2009年10月21日
Sex スキャンダル(続編)
ATPの選手二人(一人はストックホルムに出場)が、買春(売春ではなく)行為で逮捕されたというニュースを前記事で書きました。
スウェーデン語の情報が入りましたので、グーグルの翻訳を使って英語に翻訳。それを簡単に要約してみました。
Aftonbladet紙(スウェーデン紙)
http://www.aftonbladet.se/sportbladet/tennis/article5984651.ab
『売春婦だとは思わなかった』
日曜の深夜、タクシー運転手に500ドル(約5万円)を与えて、選手と彼の友人にエスコート(売春婦)をアレンジするよう頼んだ。しかしシェラトンホテルで待っていたのは警察で、その場で二人は逮捕され警察署に連行された。
選手は最初、セックスを買う行為を否定したが、一時間後には行為を認め罰金、約4万円を払って刑事問題になることを免れた。
ヨーロスポーツ(スウェーデン版)
http://www.eurosport.se/tennis/stockholm-open/2009/gulbis-ar-sexkoparen_sto2098298/story.shtml
『ピムピムが暴露:彼はセックスマシーンを買おうとした』
なぜピムピムがブログでグルビスの名を暴露したのか?
アルジェンチンのプレスは、土曜の夜遅く帰ってきたモナコを疑い、犯人であるとの疑惑をかけ非難したことが原因だと伝えている。ピムピムはどこからグルビスの情報を得たのか不明だが、無実な選手(モナコ)の汚名返上のために、選手名を公表することにしたらしい。
しかしヨーロスポーツでこの件が掲載されるとすぐピムピムの記事は削除されてしまった。
ストックホルム・オープンの公式サイト
ブロガー担当者、パトリック・ラーガン著
http://www.ifstockholmopen.se/sv-se/Nyheter--Media/Ragan-Bloggar/Dates/2009/10/Sexkop-Que/
『セックスを買ったのは?』
「スウェーデンはパブから女の子を簡単にひっかけて家に連れて帰ることができる国の一つである。なのにセックスをわざわざ買おうとして失敗するとは。選手のメンタリティーには、セックスはカネで買うものという考えがあるに違いない。
ドーピングでひっかかかると、選手は無実の言い訳をするが、このセックススキャンダル問題に対してATPはどのように対応するのだろうか?」
モナコはピムピムのブログで疑いが晴れましたが、問題はグルビスです。彼はときにはトーナメントに一人でフラッとやってきたり、ときどき選手の常識からはずれたことをやることでも知られています。大金持ちの親をもち、カネの苦労のない彼は、今まで真剣さが欠けると批判もあびてきたことは事実です。カネで解決できる。このイメージはそういった彼の裕福な育ちや行動から与える印象かもしれません。コーチ代を払うために、体が故障してもツアーを続けていかなくてはならない選手にとっては、グルビスは妬ましい存在。そんな彼に噂がまことしやかに伝えられていった、ということも考えられます。
警察は選手名を公表していませんので、今の段階ではこの二人はまだ誰なのか分かっておりません。
もしグルビスが無実で事実無根のデタラメな噂だとしたら・・・こんな最悪なことはありませんね。
水曜の対戦ですが、グルビスはフェリシアーノ・ロペスと対戦します。モナコはブログで自分をかばってくれたピムピムです。
それにしてもこの事件はこれからも尾をひきそうです。
スウェーデン語の情報が入りましたので、グーグルの翻訳を使って英語に翻訳。それを簡単に要約してみました。
Aftonbladet紙(スウェーデン紙)
http://www.aftonbladet.se/sportbladet/tennis/article5984651.ab
『売春婦だとは思わなかった』
日曜の深夜、タクシー運転手に500ドル(約5万円)を与えて、選手と彼の友人にエスコート(売春婦)をアレンジするよう頼んだ。しかしシェラトンホテルで待っていたのは警察で、その場で二人は逮捕され警察署に連行された。
選手は最初、セックスを買う行為を否定したが、一時間後には行為を認め罰金、約4万円を払って刑事問題になることを免れた。
ヨーロスポーツ(スウェーデン版)
http://www.eurosport.se/tennis/stockholm-open/2009/gulbis-ar-sexkoparen_sto2098298/story.shtml
『ピムピムが暴露:彼はセックスマシーンを買おうとした』
なぜピムピムがブログでグルビスの名を暴露したのか?
