます。
第2セットの5ゲーム目(22)では惜しくもナダルがブレークチャンスを落としてしまいました。この時点での二人のヒッティング・ポジションは以下の通りで、大きな違いがあることが分かります。
ナダル: 3%(ベースラインの内側)97%(ベースラインから下がる)
ダヴィデンコ:53%(ベースラインの内側)47%(ベースラインから下がる)
ナダルはもう完全にベースラインから下がってしまって、打ち込まれる隙をダヴィに与えてしまっています。
逆にダヴィは恐ろしくも半分以上が、入ってはいけないと言われるノー・マンズ・ランドNo Man’s Land(日本ではデッドゾーン)。
もしナダルがディープなショットを打てば、ダヴィは前進してノーバウンドで打ち返しています。さらに前進できるときは、ドライヴヴォレーでウィナーです。このドライヴヴォレーはダヴィの武器の一つでもありますが、このショットでウィナーをとられると打撃が大きいのです。
全試合を通しても、ナダルはネット・ポイント・ウォンNet Point Won(ネットで得点したポイント)はわずか5ポイント。しかしダヴィは12ポイントも取得しています。いかにダヴィのプレースタイルがいつもフォーワード・モーションで、ネットダッシュが自然にできる態勢にあるかを示しています。
面白いことに、アグレッシヴなダヴィは、同じくアグレッシヴなフェデラーには一度も勝てていません。以下がトップ4との過去の対戦成績です。
ダヴィデンコ対フェデラー:0勝12敗
ダヴィデンコ対ナダル:3勝4敗
ダヴィデンコ対マリー:4勝5敗
ダヴィデンコ対ジョコヴィッチ:2勝2敗
しかしオンザライズがそれほど効果をなさないのはスローなクレーです。ダヴィの勝利はすべてハードコートです。しかし小型選手にとってはクレーで勝てなくても、まず大型のパワーに対抗できる技術を身につけることが先決問題。ダヴィに従え!アジア選手にとっては、未来テニスはこれしかない!と思うのです。
SFで死闘のすえフルセットでジョコヴィッチを打倒したダヴィデンコを観て、もし彼にエネルギーが残っていればナダルに勝てる。それどころか、今のダヴィデンコは誰にも負けないのでは? その予感が当たって、ダヴィ(ダヴィデンコのニックネーム)は、上海マスターズでナダルを2セットで破り優勝をとげました。
しかもダヴィはナダルよりも26も多い35のウィナーで、ガンガンと攻めまくるスピーディでダイナミックなテニスを堪能させてくれました。
昨年のマイアミ決勝を思い出します。まったくナダルに追随を許すことなく、圧倒的な強さで勝ったダヴィのテニスに痛く感動して、その後何度か「ナダルを打倒するテニス」「日本選手の未来のテニス」というテーマで、彼のプレースタイルを書いてきました。
未来のテニスとは? ソダーリングやデルポトロに代表されるパワーテニスが主流となりつつある現代テニスですが、それに対抗するテニスとして、ダヴィデンコに代表されるオンザライズ・テニスに注目したいと思います。
ここで彼のスレースタイルの根本である「オンザライズ」のショットについて述べてみたいと思います。(ダヴィには、その他にも俊足、バックハンド、などの武器がありますが、ここでは省略します。)
オンザライズとは
オンザライズとは、球がバウンスした直後に打つショットですが、アガシがこのショットで有名です。彼は3歳のときからテニスを始めましたので、背丈があまりにも小さく、球が落ちた瞬間に打たなければ高く飛び跳ねしまい打てないことから、このプレースタイルを身につけるようになりました。
このショットはタイミングが命。ジュニアの段階でマスターしなければ、タイミングを習得するのは大変むずかしく、ぜひ日本のコーチはベースラインから下がらず打つ練習をプログラムに取り入れてほしいと思います。このショットを習得するといろんなメリットがついてくるのです。
つねにフォーワード・モーション Forward Motion 前進移動
ダヴィの体格は現在の日本選手の体格(178cm 70kg)です。しかし彼のストロークをみていると、ジョコヴィッチやナダルよりもスピードがありペースがあるように見えます。
いわゆる英語ではpenetrating shotと呼ばれているストロークですが、これはフラット気味で速度が速く、しかもバウンドした後にも加速して向かってくるようなショットです。ナダルは足がありますので左右に振っても追いつかれることがありますが、ダヴィのよく使うショットは、ナダルのボディー狙いのショットです。ナダルは深く突き刺さるボディーショットには、身動きがとれず(Jammed) 、球を上げてしまうかネットにかけてしまうかになります。
ではこのpenetrating shotをどうしたら生み出すことができるか?
