2009年11月20日
ジョコヴィッチの陰の男マーティン
バーゼルでフェデラーを倒し、パリでナダル、モンフィスを倒して2連勝したジョコヴィッチに何かが起こりつつある? ジョコヴィッチのテニスが変わろうとしている、そんな予感がしています。
ではジョコヴィッチはどのように変わろうとしているのか?
今日はニュー・ジョコヴィッチのクリエーター、トッド・マーティンについて書いてみたいと思います。
トッド・マーティンのテニスとは
今年の夏から第2コーチとしてトッド・マーティンがジョコチームに加わりました。マーティンには小さな子供が3人いますので、ヨーロッパのツアーは参加しませんが、夏のアメリカのトーナメントにコーチとして参加することになったのです。マリアンはヨーロッパ、マーティンはアメリカを分担。この分担作業はスムーズに行われているように見えます。
「ジョコヴィッチは驚くべき才能にあふれたアスリートだ。それにスマートだ。ビッグハートももっている。ほとんど弱点がない。」
ジョコヴィッチは短期間にフィックスするような選手でないことをマーティンは知っています。 「ジョコヴィッチのテニスを完成する」そのためには長期的な展望にたったプロジェクトが必要だということも。
マーティンはまずジョコヴィッチのテニスをしるために、USオープンで彼の試合を懸命にノートにとり始めました。そのかいあってか、ジョコヴィッチはUSオープンでフェデラーには敗れましたが、次の10月の北京では見事優勝しました。
それ以後の成績はすでにご存知のとおりです。上海で絶好調のダヴィデンコに敗退したものの、バーゼルでフェデラーを倒して優勝。パリではナダル、モンフィスを倒して再び優勝の快挙です。
ネットプレーを自然に
マーティンがまず手がけたことは、ネットダッシュが自然にできること。そしてネットプレーに自信を持たせることでした。そのためには何度も同じパターンを練習する必要があります。スライスのアプローチショット、ハーフヴォレー、ヴォレーなど、ネットプレーに必要なあらゆるショットをマスターし、コートポジションを覚えなくてはなりません。練習は来る日も来る日も繰り返して行われました。
「僕は今まではディフェンシヴが巧くて、ベースライナーから攻撃するベースライナーだった。でも今はもっとショットの種類が増えて、ネットプレーにも自信がもてるようになった。おかげで僕の人生も楽になったよ。(笑)」
冷静な判断
今までのジョコヴィッチは、途中で集中力を失ったり、焦ると冷静さを欠いたショットでゲームを失うことが多かったのですが、いつも温厚なマーティンは、ジョコがどんなばかなミスをしても怒ることはなく、ポジティヴなアドヴァイスを行ってきました。苦境に陥っても最後に立ち上がる勇気を与えてくれるのは、「自分のテニスは誰にも負けない」という揺るぎない信念です。この自信をジョコヴィッチに与えるため、すべてポジティヴに考え行動することをマーティンは教えました。
「僕はとても感情的な人間なんだ。だからプラクティスの最中でも激怒(自分に対して)して、ラケットを投げてしまうこともある。でもマーティンのおかげで最近は大分感情を抑えることができるようになった。」
一昔前のジョコヴィッチは、アグレッシヴになるとコントロールに欠け、勝ち急ぎのエラーが目立ちました。また不利な状況ではディフェンスから抜けきれず、アグレッシヴなテニスができないメンタルの弱さもありました。しかしパリのSFでみせたナダル戦のジョコヴィッチは、別人のようにアグレッシヴでいながら、落ち着いてポイントをとりエラーの数も少なかったのです。
パリのSFでナダルに6-2, 6-3で完勝したジョコヴィッチはこのように言っています。
「今日のテニスはパーフェクトだった。作戦がすべてうまくいったよ。 始めに主導権を握ることができたし、終始アグレッシヴで攻めることができたし、 コートのあらゆるところからウィナーを打つことができた。」
ジョコヴィッチの言う通り、準決勝はナダルに反撃のチャンスを与えることなく完封してしまったパーフェクトの試合でした。
「あんなにすばらしいテニスをしたジョコヴィッチは初めてみたよ。ほとんどのショットがウィナーみたいだった。」とナダルもジョコヴィッチのテニスを絶賛しました。
ゲームの本質を知る