アルジェンチンのプレスは、土曜の夜遅く帰ってきたモナコを疑い、犯人であるとの疑惑をかけ非難したことが原因だと伝えている。ピムピムはどこからグルビスの情報を得たのか不明だが、無実な選手(モナコ)の汚名返上のために、選手名を公表することにしたらしい。
しかしヨーロスポーツでこの件が掲載されるとすぐピムピムの記事は削除されてしまった。
ストックホルム・オープンの公式サイト
ブロガー担当者、パトリック・ラーガン著
http://www.ifstockholmopen.se/sv-se/Nyheter--Media/Ragan-Bloggar/Dates/2009/10/Sexkop-Que/
『セックスを買ったのは?』
「スウェーデンはパブから女の子を簡単にひっかけて家に連れて帰ることができる国の一つである。なのにセックスをわざわざ買おうとして失敗するとは。選手のメンタリティーには、セックスはカネで買うものという考えがあるに違いない。
ドーピングでひっかかかると、選手は無実の言い訳をするが、このセックススキャンダル問題に対してATPはどのように対応するのだろうか?」
モナコはピムピムのブログで疑いが晴れましたが、問題はグルビスです。彼はときにはトーナメントに一人でフラッとやってきたり、ときどき選手の常識からはずれたことをやることでも知られています。大金持ちの親をもち、カネの苦労のない彼は、今まで真剣さが欠けると批判もあびてきたことは事実です。カネで解決できる。このイメージはそういった彼の裕福な育ちや行動から与える印象かもしれません。コーチ代を払うために、体が故障してもツアーを続けていかなくてはならない選手にとっては、グルビスは妬ましい存在。そんな彼に噂がまことしやかに伝えられていった、ということも考えられます。
警察は選手名を公表していませんので、今の段階ではこの二人はまだ誰なのか分かっておりません。
もしグルビスが無実で事実無根のデタラメな噂だとしたら・・・こんな最悪なことはありませんね。
水曜の対戦ですが、グルビスはフェリシアーノ・ロペスと対戦します。モナコはブログで自分をかばってくれたピムピムです。
それにしてもこの事件はこれからも尾をひきそうです。
2009年10月21日
セックススキャンダル
ストックホルムのトーナメントが開催されていますが、実は開催前にこのようなスキャンダルがあったのです。
http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5gNeb5IE-t-A1kpijiRO2e2ap_JUQ
この事件は、日曜日に外国人選手二人(スウェーデン以外の国籍)が、エスコート(売春婦のモダンな呼び方)を連れてホテルに入ってきたところを御用となったもの。スウェーデンではセックスを買った当人が罰せられる法律があり、この二人は警察に引っ張られた末に罰金処分を受けたそうです。今回の事件は、告白してサインをすれば刑罰は受けない軽処分で、トーナメントを続行することが許されたとか。
ただ今テニス界では、「この二人は一体誰なのか?」とすずめたちがうるさく騒いでいます。一人はストックホルム・オープンの出場者で一人はそうでないとか。選手とコーチ、またはトレーナーという場合も考えられますね。
警察では名前を発表していないので今では噂の段階でしかすぎませんが、グルビスとモナコの名前が浮上しています。でも何で? この二人はイケメンの代表選手でもあり、そんなことをしなくても女性には困らないはず。
噂の根源はどうやらピムピムPim Pimのブログらしいのです。ピムピムのニックネームで知られる、ヨキム・ヨハンソン Joachim Johanssonは怪我が絶えず、リタイアしたりカムバックしたりを続けているスウェーデンの選手です。
hcfoo.comではピムピムの原文を紹介しています。
http://www.hcfoo.com/
Monaco fick sent ig〓r kv〓ll reda p〓 att han blivit anklagad i argentinsk press f〓r att han var den skyldige spelaren som k〓pt sex under helgen trots att Gulbis redan erk〓nt."
