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父が語るフェデラー

今回はめずらしいフェデラーの父親のインタービューが今日のバーゼル紙に掲載されていましたので、要約してみました。
http://bazonline.ch/sport/tennis/Der-FedererClan-schirmt-sich-gerne-ab/story/16361158

本当はフェデラーナダル以外の選手についてもいろいろ書きたいのですが、何しろインタービュー記事がほとんどない現状ではなかなか実現できておりません。ジョコヴィッチですらインタービューをほとんどやっていませんので、資料収集が本当に大変でした。

さてロバート・フェデラーはスーパスターの父親ですが、彼自身は普通の退職ビジネスマンです。現在はママフェデラーと共に、フェデラー基金を運営していますが、インタービューに慣れていない人にインタービューするには、彼らが本音をしゃべれるように工夫した質問が必要です。

インタービューというのはやさしいようで大変むずかしいのです。私はレポーターをしながら、インタービュー番組を15年担当し、多くの人たちにインタービューしてきましたが、いつも骨をおるのは「いかに短時間にその人柄が滲み出たおいしい話を聞き出すことができるか。」でした。

そこでこのインタービュー記事をもう少しパーソナルなものにするため、一つのアイデアとして、私のコメントを( )にして付け加えてみました。

Q:有名人の親をもつ子供は苦労しますが、有名人の子供をもった親としてはどうですか?

父:私たちの生活はロジャーの成功によってあまり変わったということはありません。
一番影響があったのは孫娘たちが誕生したことです。彼女たちとの時間を過ごすために、ロンドン、ドバイ、メルボルーンまで同行する予定です。

(昔はパパフェデラーはロジャーの試合は緊張の余りに観ることができなくて、決勝にもなかなか姿を見せませんでした。その彼からすれば、ロジャーのツアーに同行するこのスケジュールはすごい変化です。)

Q: 選手の中には父親や母親がコーチだったりしますが、ロジャーのテニスの育成について親として問題はありませんでしたか?

父:ロジャーのテニスについてはちょっとしたアドヴァイスを与えることはあっても、それは自分たちの領域内のことです。親同士で喧嘩をしたりすることは全くなかったですね。むしろライヴァル選手たちの両親たちとはとてもよい関係にありました。

(ロジャーは癇癪もちでしたので、ジュニアの頃はすぐラケットをコートに投げたりすることで知られていましたが、ラケットを投げることについて厳しく説教したのはパパフェデラーでした。)

Q:特に覚えていることは?

父:ティム・ヘンマンとの試合をよく覚えています。試合が始まる直前まで二人はおしゃべりをしているのです。この二人の様子をみて、まるでロジャーがジュニアの頃のような気がしたのです。試合に負けたときはフラストレーションで泣く事もあっても、しばらくたてばまたコートに戻って一緒にテニスを楽しむ。ティムとはそういう間柄でした。

ヘンマンはジェントルマンの代表的な選手でしたので、二人の相性がよく仲のよいことで知られていました。試合の待ち時間に、二人でよくピンポンをしていたことを思い出します。)

これはウィンブルドン2001年QFでフェデラーをやぶったヘンマンです。



Q:親のサポートの重要性についてはどう思いますか?

父:親のサポートは不可欠です。ジュニアの頃はトーナメント会場や練習場に連れて行かなければならない。2万キロくらいは走っていると思いますよ。

子供に何度もドリルを強制したり、バックハンドのクロスを無理矢理に30分もやらせるべきでないと思います。ゲームを知るには、自分で習得し決断することが肝心。ラリーのたびに両親の顔をみたりすることはロジャーにはなかったですね。

(私も息子を連れて毎週末、トーナメント会場を転々とまわりました。これは辛かったですね。ロジャーのように強い子供ならまだしも、負けてばかりいる子供を励ますのは本当にしんどかったです。才能はあったのですが、勝負に向かない性格の息子でしたので、大学受験と両立できなくてやめてくれてホッとしましたが。

トーナメントには親だけでなく親戚一同が集まってくる選手の家族があります。ひどいときは10人くらいの団体でやってきて、大声をあげて必死に応援する彼らをみて、これは勝てないと思いました。ロシアや東ヨーロッパ系の選手たちでしたが、家族の期待を一身に浴びた彼らは真剣度の次元が違ってました。)

Q:ロジャーの子供の頃で特に優れていた点は何でしたか?