「フェデラーよりも多くのポイントを取る必要はない。また彼より多くのゲームをとる必要もない。大切なのは数ではなくていつポイントをとるか、いつゲームをとるかだ。自分よりもベーターな選手と戦うときは、主導権をとって彼をプレーさせることができなければ敗北するということをまず心しておくべきだ。6ポイントのうち4ポイントをとる。8ポイントのうち5ポイントをとる。自分のサーヴがよければ、1セットの中でこれらのポイントが一度でよいからリターンゲームでとれればいいんだ。」
マーティンの功績は、まずジョコヴィッチに「ゲームとは何か」というテニスの根本を理解させようとしたことです。
ゲームの組み立て方を理解しろ。
ヴァライティーに富んだショットを正しく選択しろ。
作戦を冷静に実践するセルフコントロールを持て。
ジョコヴィッチがパリでみせたパーフォーマンスを観ていると、まるでマーティンの声が聞こえてくるようです。
ジョコヴィッチの大きなプラン
ジョコヴィッチは第2の父と慕うマリアン・ヴァイダのコーチのもとで、トッド・マーティンの強力なメンバーを加えたジョコヴィッチの新チームは、ゴールにむかって着実に結果を残しつつあります。
“I really have big plans for next year. 来年はすごい大きなプランがあるんだ。
12歳でドイツ単身テニス留学をしたときに誓った「世界No.1になる」・・・ その夢の実現を目指してジョコヴィッチは高く飛翔しようとしています。
今年最後のトーナメント、ロンドンのファイナルズの初戦の相手はダヴィデンコです。上海で絶好調のダヴィデンコに敗れたジョコヴィッチが、今度は果たしてどのようなリヴェンジをみせてくれるか。月曜日の試合が楽しみですね。
(参考資料)
http://sports.espn.go.com/sports/tennis/usopen09/columns/story?columnist=ford_bonnie_d&id=4441064
http://www.independent.co.uk/sport/tennis/novak-djokovic-the-man-who-met-his-match-with-murray-1809033.html
http://www.observer.com/2009/novaks-new-guru-todd-martin
ではジョコヴィッチはどのように変わろうとしているのか?
今日はニュー・ジョコヴィッチのクリエーター、トッド・マーティンについて書いてみたいと思います。
トッド・マーティンのテニスとは
今年の夏から第2コーチとしてトッド・マーティンがジョコチームに加わりました。マーティンには小さな子供が3人いますので、ヨーロッパのツアーは参加しませんが、夏のアメリカのトーナメントにコーチとして参加することになったのです。マリアンはヨーロッパ、マーティンはアメリカを分担。この分担作業はスムーズに行われているように見えます。
「ジョコヴィッチは驚くべき才能にあふれたアスリートだ。それにスマートだ。ビッグハートももっている。ほとんど弱点がない。」
ジョコヴィッチは短期間にフィックスするような選手でないことをマーティンは知っています。 「ジョコヴィッチのテニスを完成する」そのためには長期的な展望にたったプロジェクトが必要だということも。
マーティンはまずジョコヴィッチのテニスをしるために、USオープンで彼の試合を懸命にノートにとり始めました。そのかいあってか、ジョコヴィッチはUSオープンでフェデラーには敗れましたが、次の10月の北京では見事優勝しました。
それ以後の成績はすでにご存知のとおりです。上海で絶好調のダヴィデンコに敗退したものの、バーゼルでフェデラーを倒して優勝。パリではナダル、モンフィスを倒して再び優勝の快挙です。
ネットプレーを自然に
マーティンがまず手がけたことは、ネットダッシュが自然にできること。そしてネットプレーに自信を持たせることでした。そのためには何度も同じパターンを練習する必要があります。スライスのアプローチショット、ハーフヴォレー、ヴォレーなど、ネットプレーに必要なあらゆるショットをマスターし、コートポジションを覚えなくてはなりません。練習は来る日も来る日も繰り返して行われました。
「僕は今まではディフェンシヴが巧くて、ベースライナーから攻撃するベースライナーだった。でも今はもっとショットの種類が増えて、ネットプレーにも自信がもてるようになった。おかげで僕の人生も楽になったよ。(笑)」
冷静な判断