「モナコはアルジェンチンのプレスで今回の件について非難されていることを知ったし、グルビスはすでに告白している。」
しかしピムピムもおかしいですね。事実であるかどうかまだ分からない事件に対して憶測で選手を決めてしまうというのは。もしも確実にそのことが分かっていたとしても、彼がブログで書くことは非常識でスポーツ選手としての倫理観を疑います。
もしモナコやグルビスが無実であれば。ピムピムのとった行為は許されないでしょう。ちょっとおかしいので、ピムピムのブログでこのような発言があったのかどうか探してみました。
http://www.pimpimacemanagement.com/pimpim_pim.php
しかし彼のブログでは見当たりません。
それではhcfoo.comが作りあげたデマなのか? スウェーデン語まで書いて紹介しているのですから、それもあまり現実性がありません。
これは私の憶測ですが、ピムピムが反響の大きさに驚きブログから削除してしまったのではないかと思います。
もしモナコやグルビスが無実であれば、記者会見のときにでも、ファンのためにはっきりと無実を証言してほしいですね。それにしてもいろんなことが起こります。テニス界も。
http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5gNeb5IE-t-A1kpijiRO2e2ap_JUQ
この事件は、日曜日に外国人選手二人(スウェーデン以外の国籍)が、エスコート(売春婦のモダンな呼び方)を連れてホテルに入ってきたところを御用となったもの。スウェーデンではセックスを買った当人が罰せられる法律があり、この二人は警察に引っ張られた末に罰金処分を受けたそうです。今回の事件は、告白してサインをすれば刑罰は受けない軽処分で、トーナメントを続行することが許されたとか。
ただ今テニス界では、「この二人は一体誰なのか?」とすずめたちがうるさく騒いでいます。一人はストックホルム・オープンの出場者で一人はそうでないとか。選手とコーチ、またはトレーナーという場合も考えられますね。
警察では名前を発表していないので今では噂の段階でしかすぎませんが、グルビスとモナコの名前が浮上しています。でも何で? この二人はイケメンの代表選手でもあり、そんなことをしなくても女性には困らないはず。
噂の根源はどうやらピムピムPim Pimのブログらしいのです。ピムピムのニックネームで知られる、ヨキム・ヨハンソン Joachim Johanssonは怪我が絶えず、リタイアしたりカムバックしたりを続けているスウェーデンの選手です。
hcfoo.comではピムピムの原文を紹介しています。
http://www.hcfoo.com/
Monaco fick sent ig〓r kv〓ll reda p〓 att han blivit anklagad i argentinsk press f〓r att han var den skyldige spelaren som k〓pt sex under helgen trots att Gulbis redan erk〓nt."
「モナコはアルジェンチンのプレスで今回の件について非難されていることを知ったし、グルビスはすでに告白している。」
しかしピムピムもおかしいですね。事実であるかどうかまだ分からない事件に対して憶測で選手を決めてしまうというのは。もしも確実にそのことが分かっていたとしても、彼がブログで書くことは非常識でスポーツ選手としての倫理観を疑います。
もしモナコやグルビスが無実であれば。ピムピムのとった行為は許されないでしょう。ちょっとおかしいので、ピムピムのブログでこのような発言があったのかどうか探してみました。
http://www.pimpimacemanagement.com/pimpim_pim.php
しかし彼のブログでは見当たりません。
それではhcfoo.comが作りあげたデマなのか? スウェーデン語まで書いて紹介しているのですから、それもあまり現実性がありません。
これは私の憶測ですが、ピムピムが反響の大きさに驚きブログから削除してしまったのではないかと思います。
もしモナコやグルビスが無実であれば、記者会見のときにでも、ファンのためにはっきりと無実を証言してほしいですね。それにしてもいろんなことが起こります。テニス界も。
2009年10月21日
ダヴィデンコにみる未来のテニス
Davydenko def Nadal Shanghai Final: 7-6(3), 6-3