フォーワード・モーションで球を打つ。
小柄な選手にはどうしてもソダーリングやデルポトロのようなパワーショットは無理ですが、それに近いショットを打つ事ができます。それは振り切って打つときに同時に前進するのです。これはどうすれば身につけられるか? 経験上、オンザライズで打つ練習をすると、自然に身に付いてくるショットのようです。
オンザライズでは相手のスピードに負けずに打ち返さなければなりません。それにはコンパクトスウィングでラケットスピードを増さなければ、打ち負かされてしまいます。スピードを増すためには、打つ瞬間に体ごと前進して勢いを増さなければ、オンザライズのショットは打てないのです。何度もオンザライズで練習していると、打つタイミングとフォーワード・モーションが身に付いてきます。
しかしダヴィの偉大な点はオンザライズでプレースメントができる点です。これはもう天才しか許されないようなショットですので、私たちが真似をするのは非現実ですが、オンザライズで打つ事がいかに私たちのテニスでも有効であるかは、「時間を与えない」という点です。ナダルがいくら足が速くても追いつく時間を与えてもらえないのです。これがダヴィのテニスの原点だと言えます。
ベースラインの前で打つ超アグレッシヴなテニス
オンザライズで打つにはベースラインぎりぎりのポジションで打たなければなりません。
ナダルとの決勝を観てもダヴィは終始主導権をとってゲームを展開していました。ダヴィのような速攻アグレッシヴ選手には、ナダルのようなベースラインから深く下がってしまったディフェンス選手は格好の餌食となってしまいます。
第2セットの5ゲーム目(22)では惜しくもナダルがブレークチャンスを落としてしまいました。この時点での二人のヒッティング・ポジションは以下の通りで、大きな違いがあることが分かります。
ナダル: 3%(ベースラインの内側)97%(ベースラインから下がる)
ダヴィデンコ:53%(ベースラインの内側)47%(ベースラインから下がる)
ナダルはもう完全にベースラインから下がってしまって、打ち込まれる隙をダヴィに与えてしまっています。
逆にダヴィは恐ろしくも半分以上が、入ってはいけないと言われるノー・マンズ・ランドNo Man’s Land(日本ではデッドゾーン)。
もしナダルがディープなショットを打てば、ダヴィは前進してノーバウンドで打ち返しています。さらに前進できるときは、ドライヴヴォレーでウィナーです。このドライヴヴォレーはダヴィの武器の一つでもありますが、このショットでウィナーをとられると打撃が大きいのです。
全試合を通しても、ナダルはネット・ポイント・ウォンNet Point Won(ネットで得点したポイント)はわずか5ポイント。しかしダヴィは12ポイントも取得しています。いかにダヴィのプレースタイルがいつもフォーワード・モーションで、ネットダッシュが自然にできる態勢にあるかを示しています。
面白いことに、アグレッシヴなダヴィは、同じくアグレッシヴなフェデラーには一度も勝てていません。以下がトップ4との過去の対戦成績です。
ダヴィデンコ対フェデラー:0勝12敗
ダヴィデンコ対ナダル:3勝4敗
ダヴィデンコ対マリー:4勝5敗
ダヴィデンコ対ジョコヴィッチ:2勝2敗
しかしオンザライズがそれほど効果をなさないのはスローなクレーです。ダヴィの勝利はすべてハードコートです。しかし小型選手にとってはクレーで勝てなくても、まず大型のパワーに対抗できる技術を身につけることが先決問題。ダヴィに従え!アジア選手にとっては、未来テニスはこれしかない!と思うのです。
投稿者 Tennisnakama 00:00 | コメント(0)| トラックバック(0)
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