今までのジョコヴィッチは、途中で集中力を失ったり、焦ると冷静さを欠いたショットでゲームを失うことが多かったのですが、いつも温厚なマーティンは、ジョコがどんなばかなミスをしても怒ることはなく、ポジティヴなアドヴァイスを行ってきました。苦境に陥っても最後に立ち上がる勇気を与えてくれるのは、「自分のテニスは誰にも負けない」という揺るぎない信念です。この自信をジョコヴィッチに与えるため、すべてポジティヴに考え行動することをマーティンは教えました。
「僕はとても感情的な人間なんだ。だからプラクティスの最中でも激怒(自分に対して)して、ラケットを投げてしまうこともある。でもマーティンのおかげで最近は大分感情を抑えることができるようになった。」
一昔前のジョコヴィッチは、アグレッシヴになるとコントロールに欠け、勝ち急ぎのエラーが目立ちました。また不利な状況ではディフェンスから抜けきれず、アグレッシヴなテニスができないメンタルの弱さもありました。しかしパリのSFでみせたナダル戦のジョコヴィッチは、別人のようにアグレッシヴでいながら、落ち着いてポイントをとりエラーの数も少なかったのです。
パリのSFでナダルに6-2, 6-3で完勝したジョコヴィッチはこのように言っています。
「今日のテニスはパーフェクトだった。作戦がすべてうまくいったよ。 始めに主導権を握ることができたし、終始アグレッシヴで攻めることができたし、 コートのあらゆるところからウィナーを打つことができた。」
ジョコヴィッチの言う通り、準決勝はナダルに反撃のチャンスを与えることなく完封してしまったパーフェクトの試合でした。
「あんなにすばらしいテニスをしたジョコヴィッチは初めてみたよ。ほとんどのショットがウィナーみたいだった。」とナダルもジョコヴィッチのテニスを絶賛しました。
ゲームの本質を知る
「フェデラーよりも多くのポイントを取る必要はない。また彼より多くのゲームをとる必要もない。大切なのは数ではなくていつポイントをとるか、いつゲームをとるかだ。自分よりもベーターな選手と戦うときは、主導権をとって彼をプレーさせることができなければ敗北するということをまず心しておくべきだ。6ポイントのうち4ポイントをとる。8ポイントのうち5ポイントをとる。自分のサーヴがよければ、1セットの中でこれらのポイントが一度でよいからリターンゲームでとれればいいんだ。」
マーティンの功績は、まずジョコヴィッチに「ゲームとは何か」というテニスの根本を理解させようとしたことです。
ゲームの組み立て方を理解しろ。
ヴァライティーに富んだショットを正しく選択しろ。
作戦を冷静に実践するセルフコントロールを持て。
ジョコヴィッチがパリでみせたパーフォーマンスを観ていると、まるでマーティンの声が聞こえてくるようです。
ジョコヴィッチの大きなプラン
ジョコヴィッチは第2の父と慕うマリアン・ヴァイダのコーチのもとで、トッド・マーティンの強力なメンバーを加えたジョコヴィッチの新チームは、ゴールにむかって着実に結果を残しつつあります。
“I really have big plans for next year. 来年はすごい大きなプランがあるんだ。
12歳でドイツ単身テニス留学をしたときに誓った「世界No.1になる」・・・ その夢の実現を目指してジョコヴィッチは高く飛翔しようとしています。
今年最後のトーナメント、ロンドンのファイナルズの初戦の相手はダヴィデンコです。上海で絶好調のダヴィデンコに敗れたジョコヴィッチが、今度は果たしてどのようなリヴェンジをみせてくれるか。月曜日の試合が楽しみですね。
Todd Martinのクウォリティー・テニス
(白髪が多いので老けてみえますが本当は若いのです)
(参考資料)
http://sports.espn.go.com/sports/tennis/usopen09/columns/story?columnist=ford_bonnie_d&id=4441064
http://www.independent.co.uk/sport/tennis/novak-djokovic-the-man-who-met-his-match-with-murray-1809033.html
http://www.observer.com/2009/novaks-new-guru-todd-martin
投稿者 Tennisnakama 04:34 | コメント(0)| トラックバック(0)
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