SFで死闘のすえフルセットでジョコヴィッチを打倒したダヴィデンコを観て、もし彼にエネルギーが残っていればナダルに勝てる。それどころか、今のダヴィデンコは誰にも負けないのでは? その予感が当たって、ダヴィ(ダヴィデンコのニックネーム)は、上海マスターズでナダルを2セットで破り優勝をとげました。
しかもダヴィはナダルよりも26も多い35のウィナーで、ガンガンと攻めまくるスピーディでダイナミックなテニスを堪能させてくれました。
昨年のマイアミ決勝を思い出します。まったくナダルに追随を許すことなく、圧倒的な強さで勝ったダヴィのテニスに痛く感動して、その後何度か「ナダルを打倒するテニス」「日本選手の未来のテニス」というテーマで、彼のプレースタイルを書いてきました。
未来のテニスとは? ソダーリングやデルポトロに代表されるパワーテニスが主流となりつつある現代テニスですが、それに対抗するテニスとして、ダヴィデンコに代表されるオンザライズ・テニスに注目したいと思います。
ここで彼のスレースタイルの根本である「オンザライズ」のショットについて述べてみたいと思います。(ダヴィには、その他にも俊足、バックハンド、などの武器がありますが、ここでは省略します。)
オンザライズとは
オンザライズとは、球がバウンスした直後に打つショットですが、アガシがこのショットで有名です。彼は3歳のときからテニスを始めましたので、背丈があまりにも小さく、球が落ちた瞬間に打たなければ高く飛び跳ねしまい打てないことから、このプレースタイルを身につけるようになりました。
このショットはタイミングが命。ジュニアの段階でマスターしなければ、タイミングを習得するのは大変むずかしく、ぜひ日本のコーチはベースラインから下がらず打つ練習をプログラムに取り入れてほしいと思います。このショットを習得するといろんなメリットがついてくるのです。
つねにフォーワード・モーション Forward Motion 前進移動
ダヴィの体格は現在の日本選手の体格(178cm 70kg)です。しかし彼のストロークをみていると、ジョコヴィッチやナダルよりもスピードがありペースがあるように見えます。
いわゆる英語ではpenetrating shotと呼ばれているストロークですが、これはフラット気味で速度が速く、しかもバウンドした後にも加速して向かってくるようなショットです。ナダルは足がありますので左右に振っても追いつかれることがありますが、ダヴィのよく使うショットは、ナダルのボディー狙いのショットです。ナダルは深く突き刺さるボディーショットには、身動きがとれず(Jammed) 、球を上げてしまうかネットにかけてしまうかになります。
ではこのpenetrating shotをどうしたら生み出すことができるか?
フォーワード・モーションで球を打つ。
小柄な選手にはどうしてもソダーリングやデルポトロのようなパワーショットは無理ですが、それに近いショットを打つ事ができます。それは振り切って打つときに同時に前進するのです。これはどうすれば身につけられるか? 経験上、オンザライズで打つ練習をすると、自然に身に付いてくるショットのようです。
オンザライズでは相手のスピードに負けずに打ち返さなければなりません。それにはコンパクトスウィングでラケットスピードを増さなければ、打ち負かされてしまいます。スピードを増すためには、打つ瞬間に体ごと前進して勢いを増さなければ、オンザライズのショットは打てないのです。何度もオンザライズで練習していると、打つタイミングとフォーワード・モーションが身に付いてきます。
しかしダヴィの偉大な点はオンザライズでプレースメントができる点です。これはもう天才しか許されないようなショットですので、私たちが真似をするのは非現実ですが、オンザライズで打つ事がいかに私たちのテニスでも有効であるかは、「時間を与えない」という点です。ナダルがいくら足が速くても追いつく時間を与えてもらえないのです。これがダヴィのテニスの原点だと言えます。
ベースラインの前で打つ超アグレッシヴなテニス
オンザライズで打つにはベースラインぎりぎりのポジションで打たなければなりません。
ナダルとの決勝を観てもダヴィは終始主導権をとってゲームを展開していました。ダヴィのような速攻アグレッシヴ選手には、ナダルのようなベースラインから深く下がってしまったディフェンス選手は格好の餌食となってしまいます。
第2セットの5ゲーム目(22)では惜しくもナダルがブレークチャンスを落としてしまいました。この時点での二人のヒッティング・ポジションは以下の通りで、大きな違いがあることが分かります。