父:それは勇気だと思いますね。10歳の頃はまだ小さいのでバックハンドの高いボールがとれない。普通ならロブで返すところをスマッシュしていました。不可能なボールに挑戦する勇気は今でもあると思います。

(むずかしいショットを何気なくこなしてしまうロジャーの華麗なテニスは、実は絶えず不可能にチャレンジすることによって生まれてきたのですね。ものすごく納得!)

Q:選手の親のなかで、マリーのお母さんのように熱烈に感情的に応援する親が多いですが、ロジャー一家はとても静かですね。

父:もちろん興奮したり神経質になったりしていますよ。でも拍手はすばらしいポイントのときだけにしています。相手が失敗したときや、それほど重要でないポイントには拍手はしません。すばらしいラリーには拍手をする。それが例え相手のポイントになったとしても。それが私たちのルールです。

(昨年のUSオープンの決勝で、フェデラーのファミリーボックスのすぐ近くに座っていた私は、ミルカや両親の平静な態度に感心したものです。ロジャーがマリーを 6-2, 7-5, 6-2で快勝しましたが、セレモニーが終わった後も、一人でポツンとファミリー席に残ってコートを見つめていたパパフェデラーを思い出します。一人で息子の優勝の喜びを噛み締めたかったのでしょう。彼から数席はなれたシートに座っていた私は、パパフェデラーの深い喜びが伝わってくるのを感じながら、彼が立ち去るまで密かに喜びを分けてもらったことを思い出します。)

Q:双子の孫娘の写真を撮ったことで、お父さんの名が世界的に知られましたが、あれ以降写真家としての注文はありますか?

父:まだミルカやロジャーから頼まれてはいませんが、彼らはまた幸せな一家の写真を公開してくれると思います。次回の写真撮影のときは、私に声をかけてくれるかどうかは分かりませんが。(笑)


(追記)
パパフェデラーのインタービューはロジャーをより理解する上で貴重でした。欲を言えば、もう少し小さいときのフェデラーを知りたかってのですが・・・しかしスーパスターになっても名声に溺れることなく、こよなくテニスを愛しながら着実に記録を伸ばしているロジャーは、このような立派な父親によってまっすぐ育ってきたことがわかります。

アガシの伝記を読んでいますが、まさに二人の父親は正反対です。アガシは異常な野心に取り憑かれた父親によって、テニスしかしらない子供時代をすごし、No.1の地位を得て父親の野望を実現しました。しかし彼の人生は自分が選んだものではなく、名声を得たにもかかわらず、テニスを憎み続けて不幸だったといいます。

パパフェデラーはジュニア・ロジャーに聞きました。
「テニスのゴールというのはあるのかね?」
「100位くらいになれたらいいかなと思っているんだ。」

その答えを聞いて即座に父親はロジャーに宣言したのです。
「100位だとどうして生活していくのかね? トップにもなれないのなら今すぐテニスをやめなさい。」

ジャーニーマンという言葉があります。ヒューチャーズやチャレンジャーのトーナメントを転戦する選手のことをさしますが、現実に自分で生活できる選手はほんのひとにぎりです。「明日はきっと勝つ」と夢をみながら、ハッと気がつけばすでに25歳。テニス以外には何も知らず今さらテニスを諦めることができない選手がいかに多いことか。そんなジャーニーマンになってしまうくらいなら、「テニスをやめなさい」と彼は息子に断言したのです。

愛しているからこそ時には残酷なことも言わなければならない。このようなパパフェデラーの堅実で賢明で愛情深い親に育てられると、ロジャーのような青年になれるのでしょうか?

これは愚かな親の単純な質問ですが、我が息子はすでに大学3年生。母の愛は山よりも高く海よりも深かったのですが、堅実?賢明?に関してはおおいに疑問が残る育て方をしてきました。ちょっとtoo lateでしたね(ハーッと深いため息をつきながら今回はこれでおしまいです。)

(余談)
Lindtチョコレートが新しくロジャーのスポンサーになりましたが、それをからかったスイスの雑誌に掲載されている漫画です。この太ったロジャーはお父さんの顔にそっくりですね。
http://twitpic.com/q3st4




投稿者 Tennisnakama  04:26 | コメント(0)| トラックバック(0)
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