ナダル: 3%(ベースラインの内側)97%(ベースラインから下がる)
ダヴィデンコ:53%(ベースラインの内側)47%(ベースラインから下がる)
ナダルはもう完全にベースラインから下がってしまって、打ち込まれる隙をダヴィに与えてしまっています。
逆にダヴィは恐ろしくも半分以上が、入ってはいけないと言われるノー・マンズ・ランドNo Man’s Land(日本ではデッドゾーン)。
もしナダルがディープなショットを打てば、ダヴィは前進してノーバウンドで打ち返しています。さらに前進できるときは、ドライヴヴォレーでウィナーです。このドライヴヴォレーはダヴィの武器の一つでもありますが、このショットでウィナーをとられると打撃が大きいのです。
全試合を通しても、ナダルはネット・ポイント・ウォンNet Point Won(ネットで得点したポイント)はわずか5ポイント。しかしダヴィは12ポイントも取得しています。いかにダヴィのプレースタイルがいつもフォーワード・モーションで、ネットダッシュが自然にできる態勢にあるかを示しています。
面白いことに、アグレッシヴなダヴィは、同じくアグレッシヴなフェデラーには一度も勝てていません。以下がトップ4との過去の対戦成績です。
ダヴィデンコ対フェデラー:0勝12敗
ダヴィデンコ対ナダル:3勝4敗
ダヴィデンコ対マリー:4勝5敗
ダヴィデンコ対ジョコヴィッチ:2勝2敗
しかしオンザライズがそれほど効果をなさないのはスローなクレーです。ダヴィの勝利はすべてハードコートです。しかし小型選手にとってはクレーで勝てなくても、まず大型のパワーに対抗できる技術を身につけることが先決問題。ダヴィに従え!アジア選手にとっては、未来テニスはこれしかない!と思うのです。
SFで死闘のすえフルセットでジョコヴィッチを打倒したダヴィデンコを観て、もし彼にエネルギーが残っていればナダルに勝てる。それどころか、今のダヴィデンコは誰にも負けないのでは? その予感が当たって、ダヴィ(ダヴィデンコのニックネーム)は、上海マスターズでナダルを2セットで破り優勝をとげました。
しかもダヴィはナダルよりも26も多い35のウィナーで、ガンガンと攻めまくるスピーディでダイナミックなテニスを堪能させてくれました。
昨年のマイアミ決勝を思い出します。まったくナダルに追随を許すことなく、圧倒的な強さで勝ったダヴィのテニスに痛く感動して、その後何度か「ナダルを打倒するテニス」「日本選手の未来のテニス」というテーマで、彼のプレースタイルを書いてきました。
未来のテニスとは? ソダーリングやデルポトロに代表されるパワーテニスが主流となりつつある現代テニスですが、それに対抗するテニスとして、ダヴィデンコに代表されるオンザライズ・テニスに注目したいと思います。
ここで彼のスレースタイルの根本である「オンザライズ」のショットについて述べてみたいと思います。(ダヴィには、その他にも俊足、バックハンド、などの武器がありますが、ここでは省略します。)
オンザライズとは
オンザライズとは、球がバウンスした直後に打つショットですが、アガシがこのショットで有名です。彼は3歳のときからテニスを始めましたので、背丈があまりにも小さく、球が落ちた瞬間に打たなければ高く飛び跳ねしまい打てないことから、このプレースタイルを身につけるようになりました。
このショットはタイミングが命。ジュニアの段階でマスターしなければ、タイミングを習得するのは大変むずかしく、ぜひ日本のコーチはベースラインから下がらず打つ練習をプログラムに取り入れてほしいと思います。このショットを習得するといろんなメリットがついてくるのです。
つねにフォーワード・モーション Forward Motion 前進移動
ダヴィの体格は現在の日本選手の体格(178cm 70kg)です。しかし彼のストロークをみていると、ジョコヴィッチやナダルよりもスピードがありペースがあるように見えます。
いわゆる英語ではpenetrating shotと呼ばれているストロークですが、これはフラット気味で速度が速く、しかもバウンドした後にも加速して向かってくるようなショットです。ナダルは足がありますので左右に振っても追いつかれることがありますが、ダヴィのよく使うショットは、ナダルのボディー狙いのショットです。ナダルは深く突き刺さるボディーショットには、身動きがとれず(Jammed) 、球を上げてしまうかネットにかけてしまうかになります。
ではこのpenetrating shotをどうしたら生み出すことができるか?
フォーワード・モーションで球を打つ。
小柄な選手にはどうしてもソダーリングやデルポトロのようなパワーショットは無理ですが、それに近いショットを打つ事ができます。それは振り切って打つときに同時に前進するのです。これはどうすれば身につけられるか? 経験上、オンザライズで打つ練習をすると、自然に身に付いてくるショットのようです。
オンザライズでは相手のスピードに負けずに打ち返さなければなりません。それにはコンパクトスウィングでラケットスピードを増さなければ、打ち負かされてしまいます。スピードを増すためには、打つ瞬間に体ごと前進して勢いを増さなければ、オンザライズのショットは打てないのです。何度もオンザライズで練習していると、打つタイミングとフォーワード・モーションが身に付いてきます。
しかしダヴィの偉大な点はオンザライズでプレースメントができる点です。これはもう天才しか許されないようなショットですので、私たちが真似をするのは非現実ですが、オンザライズで打つ事がいかに私たちのテニスでも有効であるかは、「時間を与えない」という点です。ナダルがいくら足が速くても追いつく時間を与えてもらえないのです。これがダヴィのテニスの原点だと言えます。
ベースラインの前で打つ超アグレッシヴなテニス
オンザライズで打つにはベースラインぎりぎりのポジションで打たなければなりません。
ナダルとの決勝を観てもダヴィは終始主導権をとってゲームを展開していました。ダヴィのような速攻アグレッシヴ選手には、ナダルのようなベースラインから深く下がってしまったディフェンス選手は格好の餌食となってしまいます。
第2セットの5ゲーム目(22)では惜しくもナダルがブレークチャンスを落としてしまいました。この時点での二人のヒッティング・ポジションは以下の通りで、大きな違いがあることが分かります。
ナダル: 3%(ベースラインの内側)97%(ベースラインから下がる)
ダヴィデンコ:53%(ベースラインの内側)47%(ベースラインから下がる)
ナダルはもう完全にベースラインから下がってしまって、打ち込まれる隙をダヴィに与えてしまっています。
逆にダヴィは恐ろしくも半分以上が、入ってはいけないと言われるノー・マンズ・ランドNo Man’s Land(日本ではデッドゾーン)。
もしナダルがディープなショットを打てば、ダヴィは前進してノーバウンドで打ち返しています。さらに前進できるときは、ドライヴヴォレーでウィナーです。このドライヴヴォレーはダヴィの武器の一つでもありますが、このショットでウィナーをとられると打撃が大きいのです。
全試合を通しても、ナダルはネット・ポイント・ウォンNet Point Won(ネットで得点したポイント)はわずか5ポイント。しかしダヴィは12ポイントも取得しています。いかにダヴィのプレースタイルがいつもフォーワード・モーションで、ネットダッシュが自然にできる態勢にあるかを示しています。
面白いことに、アグレッシヴなダヴィは、同じくアグレッシヴなフェデラーには一度も勝てていません。以下がトップ4との過去の対戦成績です。
ダヴィデンコ対フェデラー:0勝12敗
ダヴィデンコ対ナダル:3勝4敗
ダヴィデンコ対マリー:4勝5敗
ダヴィデンコ対ジョコヴィッチ:2勝2敗
しかしオンザライズがそれほど効果をなさないのはスローなクレーです。ダヴィの勝利はすべてハードコートです。しかし小型選手にとってはクレーで勝てなくても、まず大型のパワーに対抗できる技術を身につけることが先決問題。ダヴィに従え!アジア選手にとっては、未来テニスはこれしかない!と思うのです。